峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら
【なんかなんか人生相談(24)】ズル賢い大人になることが憂鬱でたまりません(15歳・男性)
毎週連載
第343回

何週もに渡って続いた人生相談シリーズも、いったんは今週でシメます。もちろん、今後も人生相談をちょこちょこやっていく予定ですので、またドシドシお悩みをお寄せくださいね。 さて、今週は15歳の男の子からのもの。先週は56歳の方で、今週は15歳。40歳以上の年の差のある人たちがこの連載を読んでくれていることがまずうれしいです。それではさっそくその悩みを見ていきましょう。
【お悩み】
僕は学生で、人生経験が浅い子供です。
子供なんですが、周りの大人の言うことに違和感を覚えます。「困ってることがあったらすぐ助けるよ」と言うのに、いざ助けを求めると、理屈を立てて何もしてくれないことばかりです。
正直僕はそんなの情けない人たちを、「大人」と言っていいとは思えないです。
大人になると、ズル賢く逃げることが出来るようになるのなら、僕は将来、大人としてこの世間で生きることが憂鬱に思えます。
大人とは一体なんなのですか?
(岡ブック・15歳・男)
(※お悩みの文面は一部意訳しています)
【カウンセラー峯田のお答え】
「大人とは一体なんなのですか?」ってことだけど、僕は今47歳なので、世の中的に見れば十分大人です。
でもさ、この年になって改めて思うことは年齢が大人にしてくれるわけではなくて、だいたいみんな「年相応の大人」を演じているだけだっていうことなんだ。
おじいちゃんにしても、おばあちゃんにしても、どれだけ立派な政治家にしても、大企業の社長にしても、みんな「自分のような年齢」「自分のような立場」のイメージをあらかじめ持っていてそれに合わせて装っているだけで、その中身、気持ち、性格とかって子供の頃からそう変わらないように思います。
僕のおじいちゃんも、見た目的には普通のおじいちゃんだけど、その素顔はもっと若くてむしろ小学生くらいの感じの人だった。もちろんさ、おじいちゃんにも年相応の社会性とか優しさはあるんだけど、僕の子供の頃は「おじいちゃんと孫」という関係というより「仲の良い友達」みたいな感じだった。一緒にテレビでビートたけしさんや志村けんさんのお笑いを見てゲラゲラ笑ったり、一緒にビートたけしさんの映画まで観に行ったもんね。過激なたけし映画でもおじいちゃんは一緒に楽しんで観てくれたんだ。下手したら僕は学校の男友達よりも、おじいちゃんを友達みたいに思っていたかもしれない。
僕は小さい頃にそんな経験があるから、あんまり「大人」っていう存在を信じていないし、逆に、僕自身も十分オッサンの年齢だけど、あんまり「俺はオッサンだからな」みたいにも思わない。
どんな子供でも、あるいは逆に年上で立派な人に対しても、普通に遠慮なく平等な感じで接することができるの。むしろさ、みんなが「大人」の演技をしていて「大人」風の付き合いをしているわけだから、逆に年とか関係なく、誰でも同じように接することが、一番礼儀正しいんじゃないかとも思うしね。
ここで岡ブックさんに助言なんだけどさ、いったんは「大人なんていない」と考えてみてはどうかな。そうすると、自ずと「その人」が自分と気が合うか・合わないかっていう判断になってくるから、本当に仲良くなれる人、友達になれる人は年齢関係なく見つかるかもしれない。
またさ、僕自身、岡ブックさんくらいの年の頃に「大人ふざけんな」「社会ふざけんな」っていう気持ちがまったくなかったわけではないけど、でも、そこで短絡的に大人を批判するんじゃなくて、だからこそ「己を見るべきだ」とは思っていた。
「大人のせいで自分がこうなっている」「社会のせいで自分がうまくいかない」っていうのは短絡的すぎるし、そこで文句を言い放ったり、あるいはバイクを盗んで走り出したりしても、いわゆる「大人」「社会」に対してなんの攻撃にもならないからね。むしろ、それこそが「大人」や「社会」の思うツボで、結果的に補導されたり逮捕されたりして、「ダメな奴」「ハズれている奴」みたいなことで片付けられちゃうからね。
だから、もし本当に岡ブックさんが「大人」や「社会」が許せないのであれば、まず自分と向き合い、自分に何ができるか、どんなことで自立して「大人」や「社会」と対峙すべきなのかを考えて行動すると良いかもしれない。間違っても法に触れるようなことはダメだけど、でも岡ブックさんの人生だからね。岡ブックさんの人生は、岡ブックさん自身が切り開いていくべきことだとも思います。
さっき言った「みんなが大人風の演技をしている」というのは、僕は今でも本当にそう思っているんだけどさ、でもそれは社会の風潮がそうさせているところもあるわけ。
だとしたら、「大人風の演技をしている」人たちも被害者だっていう考え方もできるわけだけど、そういう被害を受けないために、あるいは社会の風潮に巻き込まれないために自分はどうあるべきかってことを岡ブックさんなりに考えてみると、すごい面白い「大人」になる気がします。
そして、実はそうやって「本質的な生き方」とか「本質的な人生」を考える岡ブックさんみたいな人が育つことは、いわゆる「社会」や「大人」が一番困ることかもしれない。言い換えれば、それ自体が「社会」や「大人」への遠回しな皮肉となり、対抗措置にもなるんじゃないかなーと僕は思います。

構成・文:松田義人(deco)
峯田和伸(銀杏BOYZ)の
「なんかなんか人生相談」お悩み大募集!
峯田和伸(銀杏BOYZ)の「どうたらこうたら」では皆さまからのお悩み、抱えている問題、誰にも言えない性癖などを大募集します。その名も「なんかなんか人生相談」。皆さまからのお悩みに対し、峯田先生が不定期で悩みを解決してくれます。ぜひ送ってくださいね!
相談はこちらから
プロフィール
峯田 和伸
1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。