峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

【なんかなんか人生相談(29)】「みんな平等」「みんなに価値がある」はウソッパチだと思う(49歳・男性)

毎週連載

第359回

今週も「なんかなんか人生相談」です。今週はなんと、49歳の現役の高校の先生からの相談です。どんなことに悩んでいるのでしょうか。さっそく読んでいきましょう。

【お悩み】

私は49歳のザ・昭和世代の高校教諭です。
今の学校教育は昭和時代とはまったく違い、生徒個々に対して競わせたり、叱咤激励するようなことは絶対に御法度です。今の教育は総じて言えば「みんな平等」「一人ひとりみんなに価値がある」と接するのが大前提で、本心では「このままこの子が大人になったら、とんでもないことになるぞ」と思っても、それを言わないようにするのが今の教育です。
そんなことを経て社会に出ても、著しい資本主義の中でやっていけるはずがなく、それが結果的に「若いやつはまったく使えない」ということに繋がっているように思えて、ジレンマを抱えています。
「みんな平等」「みんなに価値がある」はウソッパチだと思うのです。教育者は、それをどこかでハッキリ言ってあげるべきだと個人的には思うのですが、それを言えないことが虚しいのです。
私はどのようにして生徒たちに接したら良いのでしょうか。
(T男・49歳・男性)
(※お悩みの文面は一部意訳しています)

【カウンセラー峯田のお答え】

僕、このT男先生にはマジで頭が下がります。真剣に「次の世代」のことを考えてくれているって意味では、僕には到底できないことだから、まずお礼を言いたいです。本当にありがとうございます!

僕さ、特にここ数年、「今の学校の先生」って、とんでもなく大変な職業だなぁと考えていたの。僕らが10代だった頃の先生だって、そりゃ大変だったと思う。でもさ、昔は「先生がやることは正しい」っていう社会的な信頼があったから、「親が学校に文句を言いに行く」なんてことは極めて異例な話だったわけ。

実際、僕が10代の頃、イタズラとか悪さをして先生からボッコボコに殴られることも結構あったけど、うちの親が学校に文句を言いに行くなんてことはなかったよ。「むしろうちの子を殴ってくれてありがとう」みたいにマジで考えていたんじゃないかと思う。

でも、今はダメでしょう。先生が子供に暴力をふるわないまでも、善かれと思って子供にきつくお灸をすえようもんなら、それ自体が大問題になる。要はさ、「そこで起きたこと」「そこにあること」しか見えない大人が増えて、「どうして怒られたか」「どうして殴られたか」っていうところまで想像が及ばないんじゃないかと思うんだ。

それでいて、「今の学校の先生」は、こういう制限がある中で、まともな大人になるように子供たちを育てないといけないし、また近隣で変な事件が起これば、そのフォローや責任まで押し付けられちゃう。これは大変だと思う。昔に比べて学校の先生になりたい人が減っているらしいけど、そりゃそうだよね。大変だもん、「今の学校の先生」は。

僕は結婚もしていないし、子供もいないからエラソーには言えないんだけどさ、もしかしたら、昔は近所の人とか大人が担っていたことまで、「今の学校の先生」に押し付けられているようにも思う。昔は近所の人同士とか、同じマンションの人同士で、「お互いの子供を見守る」みたいな風潮があったじゃん。でも、今はそういうコミュニケーションが希薄で、「隣に住んでいる人の名前も顔もわかんない」なんていうのが普通でしょう。結果的に「子供を見守る」役目まで、「今の学校の先生」が押し付けられているんじゃないかと思う。

最近よくさ、繁華街とかなんかのお店とかで、親が子供を野放しにしていることがある。その辺を子供が走り回って、周囲に迷惑をかけていても肝心の親は何も言わない。あんなことも昔では考えられなかったよ。うちの家族で出かけて、今の子供みたいに好き勝手はしゃいでいたら、間違いなく親にぶん殴られていたと思う。

本当の意味での「社会」「礼節」みたいな意識が、今は希薄になっているんだろうけど、もしかしたら自分と自分の家族以外のことは目に入っていないのかもしれない。そうだとしたら、当然そのことで周囲にどれだけの迷惑がかかっているかなんて想像できないんだと思う。

話が随分と飛んじゃったけどさ、T男先生が言う「『みんな平等』『みんなに価値がある』はウソッパチだと思うのです」には僕もまったく同感。ザックリ言えば、みんな平等ではないし、みんなに価値がない……っていうほうが僕にはしっくりくる感じがあります。むしろそう思っていたほうが、大人になってからのショックが軽減されて良いんじゃないかな。だって社会に出たら、みんな平等ではないし、みんなに価値がないことをイヤでも目の当たりにするんだから。

僕の高校3年のとき、柏倉先生っていう大好きな担任の先生がいたの。卒業式が近くなったとき、柏倉先生はクラスの生徒たち全員に向けてこう言ったんだ。

「最近、卒業式で卒業生代表が壇上に上がったときに、卒業生たちが椅子から立ち上がって、なんかパーティみたいなノリで大騒ぎするのが流行ってるみたいだけど、お前らはそういう『ダサいこと』だけはすんなよ」

柏倉先生はそうやって、みんなと一緒にバカ騒ぎすることを「ダサいこと」って言ったの。これはカッコ良いなと思ったな。だってさ、みんなで集まってバカ騒ぎするとかって、本当に無意味だし、ダサいなって思うから。どうしてもバカ騒ぎみたいなことをしたいんだったらひとりでやってほしいよね。「ひとりでやるならいいんだ」と褒められることではないけどさ、少なくとも「みんながいるから俺もバカ騒ぎする」みたいな人たちの100倍はよいと思うからね。

肝心のT男先生の「『みんな平等』『みんなに価値がある』を伝えられないもどかしさ」についてだけど、かなり厳しい「今の学校の先生」の立場を踏まえて言うとさ、そういう本質的なことを、「今の子供たち」に対して、何か違う言い方や、振る舞いで伝えるしかないんじゃないかなと思う。そこでもきっと「もっとはっきり伝えたい」「本当のことを明確に伝えたい」みたいにもどかしく思うことがあると思うけどさ、T男先生の気持ちをキャッチできる子供も中にはいるんじゃないかと思う。

だって、あのとき、柏倉先生が僕らに言った「ダサいこと」みたいな一言だけでも、僕にとっては後々の生きるヒントになったし、今でも心に残っているからね。

これだけ制限があって、肝心の親もおかしなことになっている今は、直接的にリスクあるメッセージや振る舞いをしたら潰されると思う。それだったら、「先生として伝えたい本当のこと」を、何か間接的な表現で、子供たちに伝えていくことしかできないような気がします。

舞台の稽古、かなり盛り上がっています。11月からの公演、楽しみにしていてくださいね!

構成・文:松田義人(deco)

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プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。