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佐藤寛太の偏愛主義でいこう!

『正欲』で共演した坂東希さんにインタビューしました!

月2回連載

第39回

今回は、大ヒット公開中の『正欲』で共演した坂東希さんが登場! 寛太さんが本作で演じたのは、ダンスサークル「スペード」に所属する大学生の諸橋大也。その「スペード」の代表を務める高見優芽を演じた坂東さんは、かつてE-girlsやFlowerのメンバーとして寛太さんと同じLDHに所属しており、なんと担当マネージャーも同じ方だったとか! そんな関係のおふたりですが、今回も寛太さんがインタビュアーとしてガンガン質問してくれました!

踊ったことないのにダンスの提案をしちゃう寛太くん、すごい

佐藤 最初に言っておきたいのは、『正欲』でダンスを作るところを坂東ちゃんが全部やってくれたんですよ。もちろん先生もいたんですけど、ダンスのパートを担当してくれた演出部の岩屋拓郎さんと連携を取りながら先陣を切ってくれて。俺はダンスが全く踊れないのにああだこうだぶつくさ言って、お世話になりました(笑)。

坂東 私も楽しかったよ。

佐藤 本当に!? よかった(笑)。

坂東 撮影していたときはマネージャーさんも一緒だったしね。ダンスの経験は私の方があるから、全然知らない人だったらどこまでできているのか、できていないのかを言いづらかったと思う。

佐藤 俺も本当にこの関係性がありがたかった。同じ作品のオーディションを受けていることも聞いていて、それも嬉しかったし。撮影に入るまでの2カ月くらい、ずっとダンスの練習をしてたんだよね。週3、4回はやってた?

坂東 もっとやってたかも。ワックっていう女性的なダンスをめっちゃいい感じで練習したよね。寛太くんは手足が長いからすごく映えてた。

佐藤 ダンス練習、ワックもクランプもすごく楽しかったなぁ。

坂東 両方やったもんね。元々はワックを踊っている設定だったのに、寛太くんがオーディションのとき(岸善幸)監督に「これは絶対クランプの方がいいと思う」って言ったっていうのがすごい(笑)。踊ったことがないのに(笑)。

佐藤 確か最初、台本に「ワックとポップで筋肉を弾かせる大也」みたいな描写があって。ポップって映像的にごまかしが効かないし、しかもアニメーションポップで踊るような感じで書いてあったから、それはちょっと違うかもしれないと思ったんだよね。うずうずしたものを発散するかのようにダンスをしているのかなと感じて、それだったらクランプがいいんじゃないですか、と。

坂東 寛太くんとの関わりとしては、オーディションの前に共演させてもらったときはそんなにしゃべっていなくて。

佐藤 そうだっけ? 俺はしゃべってるイメージだったから、誤差がある(笑)。

坂東 どちらかというとマネージャーさんから聞く情報の方が多かったよ。マネージャーさんはお父さんみたいな人だから、そんな感じで自由な寛太くんに優しく接しているんだなと思っていて。だからオーディションでクランプを提案したって話を聞いたときも、さすがだな、やばいやつだなと思った(笑)。

佐藤 まだその役に決まっていたわけでもないのに、自分の聞きかじった知識で提案するっていう(笑)。

リハーサルをしながらふたりで関係性を作る過程が役作りになっていた

佐藤 坂東ちゃんは、原作を読んでどう感じた?

坂東 ずっとナイフで刺されている気持ちだよね。読み終わったときも、どうしよう……、って思った。それこそ最近多様性という言葉をよく聞くし、LGBTQの友だちもいるから分け隔てなく接したいという気持ちはもちろんあるけど、実際に話した後でさっきの自分の発言は大丈夫だったのかな、って不安に思うこともあって。

佐藤 俺もめちゃくちゃある。

坂東 でも考えてみると、相手の情報がこちらに入ってきているから自分の発言に対して大丈夫だったかな? と思う余地があるわけだよね。『正欲』に書かれているように、自分の想像を超えたところにいる人たちが存在しているのなら、多様性について発言するのは難しいなと思った。

佐藤 大也って自分と関わろうとしてくれる人を明らかに拒絶しているから、子どもっぽく見えるところがあって。ただ単純に大也が勝手に自分だけの世界に閉じ込もっている、みたいな。でも理解し合えないというゴールが最初から分かっているのに、関係を築き上げる意味ってあるのかな?と俺は思うんだよね。演じていたときも今も思うけど、大也の生き方ってひとつの正解なんじゃないか、って。でも板東ちゃんが演じた優芽は、ずっと手を差し伸べてくれるじゃん。そこはどんな風に捉えてた?

坂東 優芽は大也のことが好きだったし、関係性を築き上げたいというよりも自分のミッションをクリアしたいという感じだったのかなと思った。大也のためを思ってとかじゃなくて、孤高の存在の大也を手なづけたいというか。

佐藤 確かに、その気持ちよさはありそう。

坂東 (東野絢香が演じる)八重子にも「大也のことをよろしくね」って言うなんて、どこか歪んでるよね。その時点で普通の“好き”じゃない気がする。

佐藤 それは原作を読んだ段階で感じたの? それとも台本を読んだり、演じてみた段階で?

坂東 私たちのセクションは原作の方が長いから、台本を読んだときは短いなと思った。

佐藤 俺らのパート、めっちゃ短いもんね。ダンスのシーンはあんなに使われてるけど(笑)。

坂東 そうそう(笑)。台本では短いから、原作を読んだ印象そのままで演じたら辻つまが合わなくなる気がして。リハーサルをしながらふたりで関係性を作る過程が役作りになっていた感じがしたから、そっちを大切にしたいなと思った。

佐藤 その感じ、すごい分かる。最初の頃、20人ぐらいいるダンサーさんの中に日頃からワックを踊っている人が3人入っていて。俺たちはそんなにワックを踊っていないから、一緒に練習してたんだよね。そのときは話したことがある同じ事務所の人みたいな感じだったけど、練習を重ねてフォーメーションを考えて音源が届いて……、って本番が近づくにつれて、あぁ優芽ってこんな感じなんだろうなっていつも思ってた。

坂東 寛太くんが私にそれを伝えてくれたことがあって、そこからはこれがそのまま役作りに繋がっていくなと思いながらやってた。私も完璧主義というか、やっぱりダンスのシーンに関してはかっこいいものを作った方がいいじゃん!って思っていたから、そこは優芽と全く同じ気持ちだったしね。

佐藤 優芽ってテンプレというか、キャラっぽいところがない? バーってしゃべって白と黒がはっきりしていて、目立つ存在で……、要素が固まりすぎているっていうのかな。

坂東 一番分かりやすいかもしれないね。

坂東演じる優芽と、大也、八重子のシーン

佐藤 でも今話してくれたみたいな板東ちゃん自身のスタンスがあったから、こういう優芽になったんだなと思った。例えば八重子が学園祭のダイバーシティフェスに出演してほしいって依頼しに来て、優芽が「いい考えだと思うよ」と言うシーンも、もっと高飛車で嫌な感じに言う演じ方もあったと思うんだけど。

坂東 でも私は優芽のことを嫌な人だと思ったことはないから。

佐藤 撮影中にもそう言ってたね。俺は大也として優芽を見ていたから、そう感じたんだと思う。分かったような顔で自分に近づいてきてウザいな、って。でも純粋にいいものを作りたいっていう思いがあることが分かると、寛容で優しさもある人に感じられたっていうか。

坂東 確かに、好きじゃないと大学のサークルまで入ってダンスはやらないと思う。大也に対してはこの人を手なづけたいって気持ちがあったかもしれないけど、ダンスに関しては純粋に好きで、楽しんでいたんじゃないかな。

寛太くんは、知れば知るほどクセになるパクチー男子(笑)

佐藤 完成した映画を観て、どんなことを思った?

坂東 私たちは原作を読んでいるからもちろん分かるんだけど、映画だけを観る人がどこまで理解できるんだろう、って思った。

佐藤 性的指向のところ?

坂東 そこに関しても理解できる人と理解できない人がいる話だと思うから、みんなはどんな感想を抱くんだろう。面白いから観てね!って気軽に言えるような作品でもないよね。

佐藤 休みの日に気軽に観に行く作品じゃない。

坂東 だから余計に感想が気になる。私は原作を読んだときに多様性に対する自分の考えの浅さを感じたし、当事者にならないと深く考えないことまで考える機会をもらったと思っていて。

佐藤 原作と台本を読んでからインする前までは、ずっと優芽側の気持ちでいた?

坂東 そうだったと思う。大也たちの世界のことは知らない役だから、あえてそこについて考えすぎるのはやめよう、って思ってた。

佐藤 優芽としてはそうだけど、ひとりの人としては原作のキャッチコピーにあったように「もう読む前には戻れない」状態になったということだよね。

坂東 考え方や見え方が変わって、それがずっと残る原作だと思う。

佐藤 板東ちゃんは自分が演じる役について、監督とディスカッションしたいタイプ?

坂東 う〜ん、どうだろう。私は自分から聞きにいけるタイプじゃないことが分かっているから、まずは全部考えて準備していくかな。で、現場に入ったらそれを全部忘れる!

佐藤 俺、最近そのやり方がいいなと思ってる。

坂東 どういうやり方がいいのかは、監督によるんじゃない?

佐藤 確かに。岸さんは自由にやってくださいって感じだけど、聞くと答えてくれる監督だったね。

撮影中に記念撮影する(左から)岸善幸監督、坂東希、東野絢香、佐藤寛太

坂東 あとは自分がどんな立ち位置で作品に入っているかによって、違ってくるかな。自分のために時間を割いてもらってもいいのかな、って思っちゃう。

佐藤 そんなこと、思う!?

坂東 思う思う、全然思うよ(笑)。だから自分の中で納得がいかなくて現場で混乱させてしまう可能性がありそうだったら、辻つまが合うように考えていく。

佐藤 すごいな。そこの折り合いをつけていくって、ものすごく大変じゃない?

坂東 寛太くんはいつもはっきりしているから、よく折り合いをつけて団体芸とも言えるこの仕事をやっているな、って思う。

佐藤 ね! どうやって折り合いをつけたらいいのか、いつも考えてます(笑)。

坂東 周りの人が助けてくれていると思うし、助けたくなる人なんだと思うよ。知れば知るほどクセになるパクチー男子(笑)。

佐藤 なんか俺が褒められて終わっちゃって、すみません(笑)。

取材・文:細谷美香
撮影:源賀津己
メイク:KOHEY(HAKU)(佐藤寛太)、茂木美鈴(坂東希)
スタイリング:平松正啓(佐藤寛太)、古川耀(坂東希)

プロフィール

坂東希

1997年9月4日、東京都出身。2011年に「EXILE Presents VOCALBATTLE AUDITION3~ForGirls~」のダンスパフォーマンス部門に合格し、FlowerとE-girlsのメンバーとしてデビュー。多彩な表現力でパフォーマーとして活躍後、女優として活動の幅を広げる。主な出演映画は『3人の信長』(19/渡辺啓監督)、『八王子ゾンビーズ』(20/鈴木おさむ監督)、『DANCINGMARYダンシング・マリー』(21/SABU監督)、舞台は「昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ」(作・演出:蓬莱竜太)など。

佐藤寛太(劇団EXILE)

1996年、福岡県生まれ。2015年に劇団EXILEのメンバーとなり俳優活動を開始。主な出演作に『恋と嘘』『わたしに××しなさい!』『DTC-湯けむり純情篇-from HiGH&LOW』『家族のはなし』『走れ! T校バスケット部』『jam』『今日も嫌がらせ弁当』『いのちスケッチ』『花束みたいな恋をした』『軍艦少年』『Blind Mind』(以上映画)、『探偵が早すぎる』『駐在刑事』『僕の初恋をキミに捧ぐ』『おやすみ王子』『ラッパーに噛まれたらラッパーになるドラマ』『ハゲしわしわときどき恋』『美食探偵 明智五郎』『ヒミツのアイちゃん』『シェフは名探偵』『TOKYO MER 走る緊急救命室』『JAM -the drama-』『あせとせっけん』『テッパチ!』『結婚するって、本当ですか』(以上TV)、「音楽劇『銀河鉄道の夜2020』」『怖い絵』『サンソン ―ルイ16世の首を刎ねた男―』(舞台)など。Web版『PEAKS』にて「旅する寛太」連載中。公開中の映画『正欲』にも出演。

本連載の前身、佐藤大樹さん&佐藤寛太さんの連載はコチラ!