峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら
山形のオナカマサマ
毎週連載
第370回
「神様が降臨する」という日本のイタコ、台湾のタンキーと似たような存在として、山形にもかつてオナカマサマという人たちがいました。語源はおそらく「仲間」だと思うんだけど、特に僕の地元の山辺町では結構有名な存在だった。
誰かが精神的におかしくなってしまった場合、医学的な知識が乏しかったはるか昔はすぐに「キツネに憑かれた」「ムジナが湧いた」とか、要は「動物の霊に憑かれた」として、「目に見えないもの」が原因だ、とするしかなかった。そして、そんな場面でどう対処するかと言うと、ここでオナカマサマという霊媒師のような巫女さんを呼んできて、精神的におかしくなった人にお祓いをしてもらうんだ。
オナカマサマは、イタコやユタなどと同様、目が不自由な女性が多かったみたいだけど、これはふたつ理由があると思う。
ひとつは、目が不自由だと就ける職業が限られてしまう。昔は、今以上の差別もあっただろうと思うけど、そういう人が霊媒師として活動をするという理由。
もうひとつがさ、目が不自由がゆえに、それ以外の感性が研ぎ澄まされて、霊感などが高まるという理由。
このふたつがオナカマサマ、イタコ、ユタなどといった「神が降臨する霊媒師」就くことが多かったんじゃないかなと僕は思う。だから、中には商売としてわざと霊媒師風を装う偽物もいたみたいだけど、でも、山形のオナカマサマは、お祓いをお願いすると不思議と困りごと、揉めごとが綺麗さっぱり収まることが多かったらしいからね。オナカマサマはかなりレベルの高い霊媒師が存在したんだと思う。オナカマサマの研究をしていた人が集めた資料が、近年では国の重要有形民俗文化財に指定されたりして、政府も山形に根付いた信仰文化だとして認められてもいるんだよね。
ところでさ、オナカマサマと東北一帯にかつて根付いた、こういった「盲目の霊媒師」の存在は似ているところがある。「誰かがやり始めて、稼げることを知り、模倣して別の地域でもやり始めたんじゃないか」って見ることもできるけど、どういうわけか青森と福島とか、遠く離れた地域同士、情報伝達も少ない同時代に、似たような存在が現れたりもしたらしい。
残念なことにオナカマサマはもう継承者が誰もいないんだけど、こういった目に見えないことってさ、人によっては奇妙かもしれないけど、僕は今の時代の尊大さ、傲慢さを抑えるためにも、再注目されたほうが良いんじゃないかなともマジで思っていますよ。

構成・文:松田義人(deco)
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プロフィール
峯田 和伸
1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。