峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

ツッコミよりもボケてこそ生存能力を高める

毎週連載

第380回

前回、「綺麗になりすぎると『かわいいもの』がなくなる」って話をしたけどさ、もうひとつ、僕が現代に感じている話をしますね。

それは「ツッコミの人ばかり増えて、ボケる人がいなくなった」ってこと。

この話も散々喋ってきてるけどさ、よく仕事の打ち合わせとか、友達と一緒の会話中に「わからない話題」が上がった際、すぐにスマホを取り出して調べようとする人がいるじゃん。ああいう場面に出くわすと僕はすごくつまんない気持ちになるんだ。

そうやってすぐに調べようとする人はさ、親切心で「わからないこと」を解決しようとしてるんだとは思うけど、でも、心のどこかでは「わからないこと」への過剰な不安があって、それでスマホでピコピコ器用に検索して問題を解決してスッキリしてるんだと思う。

でもさ、そこでスマホに頼らないで、会話を続けたらそれはそれで面白い方向に話題が飛躍することだってあるんだよ。

みんなが記憶を辿っている間に、間違えた答えや推測が出たら、それだけで場が和むじゃん。「答え」なんて実は二の次でさ、そこに至るまでの「プロセス」のほうが、実はよほど重要で有意義なものなんじゃないかなと思う。

なんかさ、「知らない」「わからない」「間違える」ってことを、ことさらみんな気にしすぎだよね。でもさ、「知らない」「わからない」「間違える」っていう言わば「ボケ」みたいなもので。そして、それができる人は、実は人間らしくてみんなから好かれる存在だと思うんだけどな。

江口くん(マネージャー)なんか、その典型的な人だよ。江口くん自身は背伸びして何か知識を得ようとしないし、実際、普通の同年代の人と比べれば、知識は乏しいかもしれない。

でも、みんな江口くんのことが大好きなんだよ。どうしてかと言うとさ、江口くんが「ボケられる人」だからなんだよね。普通の人がなかなかできない「ボケ」ができるから、みんな江口くんに安心感を得られるんじゃないかと思う。

逆にさ、さっき言ったみたいにすぐスマホで調べようとする人は、強迫観念が強すぎて、頭がガチガチになってるからか、誰かがトラブルを起こした際は、すぐに「ツッコミ」を入れるかのように、ネット社会に訴える。

「あいつは不倫したらしい。けしからん」

「あの芸能人がやったことは絶対に許せない」

「そんなことをする人だとは思わなかった」

「応援してたのに裏切られた」

とかね。

「応援してたのに、裏切られました」とかさ、当の芸能人からすれば、良い迷惑だよ。別に頼み込んで応援をお願いしたわけでもないし、「あなたを裏切りません」なんてひと言も言っていないんだから。

そうやって他人に「ツッコミ」を入れる人はさ、潜在意識の中で「自分自身を正当化したい」「自分自身を優位に立たせたい」っていう思いがあるのかもしれないけどさ、その行為によって自分で自分を不自由にして、窮屈にしていることに気づいてない。

スマホは便利だしさ、僕ももちろん使ってる。そりゃエロ動画、エロ画像の収集だけじゃなくて、何か困ったときには調べたりもする。あと、僕はまだイマイチわかってないけど、ChatGPTとかも今後使うかもしれない。

でもさ、スマホは僕にとってあくまでもツールだから、この機械の中の社会がすべてで、あるいはChatGPTの答えが全部正しいなんて到底思えない。むしろ、それらしい答えを得られたとしても、疑ってかかっちゃうところはあるな。

今は雑誌とかWEBメディアの原稿も、情報だけの場合は全部AIがやってくれちゃうんだって。結果的に単に「このラーメン屋さんは、こういうお店で、営業時間は……」みたいな情報ばかりを書いていたライターさんとかは商売を全部AIに奪われつつあるらしい。

でもさ、そういう時代で何が一番強みになるかと言うと、やっぱり「人」なんだよ。

AIにはない「感情」を人は持っているわけじゃん。「このラーメン屋さんの味は『僕にとって』こんな味わいが懐かしく感じるし、誰になんと言おうと『僕にとって』大好きな味なんです。なんだか泣けるんです、この味が」っていう「感情」を訴えていかないといけない。その意見は偏っていて全然良いし、もしかしたら間違っていても良いかもしれない。でもさ、その「ボケ」た感情のほうが、これからは逆に強い生存能力を育むんじゃないかと最近ぼんやり考えています。

※3月27日(金)から公開になる峯田和伸主演の映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』の特集ページが公開されました。こちらからご覧ください!

3月27日(金)から公開になる映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』の撮影中の写真。「寺フェス」登坂尚高くんが現場に来てくれたときのもの

構成・文:松田義人(deco)

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プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。