みうらじゅんの映画チラシ放談
11月に「ゴジラ・ザ・ライド」に乗る予定ですが、西武園ゆうえんちにお願いがあります!『ゴジラ-0.0』
月2回連載
第172回
── 今回の1枚目のチラシは、山崎貴監督によるゴジラ映画第2弾『ゴジラ-0.0』です。
みうら この前の『ゴジラ–1.0』が上映されたのは3年ぐらい前になりますか。そのおかげで、と言っちゃ何ですが、美大時代の怪獣好きな友だちと久しぶりに再会することになったんです。ひとりは三浪で、僕が二浪で、もうひとりが現役で合格したトットリ君です。
── この連載でもたまに話題に挙がるトット・リーさんですよね?
みうら そう、鳥取県出身でブルース・リーファンのトット・リーです(笑)。
── 再会どころか、よくお会いになっている印象がありますが。
みうら いや、3年くらい前からよく会うようになったんです。三浪は玉手氏っていう人で、昔から仙人みたいな風貌から名字に「氏」を付け呼びます。いまだに髪が腰まであるんですよ。
前作のときに「『ゴジラ』の新作観た?」みたいな話から、「そろそろまた久しぶりに会おうか」という話になったんです。それで年に3回ぐらい会うようになりました。
── かなり頻繁に集まっていらっしゃる。
みうら 老人にしてはね(笑)。
そのとき何度も話が出たんですけど、西武園ゆうえんちに「ゴジラ・ザ・ライド」っていうアトラクションがあるじゃないですか。
『ゴジラ-1.0』と『ゴジラ-0.0』の山崎監督のチームが作られたと聞いてますが、映像がうわーって迫ってきて、きゃーとか絶叫マシンみたいなやつなんでしょ? ただ僕らは絶叫するには歳をとり過ぎていて、絶叫したら最後、あの世ってことにもなりかねませんよね(笑)。だから、不安でまだ行ってないんですよ。
で、この間会ったときにも、また「ゴジラ・ザ・ライド、いつ行きます?」って話になったんですよ。それで携帯を開いて初めて調べてみたんですが、客席には座るらしくって、トロッコが激しく動くみたいな僕らが怯えていたタイプではなかったんですけどね。でも椅子が上下にすっごい動いて、結構怖いらしいんですよ。一応、年齢制限としては4歳から乗れるって書いてあったんですけど。
── 4歳でも耐えられるぐらいなら余裕じゃないですか?
みうら そう思うでしょ。でも、年齢の上限は示してないわけですよ。これ以上の高齢者は乗ってはいけないっていう上限が指定されてない。やっぱり心配になりましてね。西武園ゆうえんちは、ゴジラが好きなジイさん、“ゴジイさん”たちのこと、どう思ってらっしゃるんでしょう?
そろそろ「ゴジラ・ザ・ライド」に安心して乗せてほしいんです。だから、「今度また新作あるね」って話になったから、「よし! これを機に11月に絶対、3人で乗りに行こう!」と決意したんです。もうこっちからしたら命懸けでね(笑)。
── 人生最後の日かもしれないってことですね(笑)
みうら いや、それでなくても若い頃から絶叫マシーンは苦手でしたから。ただ、一番年長である玉手氏は「俺は怖くないから大丈夫」って言うんです。だから西武園ゆうえんちには今後、“ゴジイさん”が観るための時間を設けてもらい、そのときは椅子が動かないようにしてもらっていいですか?
── 映像だけ見せてくれと?
みうら そうです。だって我々は映像が観たいだけなんだもん! 何時から何時までの回では椅子は動きませんよっていうルールにしてほしいんです。それをこの「ぴあ」の連載を通じてお願いしたいんです(笑)。
僕らは映像が見たいんです。絶叫したくないんです。““ゴジイさん”たちはゴジラがガーッて近寄って来たりするのはむしろ嬉しいわけで、絶叫なんてしないです。
── 「ウルトラマン・ザ・ライド」ってのもあるんですね。
みうら そっちも当然、乗るつもりでいますが、どれくらい揺れるんですかねぇ。
── ゼットンの脅威に立ち向かうと書いてありますね。みうらさんもゼットンに立ち向かいたい気持ちがあるんじゃないですか?
みうら いや、ウルトラマンがゼットンに立ち向かっても負けることが決まってますからね(笑)。
── そこでもゼットンに負ける前提なんですね。
みうら いや、それは乗ってみないと分からないでしょうからね。でも、それも揺れるんですよ、確実に(笑)。
── それはそうですね。「ゴジラ・ザ・ライド」の宣伝写真も、めちゃくちゃ揺れそうですね。飛び上がったメカゴジラがゴジラに殴りかかってますよ。説明に「圧倒的なスリルとスプラッシュ」って書いてあるんで水もかけられますね。
みうら ……。
── じゃあ、その日は、運命の日ですね。
みうら でも、確実に乗りに行きますから! 新作ゴジラのチラシ見ても、何の予想もできないくらいビビッてますけどね(笑)。
『ゴジラ-0.0』
11月3日(火・祝)公開
(C) 2026 TOHO
『雌鶏』
── 2枚目のチラシは、世界初のニワトリ主演映画『雌鶏』です。最近、この連載でイヌが主演のホラーも取り上げましたよね?
みうら やりましたね。イヌ目線モノ。これはトリ目線モノになりますが、どうやら今、「目線シリーズ」が流行ってるっていうことですね。
── 新しい鉱脈が見つかったみたいなことなんでしょうか。
みうら 目線を変えて、そのものの気持ちになって世界を見てみよう。そうすれば相手がどんな気持ちだったかが分かるからってキャッチコピーをチラシに入れた方がいいと思いますね。今後もカメ目線とか、カマキリ目線とか、いろいろ目線シリーズは増えていくでしょうね。
── ロバとか牛目線の映画もありましたね。
みうら いっそのこと、「目線シリーズ最新作!」って打ってもらうと分かりやすかったかもしれないですね。
そのニワトリの中でも「雌鶏」だっていうところが、この映画の大きなヒントなんでしょうね。このニワトリはもう人間社会に出ちゃってるわけだから、別に卵を産まなくてもいいと思っていますね。人間目線だと「卵を産む動物」だと思われてるかもしれないけど、今の私は違うのよってね。
── 家畜から物申すってことですね。
みうら そうですね。よく人間はイヌの頭を「よしよし」なんて言ってグシャグシャって撫でるじゃないですか。あれだってイヌからすれば、せっかく綺麗な毛並みになってるのに、グシャグシャにするなって言いたいはずです。「俺ら、頭撫でられたかといって嬉しいわけじゃねえぞ」っていうことを訴えたがってると思うんです。
── 確かホラーだったと思いますけど。
みうら ある意味、ホラーじゃないですか? 動物にとって。
── でも、そういうメッセージもあったかもしれないですね。
みうら 今回、あえて雌鶏をテーマにしたっていうことで、「別に産みたくて産んでたわけじゃない!」ってことを、最終的にこの雌鶏が国会かどこかで一席ぶつところがハイライトシーンだと思います。「総理! 雌鶏をただ産むための動物だと思ってませんか!?」ってね。
── ニワトリ、だいぶ喋ってますね。
みうら たぶん『ベイブ』くらいは喋るでしょうね。
── そういえば最近公開された『ひつじ探偵団』っていうのも羊目線の映画でした。
みうら やっぱり目線モノ、流行ってるんですよ。
たぶん第2弾は『猿の惑星』みたいな展開になるんでしょうね。何百年後かに、ケンタッキーフライドチキンの看板が砂漠みたいなところにガッと刺さっているシーンが僕には見えますね。まあ、警告ですよね、人間へのね。
たぶんこのニワトリは最終的に捕まえられて、また養鶏場に戻されるんだと思うんですけど、ラストシーンで、こっちを振り向いてニヤッと笑うと思うんです。『オーメン』のダミアンみたいにね。
── このチラシの写真も、笑う直前の可能性がありますね。
みうら おそらくこの後は政府に入り込んで、天下を獲ると思います。
── 壮大なシリーズになりそうですね。
みうら 自分で言っててワクワクしてきました(笑)。
『雌鶏』
上映中
(C)2025 Pallas Film-Twenty Twenty Vision-View Master Films-ZDF
『ディスクロージャー・デイ』
── 3枚目のチラシは、スティーヴン・スピルバーグ監督のSF映画『ディスクロージャー・デイ』です。
みうら この映画はね、馬とかいろんなものを扱ってきたスピルバーグ監督が、久しぶりに原点回帰した作品だと思います。
── そうでした。スピルバーグ、馬目線の映画(※『戦火の馬』)もやってましたね。
みうら スピルバーグさん、目線シリーズも早かったですからね(笑)。このチラシを見る限り、今回は、確実に『未知との遭遇2』じゃないですか。で、「真実が開示される」ってコピーも書いてあるんだから、「ほら! 本当だったでしょ」って言いたいわけですね、スピルバーグさんとしては。
「やっぱり本当だったでしょ!」っていうのを、歳を重ねてあらためて言いたい。すなわちそれは、ファンタジーの「ジー」が爺さんの「爺」、すなわち「ファンタ爺」の話に違いありません。
── 確かにスピルバーグもまあいいお歳ですからね。
みうら 僕、今度『ファンタ爺のめざめ』ってタイトルの本出すんですけど、スピルバーグ監督こそが元祖・ファンタ爺ですからねぇ。
だから『ディスクロージャー・デイ』とは『ファンタ爺の真実が明かされる日』っていう意味でしょう。
── ちなみに「ディスクロージャー」は開示という意味ですね。
みうら ちょっと違いましたが大体、同じですね(笑)。
── チラシの情報がかなり少ないデザインですけど、もうUFOであることは間違いないんですね。
みうら ですね。でも、そのUFOに目が描いてあるように見えますね。当然、これはUFO自体が宇宙人であったってことです。
── チラシの裏面には「それは79年間隠されてきた最高機密」ってデカデカと書かれています。
みうら 昔はUFOの中に宇宙人が乗ってると、みんな思ってましたからね。もしかして、スピルバーグ監督が79歳なのではないですか?
── 確かにスピルバーグは現在79歳です!
みうら となると、これはもう完全にスピルバーグの自伝映画。
── この映画の予告編を映画館でよく見るんですけど、最初にスピルバーグが出てくるヘンな予告編なんです。
「私は以前『未知との遭遇』を作りましたけど、あれから時が経って、さらに確信に変わりつつあります」みたいな話をするんです。
みうら やっぱりね。ファンタ爺の告白映画に違いありません。スピルバーグ監督作を観てきた僕らファンも今ではすっかり老人ですから、グッとくること間違いありません。
『ディスクロージャー・デイ』
上映中
(C)Universal Studios. All Rights Reserved.
取材・文:村山章
プロフィール
みうらじゅん
1958年生まれ。1980年に漫画家としてデビュー。イラストレーター、小説家、エッセイスト、ミュージシャン、仏像愛好家など様々な顔を持ち、“マイブーム”“ゆるキャラ”の名づけ親としても知られる。『マイ修行映画』(文藝春秋)、『みうらじゅんのゆるゆる映画劇場』『「ない仕事」の作り方』『アウト老のすすめ』『見仏記 三十三年後の約束』(ともに文春文庫/『見仏記…』はいとうせいこうと共著)など著作も多数。