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峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

25年間、江口くんにかけられたハチ公の呪い・その①

毎週連載

第288回

実はずっと「封印」されてきた江口くん(マネージャー)と忠犬ハチ公にまつわる話があってさ。25年くらいずっと公にできない話があるんです。

今から25年くらい前、まだ僕らがGOING STEADYをやっていた頃のことなんだけど、当時江口くんがフイルム式のカメラを買ったの。そのカメラでさ、江口くんは街中で気になったものを写真に収めていたんだって。

そして、渋谷界隈で撮影したフイルムを全て使い切り、写真屋さんに持っていき現像してもらったんだけど、その写真の中にたまたま渋谷のハチ公像の前で撮影したものがあったの。記念像だから、撮りたくなる気持ちはよくわかる。でもさ、そのハチ公像の前に、信じられない「意外な存在」が写り込んじゃってたんだ。

江口くんが撮影したハチ公像の写真

ちょっとわかりにくいけど、本来のハチ公像の下のほうにボヤけた子犬が映り込んでるように見える。そして、この子犬、誰がどう見ても秋田犬。後日みんなで「これはハチ公の亡霊が写り込んでいるんじゃないか」「ハチ公の心霊写真だ」と大騒ぎになったの

そもそもさ、ハチ公って「晩年に飼い主を待ち続けた」ってことで注目されるようになった秋田犬じゃん。だから子犬の頃の写真って残っていないらしいの。その上でここに写り込んでしまった秋田犬の子犬……これはやっぱりハチ公の亡霊でしかないだろう、というのが僕らの解釈だった。

当時、この話が連日持ちきりでさ。「すごいね、江口くん。心霊写真を撮る才能があるなんて」と僕らはすごく盛り上がった。ライブの打ち上げなんかで対バンの人にこの写真を見せたりして、江口くんは一躍人気者になり、江口くん自身もまんざらでもなさそうでさ。ことあるごとにこの「ハチ公の心霊写真」を他人に見せびらかしていたの。

でもさ、そんなことを繰り返して打ち上げで一番盛り上がったある晩のこと。江口くんが自宅アパートに帰ったところ、リビングはもちろん洋服タンスの中も全部水浸しになっていたんだって。しかも、まったく水気がない場所で、どこかから水が漏れた様子もなければ、雨漏りもしていないと。不思議でしょうがなく思う江口くんだったけど、そこでふと我に帰ってさ。

「これはハチ公のせいじゃないか」

「ハチ公の亡霊が、あの心霊写真を見せびらかしていることを怒って呪いをかけているんじゃないか」

……そんなふうに江口くんは考えるようになり、心配になって、あるツテを辿って霊媒師を訪ねることにしたわけ。 「このハチ公の心霊写真と、謎の水浸しに何か関係がありますかね」と霊媒師に聞いたらしいけど、その答えはまさにズバリで、案の定こんな話をされたんだって。

「このハチ公の写真は特別なもの。扱い方次第ではあなたの御守にもなるし、逆にぞんざいに扱ったら変なことになる。だからこの写真の話は吹聴せずに、そっと大事に閉まっておいてください。そのことがハチ公も望んでいることだし、何よりもの供養になる」

……江口くんから聞いた話だから細部は間違っているかもしれないけど、霊媒師はだいたいこんな感じの話をしたらしい。

それ以来、江口くんの中では、この「ハチ公の心霊写真」は門外不出となり、噂を聞いた別の誰かが江口くんに話を振っても、強く口を閉ざすようになっていったの。(次回へ続く)

江口くんと僕らの間で「ハチ公の心霊写真」の話はしばらく封印されることになりました

構成・文:松田義人(deco)

プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。