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佐藤寛太の偏愛主義でいこう!

『Blind Mind』の脚本家・プロデューサーである灯敦生さんにインタビューしました!<前編>

月2回連載

第32回

今回は、1月6日(金)から公開の寛太さんの主演短編映画『Blind Mind』で脚本とプロデュースを担当した灯敦生(ともり・あつき)さんにインタビュー! 灯さんは女優・脚本家・作詞家・映像監督などとしてマルチに活躍中で、最近では『お耳に合いましたら』『雪女と蟹を食う』『真相は耳の中』などのTVドラマの脚本も担当。恋に無欲な盲目の青年・祐と、ルッキズム(外見至上主義)に苦しむインフルエンサーの少女・フミカの出逢いの物語である今回の『Blind Mind』では、『イタズラなKiss The Movie』で共演するなどかつてより友人だった寛太さんを祐役に当て書きしたとのこと! そんな仲間との映画づくりは寛太さんにとってどんな体験になったのか、前後編でお届けします!

「主人公は最初から寛太のイメージだった
すごく行儀がいい顔をしてるから」

佐藤 僕が初めて出演した映画が公開を迎えられなかったんだけど、そのときに脚本家で入っていたのが敦生ちゃん。年齢も近いから話すことも多くて、撮影中もずっとついてきてくれていたんだよね。

灯 私は撮影現場でスクリプターもやっていたから、一緒に行動していたね。

佐藤 自分のお芝居がどうだったのか、いつモニターをチェックするのか何もかも分からなくて、いつも教えてもらってた。現場にスチールで入っていたカメラマンの男の子とも交流があって、もうかなり長いつき合いだね。

灯 みんな映画が好きで、盛り上がった思い出がある。メジャーもインディーズもよく観てた!

佐藤 映画の話、めっちゃしてたねー! 今より映画を観ていた頃だから。社会人になって観なくなる人が多いみたいだけど、俺もそのパターンかも。

灯 それでも結構観てる方だと思うよ。

佐藤 「こんな連載をやらせてもらってるのに!」って思って、最近は映画館に行くようにしてる。で、その後『イタキス』(『イタズラなKiss The Movie』)で共演させてもらったり、近年は共通の知人も増えてきたりして。豊島(圭介)監督とも敦生ちゃんの話をしたよ。

灯 私も脚本家の田渕(久美子)さんから、寛太と話したとご連絡をいただいたり。

佐藤 最近はそういうことが増えてきたよね。『Blind Mind』を撮ったのは、もう2年前くらい?

灯 クランクアップは2021年の3月だね。

佐藤 この映画を作ろうと思った経緯は?

灯 台本自体は2015年には書いていて、コロナで動きが取れなくなってきた状況でなにができるんだろう?と思ったときに、時を経てこの企画を動かし始めたんだよね。

佐藤 書いた当時はどんな思いがあったの?

灯 大学には入ったけどまだなにも分からないし、なにもできないし……、って葛藤はあったかな。それでも私は「なにかやろうよ!」って自分から言ってくタイプだったから、同級生の矢野(友里恵)監督と動き出して。本作の主人公が盲目なのは、私の祖父母が聴覚障害者で、監督のおばあちゃんが視覚障害者なのが関係してる。

佐藤 白杖を貸してくれたもんね。

灯 そうそう。あと今ほど認知は高まっていなかったけどLGBTQについて描いたり、ブラックの方に出ていただきたいという思いも当時からあった。身近に、当たり前にいる存在だからこそ気になってた。

佐藤 その頃からルッキズムは気になっていたの?

灯 当時からもうSNSのカルチャーとルッキズムって切り離せないものになっているな、とは感じていたかな。

佐藤 いろんな意味で、このタイミングで作れたのはすごくよかったかもしれない。

灯 そうだね。書いたままになっていた脚本だけど、コロナ禍の助成金を使って映像化することになり、映画やCM現場の友人たちを集めた。主人公を誰にやってもらうのか考えたとき、最初から私の中では完全に寛太のイメージだったの。だって、すごく行儀がいい顔をしているから。

佐藤 行儀がいい顔! 素晴らしい表現じゃん。パンチライン(笑)。

灯 今回は特に瞳が大事な映画だったから、目をシンボリックに描きたいと思って、すぐにまつげがきれいな寛太の顔が浮かんだ。現場でよく寝るから、目を閉じている行儀いい寛太の顔をスタッフ陣はみんなよく見ていると思うよ(笑)。

佐藤 めっちゃうれしい。

「この映画との出会いが
現状に対する突破口になってくれたら」

佐藤 目が見えない主人公の祐が健常者の中で暮らす日常を描きながら、目が見えるから人と繋がれるとか、目が見えないから人と繋がれないとか、そういう境界線って本当はないんだよね、ってことを伝える映画になっていると思う。隣にいるだけであったかい気持ちになったり、たったひと言で救われたり、その逆のこともあったり。

灯 他人の視線と接しないまま生きている祐に対して、フミカは周りの目を気にしすぎちゃう女の子。今、フミカみたいな子って本当に多いんじゃないかなって。他人の目に左右される生き方をほぐしてくれるのが祐だし、SNS世代にとってこの作品そのものが祐みたいな存在になれたらいいな、と思う。本作との出会いが、観てくれた方々にとって、コロナ禍も含めた現状に対する突破口になればうれしいです。

佐藤 素晴らしい! 俺が言いたいことが全部入っている完璧なコメント。

灯 (笑)。撮影中、寛太は白杖の使い方もすぐに自分に馴染ませていて、すごいなと思ったよ。

佐藤 そういうことを練習するのは当たり前だし、おじいちゃんが町医者をやっていたから、目が見えない鍼灸師の方が生活の中にいたんだよね。見えない役を演じることを、そんなに特別なこととして捉えていなかったかもしれない。

灯 なるほど。この作品表現のうえで、障害を特別視しないっていう思いは脚本制作にもあったな。本作自体は、どちらかというとAセクシャルとか、恋が分からないってことがテーマだから。

佐藤 でも自分のイメージとしては見えている感じで演じたから、視覚障害者の方の家族が見たらどう思うだろう、っていうのはちょっとある。祐って目が見える人のように振る舞うことに対してのプライドを持っていて、特別な存在として扱わなくていいからとにかく普通に接して、ってタイプの男の子でしょ。子供の頃に傷つけられた経験もあるだろうし、きっと親に見てもらいながら目が見える人のような目線で話せているかどうか練習したんじゃないかな。

灯 幼少期の頃のこともちゃんと考えて演じてくれたんだね。

佐藤 もちろん、それはそういう脚本だから。でもあくまでもこれは俺の解釈であって、正解だったかどうかは分からない。

灯 もっとアイコニックに演じる選択も、逆に写実的に演じる選択もあったかも……ってことだよね。視覚障害監修の方にも入ってもらっているから、そこは安心してもらっていいと思う。ラストシーンに関しては、視覚障害者の現実の生活ではあり得ないことだけれど、これは表現のひとつだと思うので、って納得してくれて。

佐藤 よかった。

灯 私は寛太がそんな風に背景を考えて演じてくれたことが、すごくうれしいんだよね。

<後編につづく>

取材・文:細谷美香
撮影:稲澤朝博
ヘアメイク:KOHEY

『Blind Mind』
1月6日(金)公開

(C)2021Yurie Yano/Atsuki Tomori

プロフィール

佐藤寛太(劇団EXILE)

1996年、福岡県生まれ。2015年に劇団EXILEのメンバーとなり俳優活動を開始。主な出演作に『恋と嘘』『わたしに××しなさい!』『DTC-湯けむり純情篇-from HiGH&LOW』『家族のはなし』『走れ! T校バスケット部』『jam』『今日も嫌がらせ弁当』『いのちスケッチ』(以上映画)、『探偵が早すぎる』『駐在刑事』『僕の初恋をキミに捧ぐ』『おやすみ王子』『ラッパーに噛まれたらラッパーになるドラマ』『ハゲしわしわときどき恋』『美食探偵 明智五郎』(以上TV)、「音楽劇『銀河鉄道の夜2020』」(舞台)など。
2021年は、『ヒミツのアイちゃん』(FODで配信中)、『劇団EXILEがゴルフを始めて100日間で100切り目指すTV』(テレビ東京系)、『シェフは名探偵』(テレビ東京系)、TBS日曜劇場『TOKYO MER 走る緊急救命室』『JAM -the drama-』などに出演。12月公開の映画『軍艦少年』では主演を務めた。
2022年は、『駐在刑事 Season3』にレギュラー出演したほか、『あせとせっけん』(MBSほか)で大原優乃とダブル主演、7月から放送された『テッパチ!』(CX系)にも出演した。3月には舞台『怖い絵』に出演、4月からはWeb版『PEAKS』にて連載「旅する寛太」がスタートしている。Prime Videoで独占配信中のAmazon Originalドラマ『結婚するって、本当ですか』に出演。

本連載の前身、佐藤大樹さん&佐藤寛太さんの連載はコチラ!