峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら
日本が世界に誇れるひとつは「寛容な大人」な対応だったはずですが……
毎週連載
第287回
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先週話した「ムーンショット計画」みたいなことって、諸外国ではどうなんだろうね。似たような取り組みとか計画ってあるのかな。不勉強でそれは僕もよくわかっていないけど、でもさ、僕がつくづく思うのは、日本はこれ以上欧米とかのスタンダードに合わせなくて良いんじゃないかってこと。
そもそも日本ってさ、世界中のスタンダードとは違うところでの魅力があったわけでしょう。職人技術もそうだし、勤勉さもそうだし。あと情緒的な面で言っても日本はとても豊かで、特に他者に対する「和」を重んじるところ、「大人なところ」が美徳だったような気がする。
誰かと誰かが喧嘩したり、モメたりするとさ、諸外国ではすぐに裁判して当事者が争い、法的な着地点を見つけようとするじゃん。日本でももちろん裁判で争うことはあるんだけど、一方で日本には「調停」っていう独自の制度がある。
これは「なんでもかんでも裁判にするんじゃなくて、その前に話し合いをして、なんとか着地点を見出しましょう」っていうもの。プレ裁判みたいな捉え方をされることもあるけど、そうではないらしいよ。「相手と争う」って目的ではなくてさ、「まずは裁判の前に第三者を交えて話し合いをしましょうよ」というものらしい。僕は経験がないからわからないけどさ、しかも、その調停にかかる費用はたったの千円くらいなんだって。言い換えれば「どんな人にもわかりあうためのサポートをします」っていうことを日本がやっているってことなわけ。
こういうある意味で「大人な制度」を政府が設けていることはすごく良いと思う。実際、調停制度がある国って先進国では日本くらいらしくて、こういう「大人」なところは日本がもっと世界に評価されて良いところじゃないかと思う。
またさ、当たり前の話だけど、人間って自分も含めて完璧な人なんていないよね。ときに人の道を間違えてしまったり、犯罪を犯してしまったり、社会に背を向けるようなことを犯してしまうこともある。でもさ、それを「お前バカだったな。与えられた罪をしっかりつぐなって、そして、もう一度しっかりやり直せよ」って叱咤しながら激励するのが大人だと思うわけ。そして、こういう大人な感覚は日本人の多くが持っていたものだと思う。
でもさ、今は覚醒剤でも交通事故でも不倫でもナンでも良いけど、なんか悪いことをした人に「はいお前ダメ。人の目に触れないように生き続けてください」みたいなのが今じゃん。1回でも間違ったら「人生終了です」ってなるのが今なんだ。しかも、それを裁いているのが法律でもナンでもなくて一般人だったりする。恐ろしい世の中だよ、本当に。
またさ、そういう「人生終了です」のきっかけとなるXとかの活字って、言葉に発せられるよりもかなり尖って感じるものだよ。仮に面と向かって話し合えば、着地点を見出すことができるようなことでも、活字にすることでより強烈に見えたり感じられることはおおいにある。そういう活字の特性を考慮しないままXでの炎上が「失敗しちゃった人」を裁いているように感じられるのが素直にイヤなんだ、僕は。
だからさ、グローバリゼーションを取り入れる行動はそれはそれでやりつつも、一方で本来の日本独自の「情緒豊かな感覚」とか「『和』を重んじる寛容さ」とかに立ち返ることも同時にやったほうが良いと思う。
お互いがお互いの違いを認め合うことで、結果的に平和とか友情に繋がるわけで、ひいてはこれこそがグローバル社会の中でも日本が誇れるものになると思うからね。
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構成・文:松田義人(deco)
プロフィール
峯田 和伸
1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。