峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら
AVとネットでのストリーミングエロ動画個人販売の違い
毎週連載
第325回

僕はほぼ毎日、ネットのエロ動画投稿サイトとかXのエロポストをチェックしているんだけどさ、「うっわエロい!」と思ってもよくよく辿っていくと、ストリーミングで買わせるエロ動画の個人販売サイトに誘導されたりして、これがもうメチャクチャ萎えるんだ。
「なんだよ。こんなにエロくて最高だと思ったのに、結局は商売で演技だったのか」とか思っちゃって。こんなこともあり、僕は一度も誘導先のエロ動画の個人販売サイトで動画を購入したことがないの。もうサンプル動画だけで十分だもん、そんな商売エロなんだとしたら。
でもさ、この話と矛盾するようだけど、「エロの値段」って一昔前と今とでは、随分と下がったよね。今でも僕の部屋の段ボールの中には「どうしても捨てられないエロDVD」があるけど、AV全盛期なんて、一回専門店に行っただけで普通に3万円とか4万円とかエロDVDを買ってたよ。でもさ、今ではほとんどタダで抜けるエロ動画を観ることができるし、仮に個人販売サイトで買ったとしてもせいぜい2〜3千円。しかも、サブスクだから複数の動画を一定期間、見放題とかなわけでしょう。やっぱり世の男どもが「エロにかけるお金」ってどんどん下がっていて、かつてのAV全盛期のメーカーはほとんど商売上がったりだと思う。
でもさ、ここで僕がもうひとつ言いたいこともあって。かつてのAVはエロのジャンルを本気で開拓しようと挑戦し続け、そして、観る側が気づきもしなかった「新しいエロ」をリードした感じがあったと思う。でもさ、今の個人販売サイトの多くはいくら細分化されていると言っても、その挑戦度はまだまだヌルいとも思うわけ。
相変わらず決まったセリフは「そんなにチ○ポがほしいんだ?」「チ○ポ美味しい?」とかさ、そんなもん、食べ物じゃないんだから美味しいわけないじゃん(苦笑)。なのに、いまだにそんな通りいっぺんのなんのヒネリもないことをやっている。
言うまでもなく、細分化、多様化と言っても発信者側に「自分たちがエロ文化をリードする」という意識はなくて、結局のところ「自分たちが儲かればそれで良い」っていう超つまんない思考なんじゃないかと思うわけ。
またさ、肝心の女の子たちも中途半端にカッコつけててさ。裸になっているのにまだ脱ぎ切っていないというか、まるでオシャレでもしているかのような演技をしている。いくら「アンアン」とか喘いでいても、なんか作ってるんだよね、表情を。「アンアン言ってるけど、こんな風に動画に映る私かわいいべ?」みたいな気持ちが透けて見えるわけ。こうなると、もう勃たないよね。
そうじゃなくてさ、完全に「自分」という殻も脱ぎ捨ててぶっ壊れてくれなくちゃ、僕の中ではエロ動画として全然成立しないんだよ。そしてさ、かつてのAVメーカーの多くはそんなこと百も承知の上で、必死に女優の殻を剥ぎ取るような努力をしていたと思うんだ。
こういう目に見えない制作側の涙ぐましい努力や挑戦を前に、「いやいやAVなんて古いっしょ。だって自分でエロ動画を撮って販売すればすぐお金になるもん」みたいにエロをナメてかかっている今の個人販売サイトには、僕は本当に懐疑的だね。そんなに素人が簡単にできるもんじゃないと思うからね、エロって。
ちなみにさ、さっき言った僕の「どうしても捨てられないエロDVD」は、まず今の個人販売サイトなんかよりずっとエロいよ。
画質、音の感じ、女優さんのお化粧が今とは違ってなんか古い感じ……これら全部含めて僕にとってすごく大切なものです。
だってさ、今改めて「どうしても捨てられないエロDVD」を見ると、当時の記憶が蘇ってくるもん。エロ動画って、実はまるで音楽のように大切なものなんですよ。いやいや、これはマジの話です!

構成・文:松田義人(deco)
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プロフィール
峯田 和伸
1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。