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佐藤寛太の偏愛主義でいこう!

いよいよ公開した『不死身ラヴァーズ』を振り返って

不定期連載

第43回

寛太さんが出演する映画『不死身ラヴァーズ』が絶賛公開中! 前回・前々回は松居大悟監督にご登場いただき、寛太さんが監督にアツい想いをぶつけるインタビューをお届けしましたが、今回は『不死身ラヴァーズ』公開後日談。本作のプロモーションでさまざまなインタビューに答え、舞台あいさつにも立ってきた寛太さんが、いよいよ迎えた映画の公開から数日が立ったときにいったいどんな想いを抱いているのか。率直な気持ちをたっぷり語っていただきました!

見上愛さんが弾けていて本当に素晴らしい

憧れの松居大悟監督とご一緒させてもらった『不死身ラヴァーズ』が公開中です。(取材当日は)公開してからまだ日にちが経っていないのですが、ハッシュタグで検索するといろいろなコメントがあがっていて、たくさんの人が注目してくれているんだなと嬉しく思っています。

観る人の心理状態によっても感想が分かれる映画だから、まずは映画館に足を運んでほしいというのが今の正直な気持ちかもしれない。「長谷部りの」を演じる見上愛さんが弾けていて本当に素晴らしいので、一緒に駆け抜けているような気持ちを味わえるし、好きなことを好きって全力で叫ぶ姿を描いた映画なので、斜に構えずに観に来てほしいです。僕も近々、映画館に観に行こうと思っています。

前半は何が起こっているのか分からないファンタジー要素と少しのホラーっぽさもあって、この世界観は一体何なんだろう?という感じだと思うのですが、だんだんめげずに立ち上がろうとする長谷部りののパワーに巻き込まれて、笑顔に心を奪われて……、映画館を出る頃には、歌って泣いて笑って、めっちゃ生きている!って感じがする長谷部りのに恋をしていると思います。

撮影を振り返ってみると、松居さんの現場には本当に「映画を作るのが好き!」という人たちが集まっていました。ファンタジー要素のある世界観が成立しているのは、衣装や美術にもとことんこだわった各部署の頑張りのお陰だなと思います。りのが恋に落ちるときに吹く風は、松居さん自らが起こしていました(笑)。

両思いになった人が目の前から消えるということは、この映画は記憶にまつわる映画でもあるんですよね。原作者の高木ユーナさんも言っていたのですが、記憶を描くことは自分が人生にどう向き合っていくのかを描くことにもなる、と。

りのには初恋の人がいて、うまくいかなかった恋愛については自分の都合のいいように解釈している。そのことを、(寛太さんが演じた)「甲野じゅん」が別人になって何度も現れるという表現で描いているんですよね。恋愛や過去に起こった出来事をいい方向に解釈して、書き換えていたことを人に指摘されるまで気づかないって、リアルでも全然あることだと思っています。

例えば同窓会で「あのとき、お前ああだったじゃん」「え、違うよ!」ってよくある話じゃないですか。 りのが無敵だった時代が過ぎ去って、後半にはみっともなくて情けない自分とも向き合いながら、「好き」を見つめていく。 この気持ちは自己満足かもしれないし、答えなんてないかもしれないけど、それでもいい。ボロボロになって戦っているりのの姿が美しいなと思いました。前半でブワーッて話を広げて最後に集約していく感じとか、恋愛映画なのにきれいなだけで終わらない感じにも、松居さんらしさが詰まっていると思います。

佐藤寛太にやってほしいと思ってもらえたんだから、当たり役ってことで

松居監督ともいくつも一緒に取材を受けさせてもらいました。だんだんお互いに次はこれを言おう、松居さんはこれを話すだろうな、って呼吸が合ってきたような気がします(笑)。松居監督や見上さんとプロモーションの時間を通して話したことで、この映画に対する思いにも変化がありました。

インタビュアーさんたちの中にも「松居監督の作品が大好きで、仕事でお先に観させていただいて嬉しかったです」っていう人が何人もいて。届く人にはすごく届く作品になっているんだろうなって実感したし、取材を受ける側としても、インタビュアーさんの熱量が感じられる時間でした。大きな映画館でたくさん上映している映画ではないからこそ、クチコミでどんどん広がってほしいなと思っています。

初日舞台挨拶にて。左端が松居大悟監督

簡単にジャンル分けができない映画だから、宣伝をするときにもすごく言葉を選びました。こういう映画ですよ、って説明しすぎるのは違うかなという気持ちもあったんですよね。友だちと観に行って、「あれってこういうことじゃない?」「いや、こういうことだと思う」って言い合ってほしいし、自分の感想を大事にしてほしい。そんな風に思えることも含めて、自分の中でもすごく大事な映画になりました。

原作と男女が逆転したこともあって、主役の見上さんはオーディションだったのに、俺はオーディションなしで起用してもらったんです。これってすごくありがたいことだなと思っています。映画『正欲』も舞台『鴨川ホルモー、ワンスモア』も自分以外の誰かがやったらどんな感じになるのか観てみたいような気もするけど、佐藤寛太にやってほしいと思ってもらえたんだから、当たり役ってことでいいんじゃないか、って。

当たり役ももらって、キャストやスタッフにも恵まれている今、自分としてはすごく充足感を感じています。好きな人たちと仕事をして、その人たちに認めてもらって、大事にしてもらっている。『正欲』の監督の岸(善幸)さんも『鴨川ホルモー、ワンスモア』を観に来てくれたんですよ! 普段、あまり舞台は観ないと聞いていたので嬉しかったし、「また現場で!」ってハグして別れました。松居さんにも「ここで寛太が欲しいな。あの作品でああいう芝居をしていたけど、ここで寛太を使ったらどうなるんだろう」って考えてもらえるような仕事をしていきたいと思っています。

山﨑努さんの『俳優のノート』に、役者が「下らない仕事をしないための対策は、生活水準を上げないこと」という一説があって。それに近いことかもしれないのですが、東京にずっと住まなくてもいいのかなという気持ちにもなっています。今のペースで仕事をして、20代のうちに二拠点生活に挑戦してみるのもありなんじゃないか、と。

映画は好きな監督たちの作品に出て、ドラマではキャリア的にもチャレンジになるような役柄に出会ってみたい。松居さんと仲がいい今泉力哉監督の作品にも呼んでほしいし、三宅唱監督や片山慎三監督、濱口竜介監督のような監督たちにまだ知らない自分を引き出してほしい。芝居を欲しがらないという意味ですごく面白かった長久允監督ともまたご一緒したいです。

最近は『アンメット ある脳外科医の日記』を観て、地上波でこういう勝負ができる作品に出てみたいなと思いました。監督によって演出や求められるものが違うから、その度に新しい言語を覚え、自分の幅が広がって世界の見方も変わってくる。役者って本当に楽しい仕事だなと思います。プライベートでも仕事でも自分がやりたいことがまだまだあるので、それぞれのバランスをいい感じで整えながら30代に向かっていけたらいいなと思っています。

取材・文:細谷美香
撮影:稲澤朝博
メイク(佐藤寛太):KOHEY(HAKU)
スタイリング(佐藤寛太):平松正啓(Y’s C)

プロフィール

佐藤寛太(劇団EXILE)

1996年、福岡県生まれ。2015年に劇団EXILEのメンバーとなり俳優活動を開始。主な出演作に『恋と嘘』『わたしに××しなさい!』『DTC-湯けむり純情篇-from HiGH&LOW』『家族のはなし』『走れ! T校バスケット部』『jam』『今日も嫌がらせ弁当』『いのちスケッチ』『花束みたいな恋をした』『軍艦少年』『Blind Mind』『正欲』(以上映画)、『探偵が早すぎる』『駐在刑事』『僕の初恋をキミに捧ぐ』『おやすみ王子』『ラッパーに噛まれたらラッパーになるドラマ』『ハゲしわしわときどき恋』『美食探偵 明智五郎』『ヒミツのアイちゃん』『シェフは名探偵』『TOKYO MER 走る緊急救命室』『JAM -the drama-』『あせとせっけん』『テッパチ!』『結婚するって、本当ですか』(以上TV)、「音楽劇『銀河鉄道の夜2020』」『怖い絵』『サンソン ―ルイ16世の首を刎ねた男―』(舞台)など。Web版『PEAKS』にて「旅する寛太」連載中。2024年4月には舞台『鴨川ホルモー、ワンスモア』に出演。5月10日(金)から公開中の映画『不死身ラヴァーズ』にも出演。

『不死身ラヴァーズ』
公開中

ニッポン放送開局70周年記念公演『鴨川ホルモー、ワンスモア』
2024年9月 Blu-ray&DVD発売予定
https://event.1242.com/events/kh_oncemore/

本連載の前身、佐藤大樹さん&佐藤寛太さんの連載はコチラ!