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佐藤寛太の偏愛主義でいこう!

『Blind Mind』の脚本家・プロデューサーである灯敦生さんにインタビューしました!<後編>

不定期連載

第33回

今回は前回から引き続き、寛太さんの主演短編映画『Blind Mind』の脚本家・プロデューサーであり、昔からの友人でもある灯敦生(ともり・あつき)さんへのインタビュー後編をお届け。大きな後ろ立てもないインディペンデント映画である本作で、特にプロデューサーとしての苦労はどんなところにあったのか? 若い世代で映画づくりに向き合うことの課題とは? 熱く語り合っていただきました!

作品のための人材マッチングをする
プラットホームがあるといいよね

佐藤 今回、スタッフは敦生ちゃんの友達だよね?

灯 そう。ほぼ日芸(※日本大学芸術学部)の同期・先輩・後輩たち。

佐藤 みんな照明部、撮影部って専門職に就いて仕事をしてる人たちが集まって、「なにか面白いものを作りたいよね!」っていうのがいいなと思った。普段スペシャリストだから、芸術活動をするときにもゆるさがないし。

灯 確かに。これは労働ではなくて、意欲だけが原動力の作品だったから、妥協を持ち込む人がいなかったかもしれない。

佐藤 いい現場だったよね。カメラを向けた先になにか邪魔な物があったら、何部の人かどうかに関係なく全員で動かす、みたいな。

灯 普段、会社に所属して働いている人も多いから、今回みたいな作り方だと「これは自分たちの作品なんだ」っていう意識とか自信にもつながるかな、って思った。

佐藤 劇場公開することになったのもすごいことだよね。今回は脚本以外にも、企画・プロデュースをやってみてどうだった?

灯 もう、超大変だった。スタッフィングやキャスティングはこれまでの関係性でできることもあったけど、撮影後に公開へ結びつけるため、配給会社を探すとか契約書を交わすとか、そういうことは未知だった。

佐藤 俺、今日ひとつ提案したいことがあって。若いスタッフさんって、自分の名前を出して作品を負うみたいなことがなかなかないじゃん。だからショートフィルムとかを撮りたいっていうときに、プロデューサーが声をかけやすい仕組みを作れたらいいと思わない?「こういう人を探してるんだけど、いない?」がひと目で分かる掲示板みたいな。

灯 事務所も関係なく、ってことだよね。

佐藤 そうそう。今回、音楽を友だちのTimeless Waveにやってもらって思ったんだけど、デジタルの世界の中でバズっているわけではなくてもすごい才能を持った人たちって、たくさんいるでしょ。専門職で働いている人、普段はサラリーマンをしている人、クリエイターとしての仕事だけでは食べていけない人、いろいろな人をつなげていける場所を作って、ゆくゆくは大きくできたら楽しいんじゃないかな、と思った。

灯 プラットホームか。『Blind Mind』の経験を通して、作品制作の仕組みについても考えていたんだね。

佐藤 millennium parade(※King Gnuのメンバー常田大希が主宰する音楽プロジェクト)みたいにプロジェクトごとに参加する人が違うのも面白いと思うし。ハリウッドで企画、製作、脚本、監督、主演を全部やるすごい人もいるじゃん。

灯 スタローンだ(笑)。

佐藤 あとはイーストウッドとかね。それはそれですごいと思うけど、俺は分業の強みとか面白さもあると思う。

灯 今、深夜ドラマの脚本をめっちゃ書かせてもらっているんだけど、1本のドラマに脚本家が3人ずつくらい入ってるのね。プロデューサーや演出部も含めて10人程で打ち合わせをするからいろんな揉み方ができて、他の回と差別化してみようっていうチャレンジ精神にもつながるし、すごくいいなと思う。いろいろなポジションの専門家の人がそれぞれの立場からものを言う打ち合わせは、私は好き。

佐藤 でもそういうときに俺はすぐ余計なことを言っちゃう方だからさ、“沈黙は金”を肝に命じているくらいがちょうどいいかなとは思ってる(笑)。

灯 何十年後かにそういう大人を目指しているってこと?

佐藤 だんだん池松壮亮さんになっていくっていうプランはある。

灯 時期は被っていないんだけど、池松さんは通っていた大学の先輩で、郊外の駅で「俺は池松壮亮だ〜!」って叫んでいた時代があるらしい(笑)。ずっと大好きな役者さん。

佐藤 そういう時代があったっていうのがまたいいよね。

全てにおいて協力的で
天使みたいな存在だった平祐奈

佐藤 敦生ちゃんは映画学科卒だけど、今の肩書きはどんな感じにしてるの?

灯 脚本家、作詞家、役者、映像監督……、とにかくなんでもやる、よろずやさんだね(笑)。『Blind Mind』では寛太をはじめ友だちがいっぱい協力してくれているので、人と作品を繋ぐプロデューサーの役割だったな。

佐藤 オファーをもらったときに相手役はこれから決めるって言われたんだよね。で、「隣に今共演している平祐奈ちゃんがいるから聞いてみようか?」って俺が言って(笑)。

『Blind Mind』場面写真。ヒロイン、フミカを演じた平祐奈(左)。

灯 本当にそんな感じだったと思う。演りたいって言ってくれているけど、とりあえず1回事務所通さないと、みたいな(笑)。

佐藤 俺の性格的にも最初に本人に言って、事務所の方から話がいくのが理想的だなと思ったから。

灯 祐奈ちゃんってさ、あんなに全てにおいて協力的で、天使みたいな人って本当に存在するんだね。ありがたくて何度か手を合わせたくらい。

佐藤 世の中捨てたもんじゃない、って思わせてくれる存在だよね。

灯 私が人として一番素敵だと思った先輩の役者さんは、『189』っていう映画で共演した吉沢悠さんなの。1週間ほどの撮影期間だったのに、合間の撮休日に、私がやっていた舞台を観にきてくれるくらい優しい方で。その吉沢さんが祐奈ちゃんのことを、あんなに素晴らしい子には出会ったことがないって褒めていた(笑)。

佐藤 天使エピソードがどんどん増える(笑)。実際に神道を学んでいる巫女さんでもあるしね。

灯 そういう人とご縁があるっていうのも、寛太の人徳だと思うよ。

佐藤 人との出会いは本当に大事だと思ってるし、“人運”はめっちゃある!

灯 それこそ寛太と出会ってから何年も経って、今のタイミングで再び作品をご一緒できるっていうのも縁だよね。撮影期間も含めて、2021年のあの時期だったからできたわけで。

佐藤 キャリアを少しずつ重ねて、お互いに名前を聞くようになってからできたのがまたうれしいよね。

灯 本当にそう思う。

1月6日(金)に行われた『Blind Mind』初日舞台挨拶でのひとコマ。左から、灯、平祐奈、佐藤、モクタール、矢野友里恵監督。(撮影:内田涼)

大変だったプロデューサー業
同世代の人材育成の重要性を実感

佐藤 今回、プロデューサーのポジションを敦生ちゃんが全部やってくれて、俺は業務的なしんどさを体験してないから言えるのかもしれないけど、こんな風に自由な場所があるんだな、またできるんじゃないかな、って思った。自分たちが作るショートフィルムとかインディーズ映画って、全部に血が通っている感じがしたんだよね。全員が同じテーブルについて、作品に向き合いながら作ることがすごく楽しかった。

灯 そう言ってもらえると、すごくうれしい。

佐藤 一番大変だったのはどんなこと?

灯 結局お金のことかな。基本持ち出しだから、やればやるほど赤字……。自分たちで映画を作るには、出資してくれるスポンサーを探したり、せめてクラファンすべきだったなと思った。だから現実的な話としては、クリエイターとスポンサーを繋ぐプラットホームがあるといいんじゃないかな。

佐藤 でもその場合には、これを作ってほしいっていう要望に応えなくちゃいけなくなる?

灯 そうとも限らない。若い力や、文化を応援する姿勢を打ち出したいから、エンドロールに会社名を載せることがPRになる、っていう風に考えてくれたら理想だね。

佐藤 なるほど。その企業がどんなことをして利益を生んでいるのかも調べないといけないから簡単なことじゃないね。

灯 今回も障害者支援団体とか他にもいろいろ、ご協力頂けないか相談してみようかとも思ったけど、撮影や編集作業と並行して、一から探してお願いするのも相当大変だから、だったら自分で……、と思ったりして。

佐藤 難しい問題だね。すべてに予算がかかるもんね。

灯 スタッフさんも友だちとはいえ、何日も取り組んでもらえばもちろんギャランティが発生するしね。

佐藤 それは大事なことだと俺も思う。

灯 俳優さんたちに関しても、寛太や祐奈ちゃんの事務所のサポートがあったからこそできた作品だし、自由にやらせてもらいながらも私は、個人でやることの限界をちゃんと感じたかな。

佐藤 次にまた一緒にやるなら、そこも分業できるといいよね。

灯 予算に関するプロフェッショナルな人は必要だと思う。……と言いつつ、あまりにも年齢が上の人だとすべてを教えてあげる、みたいな感じになるからイヤだな、なんて思ったりもして(笑)。

佐藤 分かる、分かる(笑)。

灯 日本の映画教育はアウトプットが弱くて、学生映画を作る人はすごく多いのに劇場公開する作品は本当に少ないんだよね。そのあたりの問題は同世代のプロデューサーを育成することで解決していくのかもしれない。

佐藤 今回、この映画が劇場公開まで行けたことで見えてきた部分もあるから、また一緒に作れたらうれしいな。

灯 ぜひ、こちらこそよろしくお願いします!

取材・文:細谷美香
撮影:稲澤朝博
ヘアメイク:KOHEY

『Blind Mind』
上映中

(C)2021Yurie Yano/Atsuki Tomori

プロフィール

佐藤寛太(劇団EXILE)

1996年、福岡県生まれ。2015年に劇団EXILEのメンバーとなり俳優活動を開始。主な出演作に『恋と嘘』『わたしに××しなさい!』『DTC-湯けむり純情篇-from HiGH&LOW』『家族のはなし』『走れ! T校バスケット部』『jam』『今日も嫌がらせ弁当』『いのちスケッチ』(以上映画)、『探偵が早すぎる』『駐在刑事』『僕の初恋をキミに捧ぐ』『おやすみ王子』『ラッパーに噛まれたらラッパーになるドラマ』『ハゲしわしわときどき恋』『美食探偵 明智五郎』(以上TV)、「音楽劇『銀河鉄道の夜2020』」(舞台)など。
2021年は、『ヒミツのアイちゃん』(FODで配信中)、『劇団EXILEがゴルフを始めて100日間で100切り目指すTV』(テレビ東京系)、『シェフは名探偵』(テレビ東京系)、TBS日曜劇場『TOKYO MER 走る緊急救命室』『JAM -the drama-』などに出演。12月公開の映画『軍艦少年』では主演を務めた。
2022年は、『駐在刑事 Season3』にレギュラー出演したほか、『あせとせっけん』(MBSほか)で大原優乃とダブル主演、7月から放送された『テッパチ!』(CX系)にも出演した。3月には舞台『怖い絵』に出演、4月からはWeb版『PEAKS』にて連載「旅する寛太」がスタートしている。Prime Videoで独占配信中のAmazon Originalドラマ『結婚するって、本当ですか』に出演。

本連載の前身、佐藤大樹さん&佐藤寛太さんの連載はコチラ!