みうらじゅんの映画チラシ放談

チラシを見て「あ、ブロンソン映画なんだ」ってすぐに思いました『悪魔祓い株式会社』

月2回連載

第160回

『悪魔祓い株式会社』

── 今回の1枚目のチラシは、マ・ドンソク主演の韓国映画『悪魔祓い株式会社』です。

みうら 韓国のチャールズ・ブロンソンさんなんだなと思ってるんですが、どうでしょう?

ブロンソンさんもアクションだけじゃなく、実はいろんな役をこなしてこられましたから。『おませなツインキー』というラブコメディ映画にも出られてたし、『バラキ』ではマフィアの役でした。きっと、当時悪魔祓いの役が来ても引き受けていらっしゃったと思います。

── なるほど。「ブロンソンvs悪魔」ということですね。

みうら ブロソンズ(※みうらが俳優の田口トモロヲと組んだユニット)としては、チラシを見て「あ、ブロンソン映画なんだ」ってすぐに思いましたけどね。

そういや昨年、新大久保の韓国街のショップに『イカゲーム』のグッズを探しに行ったとき、マ・ドンソクさんの顔写真が入ったカードも1枚、買ってるんですよね。

どうしてこの人にずっと惹かれてるのかと思ったら、やっぱりブロンソン魂の方だからなんですよね。

── どの時代にもどの国にも、ブロンソンはひとりは必要だってことなんでしょうか?

みうら ブロンソン死すとも、ブロンソン魂は死せず、ですからね(笑)。

『エクスペンダブルズ』の面々も、ブロンソンの魂を引き継いだ者たちの集結だと勝手に思ってますから。あのシリーズの新作に、マ・ドンソクさんが出てても全然違和感ないでしょうし。

ブロンソン魂はもはや無敵なんで、悪魔が相手でも当然へっちゃらでしょうね。しかもこの映画、「悪魔祓い」って書いてあんのにグーパンチで退治するんでしょ?「確かな拳で、確かな祓い」とも書いてありますね。『ゴーストバスターズ』だって霊を吸い取る機械ぐらいは持ってたじゃないですか(笑)。

── 『ゴーストバスターズ』の皆さんは一応科学者ですからね。

みうら ブロンソン魂の連中ではないですもんね。しかも、マ・ドンソクさんは「最短解決」。一発なんですね(笑)。とにかくスカッとさせてくれる映画だと思います。

それに「痛快ホラーアクション」ってジャンル、スゴ過ぎますよ。最高に違いありません。

『悪魔祓い株式会社』
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『シェルビー・オークス』

『シェルビー・オークス』

── 2枚目のチラシは、アメリカのホラー映画『シェルビー・オークス』です。

みうら この『シェルビー・オークス』のチラシ、特に僕らの世代には引っかかるデザインなんですよ。この暗いところを彷徨っている霊体みたいなやつ、小学生の頃観たTVドラマ『ウルトラQ』の“悪魔っ子”の回を思い出すんです。

── 『ウルトラマン』の前身になったテレビドラマですよね。

みうら そうです。当時、僕は小学校3年生でした。怪獣が大好きで欠かさず観てたんですけど、この“悪魔っ子”はトラウマになるくらい怖くてねぇ。

魔術団に所属しているリリーという女の子が毎日、父親に催眠術をかけられ空中散歩の芸を見せているんですけど、催眠術のかけ過ぎでリリーの精神と体が分離しちゃうんですよ。夜になると分離したやつが町を彷徨ってね……。もう、話してるだけで鳥肌が立つくらい怖いんですよ(笑)。

だからね、たぶんこのチラシ、『ウルトラQ』の“悪魔っ子”を観てトラウマになった人、要するに僕と同じ世代の人が作ったんじゃないかと思ったわけです。

── それくらいイメージが似てるんですね?

みうら はい。『ウルトラQ』は白黒でしたけど、『シェルビー・オークス』のチラシも白黒といや白黒でしょ?

荒唐無稽なモンスターより、ただ白くぼんやりした人物が暗闇にいる方が実は怖いんですよね。“悪魔っ子”はリリーの欲しいものを盗んでくるんですが、この映画も同じと思うんですが、どうでしょう?

── 『悪魔っ子』とまったく同じストーリーだと?

みうら いや、この監督も『悪魔っ子』を観て、トラウマになってる可能性があると思うんです。だからオマージュ映画というかね。

チラシには「廃墟と化した町に消えた妹」って書いてありますけどね(笑)。さすがに設定は少し変えたんでしょう。でも、この妹は分離した方の……。

── 確かにチラシのオモテに出演者の名前がひとつもないですね。いろいろと分からないようにできてますね。

みうら だって、リリーですから。『シェルビー・オークス』ってタイトルもきっとスラングで、“悪魔っ子”という意味なんだと思いますよ(笑)。

タイトルの上に『ウルトラQ』って書いてさえあれば、すぐに悪魔っ子の回なんだってみんな分かりますよ。この機会に皆さんも『悪魔っ子』を観直してみてくださいね。

『シェルビー・オークス』
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取材・文:村山章

プロフィール

みうらじゅん

1958年生まれ。1980年に漫画家としてデビュー。イラストレーター、小説家、エッセイスト、ミュージシャン、仏像愛好家など様々な顔を持ち、“マイブーム”“ゆるキャラ”の名づけ親としても知られる。『マイ修行映画』(文藝春秋)、『みうらじゅんのゆるゆる映画劇場』『「ない仕事」の作り方』『アウト老のすすめ』『見仏記 三十三年後の約束』(ともに文春文庫/『見仏記…』はいとうせいこうと共著)など著作も多数。

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