田中泰の「クラシック新発見」
「東京・春・音楽祭2026」と東京文化会館
隔週連載
第131回
(C)飯田耕治
今年も桜の季節の訪れとともに、上野を舞台とした国内最大級のクラシック音楽祭「東京・春・音楽祭2026」の開催シーズンがやってきた。
22年目となる今年のプログラムの充実ぶりも「素晴らしい!」のひと言。国内外の一流アーティストによる演奏会はもとより、街角で気楽に楽しめる音楽との出会いの場の演出等々、上野の森は今年も百花繚乱の艶やかさだ。
中でも注目は、東京文化会館大ホールで披露される、ふたつのオペラ作品(演奏会形式)と4つのオーケストラ公演だ。「ワーグナー・シリーズ」の『さまよえるオランダ人』と「プッチーニ・シリーズ」の『マノン・レスコー』を並べた布陣は観応え十分。オペラ初心者にもお薦めできる演目であることが嬉しい限り。「合唱の芸術シリーズ」で披露されるシェーンベルクの『グレの歌』とハイドンのオラトリオ『四季』からは、新たな刺激が得られるに違いない。そしてピアノ好きにとってたまらないのが、オーストリアの巨匠ルドルフ・ブッフビンダーによる、ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲全曲演奏会(弾き振り)」だろう。今年80歳を迎える巨匠の至芸やいかに。2027年の“ベートーヴェン没後200年”のメモリアルイヤーに弾みをつける、強烈な一撃が期待される。
音楽祭のメイン会場となる東京文化会館においては、小ホール公演も粒ぞろいだ。649の客席が絶妙な配置でデザインされたこのホールの素晴らしさは筆舌に尽くしがたい。そこに名手たちの名演奏を注ぎ込むさまは、まさに最高のワイングラスで極上のワインを味わうのにも似た感覚だ。この東京文化会館(1961年開館)が、2026年の「東京・春・音楽祭」閉幕直後の5月から、約3年間の改修休館に入ることは寂しい限りだ。
かつて、東京の音楽シーンは、この東京文化会館を中心にまわっていた。ある年齢以上のクラシックファンにとって、忘れがたく掛け替えのないコンサートの記憶は、そのほとんどが東京文化会館とともに在ったと言っても過言ではないだろう。評論家の吉田秀和氏が「幸せの空間」と呼んだコンサートホールの頂点に君臨していたのが、この東京文化会館だったのだ。日本を代表する建築家 前川國男設計による堂々とした構えの建物に、広々としたホワイエと高くて広い舞台。音響の良さはかねてから定評のあるところだ。都市型のホールが多い中において、東京文化会館のなんとおおらかなことだろう。
近年、東京には大小さまざまなホールが新設され、いつしか東京文化会館の存在感が薄れてきたことは否めない。その価値を再び世に知らしめたのが、東京文化会館をメイン会場として2005年にスタートした「東京・春・音楽祭(2009年に“東京のオペラの森”から改称)」であることは間違いない。
今年の開幕を飾る「オープニングガラ・コンサート 室内楽の夕べ」においては、音楽祭ゆかりのメンバーが多数出演。日本の音楽史を牽引してきた東京文化会館への思いを込めたステージが披露されることにも注目したい
さて、筆者がナビゲーターを務める「J-WAVEモーニングクラシック」では、3月9日(月)から12日(木)までの4日間にわたって、「東京・春・音楽祭2026」を特集予定。40日間にも及ぶ巨大音楽祭の魅力を感じていただければ幸いだ。そして是非、上野の森にも足を運んでいただきたい。
東京・春・音楽祭2026
■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/events/tokyo-harusai/
3月13日(金)〜4月19日(日)
東京文化会館、東京藝術大学奏楽堂(大学構内)、旧東京音楽学校奏楽堂、国立科学博物館、東京国立博物館、東京都美術館、国立西洋美術館、上野の森美術館ほか
https://www.tokyo-harusai.com/
「J-waveモーニングクラシック」
https://www.j-wave.co.jp/original/tmr/classic/
プロフィール
田中泰
1957年生まれ。1988年ぴあ入社以来、一貫してクラシックジャンルを担当し、2008年スプートニクを設立して独立。J-WAVE『モーニングクラシック』『JAL機内クラシックチャンネル』などの構成を通じてクラシックの普及に努める毎日を送っている。スプートニク代表取締役プロデューサー。
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