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佐藤寛太の偏愛主義でいこう!

映画『怪物』を観て感じたこと

月2回連載

第35回

今回寛太さんにお聞きしたのは、最近観た“刺激を受けた映画”について。寛太さんが語ってくれたのは、6月に劇場公開され、いまだロングランが続いている(※8月下旬現在)是枝裕和監督の『怪物』! この作品を観てあらためて俳優という存在について考え、また自身の新作『正欲』にも想いを馳せたという寛太さん、そのアツい独白をお楽しみください。

少し前のことにはなりますが、今年観た映画の中で刺激を受けたのは是枝裕和監督の『怪物』です。凝縮された2時間の映画体験でした。ひとつの出来事を視点を変えながら描く手法が取られていて、当事者としての見解の違いや、正しさの曖昧さが見え隠れしていて、終始物語に惹きつけられる、エンターテイメント性あふれる作品でした。

『怪物』上映中

ひとりの人の行動を違う角度から切り取るとまったく別人のように見えることもあるし、予告でも流れていたように「怪物だーれだ」の答えも、観客がどう本質を捉えるかによって全然印象が違うものになる。そのことを視点の違う章立てで浮き彫りにしていく構成が、本当に素晴らしいと思いました。

ある嘘が物語の鍵を握っているのですが、自分が子供の頃もこんなことがあったなと思い出しながら観ていました。嘘をひとつついたらみんなが信じてくれたから、自分もそのままにしちゃったことがあったな、って。坂元裕二さんは人生で起きた出来事を心の中にしまって忘れるのではなく、物語の世界で魅せてくれる。言葉に生活感が漂う作家さんだと思いました。

子供は悪意のある嘘をつくこともあるかもしれないけど、なぜなのか理由は分からないのに嘘をついてしまうこともある。ある出来事に対しての記憶が、人によって違うこともあります。実家に帰って友達と「あのときはああだったよね」って話をしていても、ちょっとした食い違いがあるじゃないですか。どんな事象でも第三者が見てジャッジできるほど簡単なものなんて、ないんだろうなと思いました。

究極的には、人の内面は分からないものですよね。そのことをこうやって映像化して、しかも子供たちに演じさせた是枝監督はすごいと思います。シーンごとの意味を、一体どうやって伝えたんだろう……。最初は是枝監督が目線なども細かく演出したのかなと思いながら観ていたのですが、途中からは星川依里役を演じた柊木陽太くんはすべてを分かったうえで芝居をしているのかもな、と感じました。

『怪物』の物語のカギを握る少年ふたり、星川依里を演じた柊木陽太(左)と、麦野湊を演じた黒川想矢(右)

カップルや学生の女の子ふたり連れ、年配の人まで、幅広い観客の人たちに囲まれて観終わったとき、こんなにすごい日本映画が生まれる時代に、映画に携わる仕事ができていることが光栄だなと思いました。物語の組み立て、監督の演出、役者さんたちの芝居、撮影や音楽、この中の何かが欠けるとこの世界は成立しない。そう考えると、映画って本当に総合芸術なんだな、と。

いい意味で役者はその中のひとつの要素でしかないけれど、こういうグッとくる映画に携わりたいと強く思いました。そのためには、次の作品に呼びたいと思われる人間でいたいし、俳優でいたい。『怪物』はあらためてそんな風に感じさせてくれた作品です。

『正欲』(11月10日公開)でご一緒した岸善幸監督と是枝監督は、テレビマンユニオンの同期なんです。『正欲』に参加させてもらったことを僕はすごく誇りに思っています。この時代の日本映画界にこのおふたりがいて、同じ年に作品を発表する。岸監督の作品に携われた自分は幸せです。

『正欲』のオーディションに参加する前から元々原作小説を読んでいて深く刺さっていたからこそ、完成された映画を観たときに、客観的に受け止められてはいないと思います。

この作品には力があると思います。日々を生きる原動力になるような、明るい気分にさせてくれるのも映画の持つ力です。一歩立ち止まって、来た道を振り返り、この歩み方で良かったのか、と自身の生き方を振り返らせてくれるのも同じく映画の力だと思います。

『正欲』を観たひとに、「やっぱり映画って良いな」と感じてほしいなと思います。

取材・文:細谷美香
撮影:mitograph
ヘアメイク:KOHEY
※2023年7月収録

(C)2023「怪物」製作委員会
(C) 2021 朝井リョウ/新潮社 (C) 2023「正欲」製作委員会

プロフィール

佐藤寛太(劇団EXILE)

1996年、福岡県生まれ。2015年に劇団EXILEのメンバーとなり俳優活動を開始。主な出演作に『恋と嘘』『わたしに××しなさい!』『DTC-湯けむり純情篇-from HiGH&LOW』『家族のはなし』『走れ! T校バスケット部』『jam』『今日も嫌がらせ弁当』『いのちスケッチ』『花束みたいな恋をした』『軍艦少年』『Blind Mind』(以上映画)、『探偵が早すぎる』『駐在刑事』『僕の初恋をキミに捧ぐ』『おやすみ王子』『ラッパーに噛まれたらラッパーになるドラマ』『ハゲしわしわときどき恋』『美食探偵 明智五郎』『ヒミツのアイちゃん』『シェフは名探偵』『TOKYO MER 走る緊急救命室』『JAM -the drama-』『あせとせっけん』『テッパチ!』『結婚するって、本当ですか』(以上TV)、「音楽劇『銀河鉄道の夜2020』」『怖い絵』『サンソン ―ルイ16世の首を刎ねた男―』(舞台)など。Web版『PEAKS』にて「旅する寛太」連載中。11月10日(金)公開の映画『正欲』にも出演する。

本連載の前身、佐藤大樹さん&佐藤寛太さんの連載はコチラ!