みうらじゅんの映画チラシ放談
「巨大化して会場の屋根をバッて突き破るシーンが僕には見えてきました(笑)」『ボディビルダー』
月2回連載
第161回
── 今回の1枚目のチラシは、『クリード 過去の逆襲』のジョナサン・メジャース主演作『ボディビルダー』です。
みうら いつの時代にもムキムキな人っているんでしょ?
── 最近また増えてる気がしますね。筋肉芸人とかも。
みうら おられますよね。でも、僕らの世代は初めてこういうチラシにあるような写真を見たとき、「どうかしてんな」って思ったものですよ。若者でもDS(どーかしてる)のに、ムキムキコンテストに出てるおじいさんの写真を見たときは、ホラー感すらありましたよ。でも、今はムキムキがカッコイイんでしょ?
このチラシのキャッチコピー「俺を見てくれ」も、そういう自己顕示欲の表れなんでしょうからね。僕は年寄りの若作りに似ているような気がするんですが、どうでしょう? ほら、最近の映画でもあったじゃないですか。若作りが高じて最後、モンスター化するやつ。
── 『サブスタンス』ですか?
みうら そうそう。あれはホラー映画だったでしょ。だからこの『ボディビルダー』も、ムキムキになろうとしてムキムキの度合いを超えてしまい、モンスターになるんだと思います。
「ムキ2(※二乗)」くらいじゃ収まらなくなって、「ムキ10」ぐらいいってしまうんでしょう。『ボディビルダー』、実は『ムキ10』っていうホラー映画ですね。
── 確かに筋肉って度を超えると、どこが限界なのかも分からなくなりそうですね。
みうら たぶん、最終的には巨大化してムキ10モンスターが街を襲ったりするんじゃないですかね。
── また巨大化するんですね(笑)。でも確かにこのチラシ、縮尺が分からないですね。
みうら でしょ(笑)? このチラシには対象物がひとつも写ってないですからね。絶対、巨大化しますよ。巨大化してもなお「俺を見てくれ」って、そんなヤツ、やっぱ怖いじゃないですか(笑)。
戦車や爆撃機で攻撃されて、そのとき初めてモンスターの悲しみを知るんでしょうね。山とかに隠れるしかありませんよ、ムキムキのまんま。
── もう服もないですしね。
みうら 映倫に引っかからないよう、一応、パンツも巨大化してるんでしょうけど。
このチラシの照明の感じも、なんか切ないじゃないですか。きっと最後には泣けると思います。ムキ10モンスターがやられて崖から海に落ちるシーンがあるでしょうね。それを博士や自衛隊の人が、崖の上から見ている……。
── いるのは自衛隊なんですね(笑)。
みうら 日本の怪獣映画だったらね(笑)。
当然続編としては、このムキ10モンスターの細胞が分裂して『サンダ対ガイラ』になる。この映画で「ボディビルダー」って言葉も、モンスター名になってしまう可能性がありますよ。
── 確かに「エイリアン」も元々は「宇宙人」って意味じゃないですもんね。
みうら ですよね。コンテストでずっと優勝を逃してきた孤独な主人公が、ある日、悪魔と契約して1位にしてもらうところから始まると思います。だからプロテインじゃない、とんでもない薬を飲まされて巨大化するんです。巨大化しすぎてもう会場にすら入れない。会場の屋根をバッて突き破るシーンが僕には見えてきました(笑)。
── 本末転倒にもほどがありますね。
みうら そんな映画であれば僕は絶対に観に行くと思います(笑)。
『ボディビルダー』
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『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』
── 2枚目のチラシは、韓国のコメディ映画『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』です。
みうら この邦題、『俺たちフィギュアスケーター』とかのセンスに近いと思ったんですね。一時、俺たちシリーズ、何本か出たでしょ?
── ありましたね。俺たちシリーズはたいがい面白かったですよね。
みうら ですよね。この一見ヒットしなさそうな邦題のセンス映画は、観るとたいがい面白いですからね。何も「MEは何しにアマゾンへ?」なんていうテレビ番組のパロディじゃなくてもいいのに。ま、そこがいいんじゃない!ですけどね(笑)。
主人公はアーチェリーやってるみたいですね。おそらくそれがきっかけで、アマゾンに行くことになるんでしょう。これ、『サボテン・ブラザーズ』的な展開の映画だと思いますから。
たぶん、「アーチェリー大好きサラリーマンズ」ってオモシロ記事が新聞に載っちゃうんですよ。で、この人たちが嬉しそうにインタビューを受けてる記事が載った新聞が、アマゾンのジャングルに落ちていて。誰かが落としたものが風で飛んできたのかもしれません。
実はそのジャングルには怪獣が住みついていて、現地の人たちは困って弓矢でバンバン戦ってるんだけど、ぜんぜん勝てない。村中が破壊されてヤバい状態になったとき、そこの村長がたまたまその新聞を拾って、「おお、アーチェリーブラザーズ!」ってなるんでしょう。
── 弓矢の達人を見つけたってことですね。
みうら そうです。勇者だと勘違いされたふたりが現地に呼ばれちゃうんです。「僕らはそんな名手ではなくて、趣味でやってるんです」と最初は言うんだけど、そのうち、ふたりは崇められて怪獣と戦うことになるんです。で、たぶんそのアーチャリーの弓、たまたま怪獣の急所に当たっちゃうんですよ。現地の人たちがそのとき、「大命中!」と声を上げるんだと思います。
── なるほど! タイトルとも繋がった。
みうら で、その村で大英雄になるんですが、そのふたりのうちひとりが、村の娘と恋をしちゃってね。「オレはこの村に残る」と言い出すんだと思いますよ。そこも大命中、子どもができるんですね(笑)。
── 何となくコメディとしてのノリが分かりますね。
みうら やっぱ、これは面白い映画に違いありませんよ。
『大命中!MEは何しにアマゾンへ?』
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取材・文:村山章
プロフィール
みうらじゅん
1958年生まれ。1980年に漫画家としてデビュー。イラストレーター、小説家、エッセイスト、ミュージシャン、仏像愛好家など様々な顔を持ち、“マイブーム”“ゆるキャラ”の名づけ親としても知られる。『マイ修行映画』(文藝春秋)、『みうらじゅんのゆるゆる映画劇場』『「ない仕事」の作り方』『アウト老のすすめ』『見仏記 三十三年後の約束』(ともに文春文庫/『見仏記…』はいとうせいこうと共著)など著作も多数。