峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら
『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』裏話②
毎週連載
第383回
この連載記事が公開される頃には、『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』が公開されていると思うけど、今週も前回に引き続き、映画の裏話を喋ります。この映画のプロモーションで、僕もいくつか取材を受けたけど、『ぴあ』では特集ページを作ってくれました(こちら)。こちらも良かったら見てください。
この映画は東京ロッカーズのリザード、フリクション、それと同時期に活躍したS-KEN、じゃがたら、THE STALIN、ZELDAがモチーフになっていて、そして彼らを間近で観続けた東京ロッカーズのマネージャー兼写真家だった地引雄一さんが主人公の物語。
それまでの日本の「ロック」はさ、ルックス的にも抜群にカッコ良い人が、ゴージャスな衣装を着て、派手な照明や演出の中でステージに立ち、観る人にとって「雲の上の存在」みたいな世界だった。
ところが、1977年、イギリスで誕生したセックス・ピストルズは、歌詞も直接的なメッセージで、演奏もヘタクソ。それは、観る人にとって彼らを身近に感じさせるものだった。
結果的に、セックス・ピストルズは「パンク」という概念の始祖となって、世界中にパンクが飛び火し、程なくして日本にも伝わってきたわけ。
「え? こんなのもアリなの?」みたいな感じだったと思うけど、そのやり方やスタイルを、コスプレ的に真似するんじゃなくて、ちゃんと昇華させて「自分の音」で日本で最初にパンクロックを鳴らしたのが彼らだったんだよね。映画ではさほど描かれていないけど、同時期に九州ではルースターズが生まれ、関西ではアーント・サリーやINUが登場し、同時多発的に日本のパンクが始まったんだけど、この時代は、僕がこの世に生まれて間もない頃なんだ。
実はさ、東京ロッカーズの伝説がすごすぎるから、僕は「懐古的な感じなだけの映画だったら、どうかなぁ」とは正直思ってたの。仮にそうだったとしても、十分すぎるほど意味はあるよ。元々の伝説がすごいからね。でもせっかくなら、懐古的なだけじゃなくて、「今の時代に刺す」ものでもあってほしいなと密かに思ってたわけ。
その点、やっぱり田口トモロヲさんと宮藤官九郎さんはすごかった。東京ロッカーズの伝説、地引雄一さんの視線を大切にしながらも、今の若者とか社会にぶつける映画にしてくれていた。
どんなところが「今の若者とか社会にぶつけているか」は、観る人によって答えが異なると思う。そこは自由に感じ取ってくれて良いと思うけど、僕の感想では「他人と違うことをやる」「自分にしかできないことをやる」=「自分の音を鳴らす」ことの大切さを強く掲げてくれていると思った。
今は「みんなと一緒に同じことをする」のが普通じゃん。もしかしたら、「みんなと一緒に同じことをする」ことで安心感的なものを得られるのかもしれないけど、同時に閉塞感も生まれる。ましてバンドとか表現では、そんな考えから面白いものなんて生まれるわけがないんだよ。むしろ、今の常識・定石みたいなものとは違うことをしないとバンドとか表現はやる意味がないんだよね。
実はさ、大先輩の東京ロッカーズの時代の皆さんにはおこがましいけど、僕が最初にGOING STEADYを組んでライブをやったとき、そんな気持ちを抱いていた。
当時はハイスタが流行っていて僕も大好きでライブもよく観に行っていた。でも、どうせ僕がバンドをやるのだとしたら、ハイスタみたいにカッコ良くなんてできっこないし、むしろハイスタの真逆をやらなくちゃダメだ、と思った。
ハイスタが英語なら、僕は日本語。英語が主流なら、僕は山形弁。それでたった1回のライブでバンドが崩壊しても良いし、長く続けようなんていっさい考えてなかったし。それこそが僕が思うパンクだと思ってたからね。
でも、この映画を観て、東京ロッカーズの人たちが「自分の音を鳴らす」ことに命を燃やしていたことを改めて知り、彼らがいなかったらGOING STEADYも、銀杏BOYZも、今の僕自身もいなかったかもしれないわけで、僕にとってかなり大切な映画だと思っている。僕が主演ではあるけど、そのこと以上に自分の音楽活動とかバックボーンにとって、とても大切な映画なんだよね。……というのが映画を観た僕の思いなんだけど、実際のところ観た人の多くが「これは俺の映画だ」って言うらしい(笑)。そう思わせてくれるところは、パンクの良心をしっかり映画で継承しているとも思うな。
ここまでの通り、『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』は、その時代を知っている人、今の若い世代の双方を熱くさせる映画です。ぜひ映画館で観てほしいですね。
※映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』の特集ページが公開中です。こちらからご覧ください!
構成・文:松田義人(deco)
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プロフィール
峯田 和伸
1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。