田中泰の「クラシック新発見」
“ピアニストの清教徒”ラフマニノフ
隔週連載
第56回

セルゲイ・ラフマニノフ
「ラフマニノフは背が高く(198センチ)、深いしわが刻まれた仏頂面と、剃ったように短く刈り上げた頭によって、人々に“自由な身の囚人”を連想させた。彼はくつろぐ姿をみせたことがなく、聴衆は悲しみを秘めたこのロシア人の顔がほころぶところすら見たことがなかった。しかし一旦ピアノに向かうと、信じられない程の技巧を持った巨大な手がブロンズのような音を創り出し、堂々たる建造物のような音楽を構築するのだ。(中略)アメリカの聴衆はそんな彼のことを、尊敬の念を込めて“ピアニストの清教徒”と呼ぶのです」(『ピアノ音楽の巨匠たち』:ハロルド・C・ショーンバーグ著より)