峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

アナログレコードのポータブルプレイヤーは何故存在したか

毎週連載

第385回

相変わらずアナログレコードとかカセットテープを集めています。そんな中、ちょっと前に知り合いから「峯田くん、ポータブルレコードプレイヤーが欲しいんだけど、オススメの機種はある?」っていう相談を受けた。聞けば、「ちゃんとしたレコードプレイヤーも良いけど、なんとなくオモチャみたいな感じのプレイヤーでレコードを聴きたい」っていうことだった。

今、現行で発売されているポータブルレコードプレイヤーはBluetooth対応のモデルがあったりして、その中からいくつか推薦したけど、確かにあれは「モノ」としてのかわいさがある。でもさ、「オモチャみたい」と侮られがちなポータブルレコードプレイヤーだけど、実は電機メーカー各社からこぞって発売されていた時代があったんだよね。

僕の実家は町の電器屋だけど、僕がまだ子供の頃は、テレビとかと一緒の扱いでポータブルレコードプレイヤーを売ってた。オーディオ専門店で売っているのならまだわかるけど、町の電器屋だからね。それだけ需要があったってことだよ。

ただ、僕が大きくなるにつれ、カセットテープで音楽を楽しむのが主流となりポータブルレコードプレイヤーの需要がなくなり「もう古くて売れない」ってことで、倉庫に追いやられることになった。いよいよ僕が「自分でレコードを聴いてみたい」と思った頃、その倉庫の在庫品だったポータブルレコードプレイヤーをもらって、初めて針を落としたんだよね。スピーカー内蔵で音は悪いんだけど、すごく興奮したことを覚えている。

でもさ、ここで疑問も浮かんでくるわけ。ちゃんとしたレコードプレイヤーだけでなく、何故携帯型のポータブルレコードプレイヤーに、そこまでの需要があったのかっていうこと。携帯して、出先でもレコードをかけられるのがポータブルレコードプレイヤーの最大の特徴だけどさ、当時は、出先にアナログレコードとプレイヤーの両方をわざわざ持って行き、そこで音楽を楽しんでいたということになる。例えば友達とか恋人同士とかでピクニックに行く際も、サンドウィッチとかと一緒にわざわざアナログレコードとプレイヤーを持っていき、芝生の上で寝そべりながら針を落として音楽を楽しんでいたんじゃないかと思う。

そう考えると、今よりずっと穏やかで、逆に豊かな時代だったと思うな。今は音楽だろうがナンだろうが、スマホひとつで簡単に手に入れられる時代だけど、文化的な面で見れば、その情報過多が逆になんか貧しい感じもするんだ。簡単に手に入る便利さはある。でも、その文化や創作されるものが軽々しく扱われるところもあるからね。

それに比べれば、ごく限られた情報とか数少ない娯楽の中での「音楽」は、今よりずっと大切な存在で、聴く人の想像力を膨らませてくれて刺激とか癒しを与えてくれるものだったんじゃないかなと思う。それが正しければ、「想像する」「音楽を楽しむ」という意味では、今よりも昔のほうが豊かだったんじゃないかと僕は思うんだ。

あと、ポータブルレコードプレイヤーの「音の悪さ」も僕は好き。もちろん音楽は綺麗な音で聴くのが一番だよ。でも、僕は最初に自分が針を落としたポータブルレコードプレイヤーの音がどうしても忘れられないんだ。あのモコモコした鮮明ではない音には、聴き手の想像力を膨らませてくれたり、その音楽が鳴るシーンを盛り上げてくれる何かがあるような気がするもんな。

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5月27日(水)からはツアーが始まります。この話はまた後日!

構成・文:松田義人(deco)

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プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。