峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら
『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』裏話③
毎週連載
第384回
『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』が公開になりました。これを喋っているときはまだ公開前だけど、観てくれた人がどんな感想を持つかすごく楽しみです。この連載のコメント欄でも良いし、ぜひ感想を聞かせて欲しいです。
映画公開に先駆けて、3月20日に、映画のエンディング曲「宣戦布告」を配信リリースしました。これは映画でモモ(リザードのモモヨ)役を演じた若葉竜也くんと僕が歌っているもので、原曲は映画のモチーフになった「東京ロッカーズ」の中心バンド、リザードが1980年にリリースしたセカンド・アルバム『BABYLON ROCKERS』のA面一発目の曲です。リザードはファースト・アルバム『LIZARD』(1979年)の評価がすごく高いんだけど、僕はこのセカンドも大好きで、実は一番リザードのカッコ良さを表している曲なんじゃないかと思ってるの。
リザードは元々は紅蜥蜴(べにとかげ)っていうバンドで1972年結成なんだ。「東京ロッカーズ」のアルバムが出たのが1979年だから、すでに活動歴が結構長いバンドだったんだ。ただ、結成当初ボーカルのモモヨさんはまだ10代で、若くしてアンダーグラウンドシーンで活動を続けていた。そんな中で1970年代後半にパンクの情報が日本にも入ってきて、リザードとなって、パンク/ニュー・ウェーブのサウンドに変わっていき、「東京ロッカーズ」に参加することになったんです。
「東京ロッカーズ」に参加しているバンドはどれもカッコ良くて大好きなんだけど、みんな個性と個性がぶつかり合っている感じが良いんだよね。ムーブメントとしての同志ではあったと思うんだけど、「他のバンドがそう来るなら、俺らはこうしよう」みたいな切磋琢磨した感じもあって、「日本のパンクが生まれた瞬間」みたいな高揚感がある。そして、その中で特に僕が好きなバンドがリザードなんだ。映画で中心的に描かれているから、というわけではないよ。そうではなくて、なんか「バンド」という表現の可能性みたいなものを、あらゆる側面から表現しているところが好きなんだ。でも、小難しい感じの曲はなくて、特にセカンド『BABYLON ROCKERS』はポップな曲が多くて僕は好きなんだ。あと、ビートのきいた速めの曲だけじゃなくて、レゲエっぽい曲もある。これもオシャレなんだよね。
映画の原作は地引雄一さんによる『ストリート・キングダム』っていう本だけど、これによると、パンクがロンドンから日本に上陸したのと同時に、実はレゲエもロンドン経由で日本に入ってきたらしい。
戦後間もなくして、イギリスは植民地・ジャマイカからの移民を受け入れていて、ロンドンの居住区みたいな場所では、母国のジャマイカの音楽・レゲエが鳴っていたそうです。1960年代にはオリジナルのスカもジャマイカから入ってきてモッズたちに親しまれ、1970年代になると、イギリスの白人と黒人混合のバンドによって、速いスカに進化したりして、こういった経緯からレゲエもパンクと同じくロンドンの「最先端の音楽」として日本に入ってきたらしい。実際、パンクバンドのクラッシュなんかもレゲエの要素を取り入れた曲があるし、そういった影響からリザードもレゲエのサウンドを取り入れた曲を作っていたのかもしれない。
でもさ、つくづくすごいなと思うのはリザードはもちろん「東京ロッカーズ」のバンドたちの音楽的な意識の高さ。海外の音楽の情報は、今とは比べられないほど入手しにくかった時代にあって、パンクやレゲエをいち早く取り入れて楽曲にしているところがまずすごい。さらに、単に模倣するのではなく、自分たちの音・言葉で表現しているのもすごい。
パンクバンドは労働者階級から生まれたバンド、政治思想から生まれたバンドなど様々だけど、「東京ロッカーズ」は「音楽的なオシャレを突き詰めていく中で生まれたバンド」みたいな感じがするんだ。特にリザードはその可能性を模索しながら、でもポップに表現しようとしているところが最高なんだよね。
若葉竜也くんと一緒にカバーした「宣戦布告」は、リザードの曲の中でも、特にポップでカッコ良いビートのきいた曲。ぜひ映画と合わせて聴いてほしいです。
※映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』の特集ページが公開中です。こちらからご覧ください!
構成・文:松田義人(deco)
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プロフィール
峯田 和伸
1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。