峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

【なんかなんか人生相談(7)】地元にライブハウスを作って店長になりたい(33歳・男性)

毎週連載

第314回

そして、また「なんかなんか人生相談」です。前回は16歳でバンドをやっている女の子の相談だったけど、今週もまた音楽絡み。33歳男性からのお悩みです。

【お悩み】
峯田さんこんちは。僕もあんまり悩みのないタイプの社会人16年目のサラリーマンの音楽狂です。いつか私の住んでいる田舎にライブハウスを作って店長になるのが夢です。ですが、16年勤めた会社を辞める決断ができず夢に踏み出せずにいます。大好きな音楽に人生を捧げたいです。私はどうすればよいでしょうか。アドバイスください。(CHAOS SSK・33歳・男性)

(※お悩みの文面は一部意訳しています)

【カウンセラー峯田のお答え】
CHAOS SSKさんがどこに住んでいる人なのかはわからないけど、「田舎」ということだから地方ってことなんだろうね。

日本の田舎町にポツンと1軒のライブハウスがあって、そこで良い音楽が毎晩かかっている……なんてすごく素敵なことだと思う。僕が暮らした山形にはそんなお店がなくて、レコードを買うにしてもだいたい仙台までバスに乗って行っていたからね。だから、その地元の人たち、特に若くて音楽が好きな子たちを牽引するようなライブハウスにしてくれるのなら、マジですごく良いなと思います。

でもさ、CHAOS SSKさんのライブハウスの夢は、会社を辞めないと実現できないものなのかなとも思います。そして、必ず「ライブハウス」というハコがないといけないものなのかとも思うんです。

まずさ、本当にライブハウスを作りたいと思った場合、相当な資金とブッキングするバンドのツテが必要じゃん。まず、このふたつがない人が、いきなりライブハウスを始めるのは難しいと思うの。それだったらさ、会社を辞めずにコツコツ資金を貯めて、そして土日とか月イチでどこかのライブハウスを借りたり、地元の公民館を安く借りたりして、まずはそこから自分企画のイベントをやってみたら良いと思う。

そこでもお金が伴うから、その管理は大変だし、責任も伴うとは思う。でも、本当にライブハウスを自分がオーナーとして始めるのなら、これよりさらに大変だと思うから「訓練」として、まずは自分が好きなバンドばかりを集めた企画をやってみると良いと思います。

またさ、自分ひとりの熱意だけで何かを始めたとき、不思議と自然に音楽関係の友達ができたり、応援者が現れるものなんだ。そうやって音楽好きの輪を広げて、まずそのコミュニティを構築してから結果的にライブハウスとして確立していくことは自然で、お金持ちがビジネスの一環として立ち上げたホールとかよりもずっと良いハコになると思います。大きなライブハウスに比べれば、いきなりメチャクチャ儲かることはないかもしれないけど、でも事前に人脈を作っておけば、収益の面でも安定はすると思う。

いきなり「店を作る!」と高いところを目指して、しかも会社を辞めてそれ一発に賭けるっていうのはあまりにリスクが高すぎるし、現実的に見てまずうまくいかないでしょう。

それだったら今の生活のまま、できることから少しずつ挑戦するほうが良いと思う。プロっぽい感じはむしろないほうが良くて、不器用だったりカッコ悪くても、かえってそれが人の心を打つことはあると思う。

僕の地元のお坊さん・登坂くんは自分の家のお寺を使って毎年「寺フェス」というイベントをやっているけど、最初は自分ひとりで始めてさ、「面白いイベントだ」と賛同したバンドが日本各地からこの日だけ集まってくるようになったの。

お寺で音楽を鳴らすわけだから大掛かりなフェスではないけど、登坂くんの熱意に突き動かされたバンドやアーティストが、本当にいつも良い演奏をして良い空気を生み出す。

いろんなスポンサーをバックにつけた大掛かりのフェスも、有名なバンドをいっぱい観れたりして楽しいけどさ、僕個人的には登坂くんみたいな、前代未聞ながらも熱意を持って取り組むフェスも好き。ハコの大きさでは計れない強い熱があるからね。

CHAOS SSKさんが本当にライブハウスを目指すのなら、まずこの感じを参考にして、できることからやってみたらどうでしょうか? なんか「ライブハウス」「店長」っていう型みたいなものにあらかじめ当てはめるんじゃなくて、本質の「どんな音楽を自分は発信したいのか」「音楽の発信を通して何をみんなに伝えたいのか」をもう少し考えてみると良いと思います。そうすれば必ずしもライブハウスじゃなくても良い、会社を辞めなくても良いってことになりそうにも思います。

多くの人にCHAOS SSKさんが思う「最高の音楽」を届けてくださいね!

構成・文:松田義人(deco)

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プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。