峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら
気づけば、銀杏BOYZ のファーストアルバムから20年が経過していた
毎週連載
第324回

最近、他人から言われて気づいたことなんだけど、銀杏BOYZがファースト・アルバムの2枚を出し「世界ツアー2005」という初の全国ツアーをやってから、今年でちょうど20年が経過していました。
「ファーストを発売してから今年で20周年ですね。何かやらないんですか?」みたいに言われて「あ、そう言えばそうだな」と思ったけど、そもそも僕が「周年」みたいなものに全然興味がないこと、それと僕自身の中で「全然終わっていない」ということもあって、早いような長いような、でも、別に改めて特別な感慨を持つこともない変な感じを抱きました。
そりゃさ、20年という時間が過ぎたわけだから、銀杏BOYZのファースト・アルバムの2枚を当時聴いてくれた人にとっては、様々な思いがあると思う。あの2枚のアルバムを聴いて、ライブにしょっちゅう観に来てくれていた人は、その頃の音を聴いて当時の情景を思い出すかもしれないし、または「いや、あの頃はあの頃。今は別に楽しいものがあるし、今はなんとも思わないかな」みたいな感じになっている人もいるかもしれない。これこそが音楽が持つ魔力みたいなものであり、そして切ないところでもあるんだけど、でもさ、その音楽を発信している僕の中ではまだまだ全然終わっていないし、決着がついていないんですよ。だから「20年」と言われても「そっか」みたいにしか思えないのが正直なところなんだ、申し訳ないんだけど……。
メジャーのバンドだったらさ、「年に1枚のアルバムを出す」「最低でも2年に1枚のアルバムを出す」といった契約をするんだろうけど、GOING STEADYや銀杏BOYZでは、僕はそういう契約はしないで、「本当に自分が納得できる作品ができるまでは出さない」っていう条件でレーベルと契約をしたの。
そういう選択をした以上、やっぱりアルバムを作る上でいっさいの妥協をしたくなくて、常に問題作をやり続けたくて、それがまだ全然終わっていないんだよね。だから、ファースト・アルバムから20年と言っても、なんの感慨もなくて、実は「第1期・銀杏BOYZ」というものが20年間ずっと続いているっていう状態なんだ。
仮にさ、「自分が納得できる問題作ができて、もう全部出し尽くした」というところまで言ったら、これこそが「第1期・銀杏BOYZ」が終わりとなり、いよいよ「第2期・銀杏BOYZ」の幕開けになると思う。そのときは、もしかしたら「年に1枚のアルバムを出す」「最低でも2年に1枚のアルバムを出す」という感じに変わるかもしれないけどね。だって、そうやって定期的にアルバムを出すことだって、別に悪いことではなくて、むしろ僕が20年やり続けていることとは別の意味で、すごく大変なことだからね。
もちろんさ、この20年で確かに時代は変わったと思うんです。昔はSNSなんて今ほど盛んじゃなかったし、みんなガラケーだったし、YouTubeやTiKToKなんてものもなかった。ましてや、東日本大震災やコロナ禍みたいなことも想定できなかったし、この時代に戦争がまた起こるなんてことも想像できなかった。
そういう時代ごとに違う社会への問題意識とか僕なりの意見というのは、僕にとって音楽でしか表現できないもので、やはり今のところの僕にとっては、一番シリアスに向き合うべきなのは音楽だけなんだ。
そんな理由もあって、こういう連載でも結果的にどうでも良いエロ話ばかりになっちゃうんだけど(笑)、でも音楽だけはシリアスに表現して問題作を出し続けたいというのは、本当にマジの話。
だから、申し訳ないけど、20周年ってことで感慨を得たり、みんなお祝いしたりとかの気分は全くないかな。むしろ、まだまだあのファーストアルバムの2枚や「世界ツアー2005」の延長線上を続けているのが今の僕だからね。あの頃の僕は27歳で、今の僕は47歳になっているけど、この年齢差さえも自分では全然気づいてないくらい(笑)。まだまだ続くんです、「第1期・銀杏BOYZ」は。

構成・文:松田義人(deco)
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プロフィール
峯田 和伸
1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。