峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら
「別れさせ山」伝説③
毎週連載
第367回
先週の続きです。
結婚後わずか半月でアパートを出て行き、連絡が途絶え、最終的には離婚することになったTくんの元彼女だけど、同級生によれば「あの山に行ってから、彼女がおかしくなったらしい」と。さらに同級生は、続けてTくんにこう話したそうです。
「Tくんと彼女があの山の頂上に行き、夜景を見ていたときに、実は彼女に『別れたほうがいい。別れたほうがいい。絶対別れたほうがいい』と、誰かが耳元で囁いたって言ってたよ」
記憶を辿ると、Tくんは確かにあの夜景を見ていたとき、彼女は変なことを言っていたことを思い出した。
彼女は「この山に来て、なんかすごい念みたいなものを感じた。感謝の気持ちを伝えたいからお賽銭する」と言い、お賽銭にしては随分と額が多い3千円を賽銭箱に入れたんだって。また、これは後に発覚することなんだけど、彼女の家族によれば、「実はあの後も、かなり頻繁に山に行っていたらしい」という話も聞かされたりして。
Tくんは言葉を失い、ただただ全身に鳥肌が立ったそうです。
もちろん僕も友人からこのTくんの話を聞いて鳥肌が立った。確かにさ、何か嫌なことが起きたり、不穏なことが続くと、僕たち人間は「お化けの仕業だ」「神様のせいだ」とか言うことはある。こうやって科学で証明できないこととか、どうしても理解できないことが起きた場合、なんかモヤモヤして気持ち悪いからね。そうやって目に見えないもののせいにしがちではある。
でもさ、Tくんの話に至っては、僕にはどうしてもその山に原因があるように思えてならないの。だって、結婚して半月だよ? 山に行くまではずっとラブラブだったのに、それ以降、彼女が変な行動をしたり、いなくなったりしちゃったんだから。
仮にさ、本当にその山が「女の神様が宿っている」のだとしたら何がルーツなんだろうね。遠い昔、その山でカップルの彼女が亡くなってそのまま成仏できないままだとか?
不思議だけどさ、実はこの山に似たような話が台湾でもあるらしい。道端に赤い封筒が落ちていることがあるらしいんだけど、これは未婚のまま亡くなった女性の遺族が、結婚相手を探すために置いていると。そして、もし男性がこれを拾ってしまうと死者と結婚することとなるんだとか。
いわゆる「冥婚」ってことなんだけど、この話は一時期SNSでバズって「都市伝説かリアルか」なんて話題になったことがあったけど、実際、台湾には未婚のまま亡くなった女性ばかりを祀る廟もあるし、僕は本当なんじゃないかなと思っている。
ちなみに実は僕の地元の山形にも「冥婚」文化があるの。男でも女でも良いんだけど、若いうちに亡くなってしまい結婚できずにあの世に行ってしまった人を祀ることがあってさ。ただ、山形の場合は絵馬なんだよね。空想パートナーと暮らす様子を絵馬に描いて、それを祀るっていう。
いやー、Tくんの「別れさせ山」の話はめっちゃ怖いけど、Tくんがこの話を僕の友人にしたときにはもう、Tくんは再婚して幸せに暮らしていたみたい。こういう土地に纏わる伝承みたいなのって結構あるよね。ただ怖いってだけじゃなくて、興味深いな~と思ったお話でした。

構成・文:松田義人(deco)
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プロフィール
峯田 和伸
1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。