峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

最近よく聞く「おじ」オズボーン問題

毎週連載

第345回

僕は今、真剣に悩んでいることがあります。それは僕自身が「おじ」なのか、それとも「オッサン」とか「ジジー」なのかということです。

最近の若い子っておじさんのことを「おじ」とか「イケおじ」とかって呼ぶでしょう。もちろん、悪い意味で言っているわけではなくて、むしろ好意的に「おじ」って呼んでいるわけだけど、これに僕はどうも違和感があるんです。

なんていうか、今の時代は何でもかんでも「当たり障りのない言葉」「差別にはならないような言葉」を作って一般化するでしょう。

昔は「オッサン」「おじさん」「ジジー」みたいな揶揄にも聞こえる言い方がなかったのに、「でも、それだと批判的に捉えられる」ってことで、「おじ」っていう言葉が出始めた。「おじ」って言っておけば、なんか悪く聞こえないっていう風潮が一般化されるようになったっていうわけ。

「頂き女子」だってそうだよ。頂き女子りりちゃんっていう女の子は、男を手玉に取って1億5千万円もの莫大なお金を騙し取った子で、実刑になるほどの重大な犯罪だったわけだけど、なんか「頂き女子」っていう「いい感じ」の呼び名をつけることで、その犯罪の重みを軽く聞こえさせてた。でも、中身はとんでもない大事件でしょう。マジで恐ろしいよ、軽い呼び方にして印象が軽くさせるところが。

あとはキャラクター化っていうのもあると思う。みんなハイテクだのスマホだのになんでもかんでも頼っちゃってるから自分自身で考える力が退化して、たとえば人に対してもキャラクター化しないと、その人に興味を持てないし、その人に気持ちを寄せることができなくなっているような気がする。

この連載では何度も言っているように僕はハイテク、スマホ、AI、チャットGPTだのを絶対に否定しているわけではないんだ。むしろこういった合理的なツールやプラットフォームは、どんどん活用すべきだという考えです。

でもさ、なんか今はそのバランスがおかしなことになっていて、使うほうの人間がこれらの合理性に甘えるばかりで、人間がどんどん退化しちゃってる。これだと良くないし、マジで長い目で見れば危ないように思うんです。

話が飛んじゃったけど、例の「おじ」問題だけどさ、確かに僕は年齢としては47歳だし、若い人から見れば十分「おじ」なんだよね。

でもさ、これは僕の周辺にいる同世代の友達とか、あるいはもっと年上の友達とかに共通することだけど、いわゆる「おじさん」的な雰囲気の人はいないの。そういった社会的なカテゴリーの枠の中にはいなくて、みんな自由で世代とか感覚が関係なく生きてる。江口くん(マネージャー)なんか顕著な例で「オッサン」という自覚がマジでないんだって。江口くんも僕もマクロン大統領とタメなんだけどさ、いまだに出会った頃のままの感覚なんだよ、あの人(笑)。

またさ、僕らはたとえば10〜20代、あるいは70〜80代の人だってすぐに友達になれるし変に意識することがないんだけど、日本の世の中的には、同世代以外と接することは飛び抜けた行動みたいに捉えられる節があるでしょう。これも僕は全然納得できない。聞こえの良い「多様性」みたいなことを言う前に、まず世代間の断絶をなくしてほしいと僕は思います。

そんな経緯もあって、僕自身が「おじ」なのか、それとも「オッサン」とか「ジジー」なのかと考えているわけだけど、やっぱり「おじ」っていう言い方には違和感がある。

だってさ、僕自身が「いやいや、僕はもう『おじ』だから」って言ったら相当気持ち悪いでしょう。それよりは「いやいや、僕はもう『オッサン』だから」「僕は『ジジー』ですから」って言うほうが自然だし楽だよ、こんな風に自虐的にも聞こえる言い方のほうが。

逆にさ、若い子から「峯田さん、オッサンだからな」「もうジジーですよね、峯田さんは」って言われても全然イヤじゃない。「オメー、なんでそんな言い方すんだよ!」とその場では怒ったフリをするかもしれないけど、そうやって世代間のギャップを楽しんでいけば良いんじゃないかと思う。

というわけで、やっぱり僕は「おじ」っていう言われ方はイヤですね。

オッサンの自覚ゼロの江口くんと。

構成・文:松田義人(deco)

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プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。