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峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

「お金」が「真の豊かさ」を満たしてくれるわけではない

毎週連載

第277回

前回まで「今年流行る風俗」を自信満々で喋り倒しましたけど、でも、これはマジの話で、今の日本はもう文化とか奥ゆかしさとかまで「お金」に飲み込まれちゃって、人間にとっての「真の豊かさ」みたいなものがなくなっているように思うんだ。だったら、はっきり「男女ともに性欲がある」「それをあからさまに満たす」といった店なりサービスがあって当然だろう、というのが僕の持論なわけさ。まぁ、これは冗談にしてもさ、マジでここまで「お金」のことだけで、人の気持ちとか機微みたいなものをいっさい無視する世の中って、ちょっと異常すぎやしないかと思う。

昔はさ、どれだけのお金持ちの人でも、むしろそれ自体にリスクがあることを自覚していたり、「お金にガツガツしている自分がはしたない」という後ろめたさがあったりして、あからさまに「俺はこれだけのお金を持っている」なんて言う人はそういなかった。そして、仮にそういうぶっ飛んだナリ金みたいな人が出てきたときは、社会的な批判を浴びたり、国もすぐに押さえ込んだりしていた。

その善悪は僕にはわからないけれど、個人的に思う日本人の美徳って、そういう「お金の話」を明からさまにしないところにあったんじゃないかと思うわけ。「俺はこれだけお金を持っているんだぞ」っていうことが「下品である」みたいな感情を、みんな潜在的に持っていたと思う。

でもさ、今はこういう「お金」の話をみんなするようになり、むしろそれだけが、善悪のバロメーターになっていたりもする。「俺は富裕層だから偉い」「私は中級層だからまぁまぁ」「僕は低所得だから人間としての身分が低いです」みたいな。さらには、「偉くなるために、お金をいっぱい稼ぐことだけが良い」みたいな空気になっていて、むしろそれが今の社会における「夢」みたいになっちゃっている。

でもさ、僕の感覚では、なんだかおかしいんだよ、今の世の中。「品性」みたいなものはとうに意味をなさなくなって、人をはかる基準までもが全て「お金」に集約されているわけ。もしかしたら「この人と付き合いたい」「この人が好きだ」「この人と結婚したい」っていう感情も、昔以上に「お金」にかかわることが避けて通れない条件になっているんだろうね。

これってさ、本質的な意味での「真の豊かさ」ってことではないと僕は思う。負け惜しみと受け取られてもおおいに結構だけど、僕から見るとむしろ「貧しく」見えてしまうんだよ。

確かにさ、僕もお金はほしいよ。お金がなければレコードも買えないし、映画も観られないし、本も読めないし、ご飯も食べられないから。あるいは何か病気になったときに、お金がないことで命を落とす可能性が高まることもあるからね。

でもさ、だからと言ってお金を得ることが生きる上での最終目的になるのは違うと思う。お金に振り回される生き方って、なんかこうバカみたいに思えてならないんだよ。単純な話、僕が「この人面白いな」「この人カッコ良いな」「この人の考え、他とは違って良いな」と思う人って、お金のあるなしとはまったく関係ないからね。あるいは僕が今付き合っている友達も全員、お金とは関係ないところで話ができている。

そして、銀杏の音楽を気にいってくれて、ライブに来てくれているお客さんもそうだよね。絶対そうだと思うけど、「お金持ちになるために、銀杏を聴きたい」とか「銀杏を聴くとお金持ちになれそうな気がする」っていう理由で銀杏を聴いているわけではなく、どこか僕の歌や気持ちに、リンクするところがあると思ってくれて、耳にしてくれていると思うんだ。

そこは、いわゆる「お金」ばかりを優先させる人との関係とまるで違うところ。世の中の人はみんなCEOだかCOOだかになりたいのかもしれないけど、そんなものになってもしょうがないよね。だったら何者にもならないほうが僕は良いや。そっちのほうが自分だけの楽しさとか、友達との時間をずっと大切に思えるからね。

お金ありきでの付き合いって、本当に楽しいのかなって思う

構成・文:松田義人(deco)

プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。