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峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

【なんかなんか人生相談(16)】音楽を続けたいが、将来が不安です。(16歳・男性)

毎週連載

第335回

今週もまた「なんかなんか人生相談」です。今回は16歳でバンドをやっているという男の子からのもの。なんでも「音楽をずっと続けたいけど、将来が不安」「いつか音楽から離れるときが来るんじゃないか」とお悩みの様子です。さっそく読んでいきましょう。

【お悩み】

自分は大阪に住む16歳です。音楽がとっても好きです。

高校の軽音に入りバンドを組み、ギターボーカルをしています。高校を卒業しても、その先の将来もずっと音楽を続けたいと思っています。

でも、そんなことを思う一方で、将来がとても不安です。音楽だけで生きていくなんて「ものすごく難しいことだ」とも思うからです。いつかは音楽から離れるときが来るのでしょうか。

峯田さん、僕はどうしたら良いのかアドバイスをいただきたいです。
(T・16歳・男)

(※お悩みの文面は一部意訳しています)

【カウンセラー峯田のお答え】

Tくんは16歳でしょ。まだ若いのに、そんなことを考えているのがまずすごいと思った。

僕もTくんくらいの頃にすでに音楽が人一倍好きでメチャクチャ聴いていたけど、「音楽で食っていきたい」なんて考えることはなかったし、何よりも「家業の電気屋を継ぐんだ」と思っていて、今みたいな生活をするなんて思ってもみなかったからね。

だから、今の僕の「音楽だけで食っていける」生活っていうのはあくまでも結果的なことなんだ。しかも、もしかしたら今の生活だって永遠ではないとも思うことがある。

「音楽で食っていく」ってことは一般の社会人とは違う、社会のレールから外れた道を歩むってことでもあるわけ。そんな人生を選んでしまったわけだから「将来を気にしてもしょうがない」「音楽で食っていけなくなったら、それはそれでしょうがない」とは思っている。だってさ、僕にとって音楽というすごく好きなものに没頭しながら、将来が保証された安定した社会生活を求めるなんて厚かましいと思うからね。

もう少し具体的に、僕が初めて「音楽でやっていきたいな」と思ったときの話をしますね。大学生の頃、僕は千葉のとある街のアパートで暮らしていたの。そんな中、山形の高校時代の同級生の村井くん(元メンバー)から、アパートの家電に夜中に電話がかかってきたんだ。聞けば「千葉駅まで来たんだけど、終電がなくなったから移動できなくなった。悪いけど、峯田のアパートに泊めてもらえないか。歩いて行くから」って言うわけ。

千葉駅から僕のアパートまで徒歩なら2〜3時間はかかるんだけど、村井くんは「それでも行く」っていうわけ。

「しょうがないな」と思って僕は僕でスクーターで村井くんが歩いてくる方向に向かって迎えに行ったんだ。ようやく国道沿いでこっちに向かって歩いてくる村井くんと出会えてふたり乗りして僕のアパートに帰ったの。

ちょうどその頃、僕は趣味で曲を作り始めてた頃だった。ただ、誰にも聴かせたことがなかったし、その勇気もなかった。自分の初めての曲に対して、聴いた人の反応が鈍かったら「傷ついてしまう」という怖さがあったからね。

でもさ、この晩はどういうわけか村井くんに、曲を聴いてもらいたくなって。初めて村井くんに「実は俺、こんな曲を作ってるんだ」って聴いてもらうことにしたの。内心ビクビクだし、好きな女の子に告白するより、あるいは今数千人の前で歌うより、何倍も緊張したけど、でも同時に「村井くんなら一番に聴いてほしいな」っていう思いもあった。

その初めて作った曲を村井くんに聴かせたらさ、村井くんはしばし黙って「……最高。この曲ヤバい、素晴らしすぎる」って言ってくれたんだ。このときはマジでうれしかったし、同時に、この晩に初めて「音楽でやっていきたいな」ともおぼろげに思った。「俺の曲、そんなに悪くないんだな」って思って。

でもさ、一方の村井くんは、結局一睡もせずに朝7時に、自分の家に帰って行っちゃった。「ワケわかんない」と思ったけど、今思えば村井くんの中で何か思うことがあったんじゃないかとも思う。「まさか峯田がこんなことをやっているなんて」「ヤベェ。俺も何かやらないとマズい」と思ったのかもしれないけど、後にその村井くんと一緒にバンドをやるようになり、それでお客さんが増えて、今に至るっていう流れでした。

こんな経験から僕がTくんに言えることは、実は簡単なんだ。「音楽が好き。ずっと音楽をやっていきたい」と思うのなら、その「好きなこと」をただただやり続ければ良い。やってみた結果「ダメだ。全然売れない。食えない」っていうんだったら、別の仕事をすれば良い。それでも「でもやっぱり音楽が好き」っていうのであれば仕事が休みの日、みんなが寝ている時間を割いて音楽を創り続ければ良いと思うし、聴き続ければ良いんじゃないかな。

「いつか音楽から離れるときが来るのでしょうか」っていう悩みもあるみたいだけど、それはわからない。最初は大好きだったものから離れるか・離れないかもまた、人それぞれだからね。

少なくとも「音楽をやりながら、収入も得たい」ということを事前に考えないほうが良いとは思う。「売れるかどうか」ということは自分で決められることではなく、聴く人が判断することだからね。それが怖いようなら、社会人として生活をしながら、空いた時間で音楽を楽しむ、没頭するっていうのも僕は全然アリだと思うし、そんな中で生まれた音楽でも面白いものが絶対にあると思うからね。

Tくんはまだまだ若いんだから、そんな若年寄りみたいなことを考えずに、まずは今好きな音楽に没頭してみてはどうでしょう。その音楽を聴いた人たちが、Tくんの将来を決めてくれるような気もするし、まずは音楽だけに没頭すると良いんじゃないかなと思います。

この連載の取材中。音楽の話になると止まらなくなります

構成・文:松田義人(deco)

峯田和伸(銀杏BOYZ)の
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峯田和伸(銀杏BOYZ)の「どうたらこうたら」では皆さまからのお悩み、抱えている問題、誰にも言えない性癖などを大募集します。その名も「なんかなんか人生相談」。皆さまからのお悩みに対し、峯田先生が不定期で悩みを解決してくれます。ぜひ送ってくださいね!

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プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。