峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

カセットテープ文化のアレコレ

毎週連載

第387回

前回、「レコードは本命。カセットはセフレ」っていう話をしました。恋愛でもそうだけど、どういうわけか本命ではない「セフレ的なもの」のほうが、後々強い記憶に残っていることがある。

それがどうしてなのかと言うと、やっぱり「自分の想い通りの中身を作った」という記憶と、「でも、厳密に言えば自分の物ではない」という切ない感じが強く脳に残っているからだと思う。

レンタルCD、レンタルレコード、あとはラジオとかから、好きな音楽をカセットテープに吹き込むんだけど、その後のカセットレーベル作りもまた楽しいんだ。例えばさ、ブルーハーツの音源をカセットテープにダビングしたら、そのレーベルを自分の手書きで作るわけ。字体をブルーハーツのアルバムジャケットのものに似せたりとか、あるいはレタリングシートを買ってきて、アルファベットでカセットレーベルに書き写すとかね。

レタリングシートって、たぶん今でも売っていると思うけどさ、薄いプラ板みたいなものに、アルファベットの文字が複数並んでいるわけ。それを印字させたい紙の上に乗せて上からアルファベット部分を擦ると、その綺麗な字体が紙にそのまま印字されるというもの。AとかBとかの、汎用度の高いアルファベットからどんどんなくなる一方、Z とかXとかは全然減らないとか(笑)、そんな独特な思い出もあった。今思い出したけど、小学生の頃のクラスメイトへの誕生日プレゼントとかは、だいたいレタリングシートとか蛍光ペンだったな。文房具屋さんに行って、友達が好きそうな書体を選んで買って。文房具屋さんのオバサンに「友達にあげるんで包んでもらえませんか」ってお願いしたりして。言い換えれば、それだけみんなカセットテープで「自分だけの音楽」を作ることが主流だったってことでもあると思う。

さらには、自分で好きな曲をいっぱい入れたミックステープを作って友達にプレゼントする、なんてこともよくあった。僕も女の子の友達からプリンセス プリンセスが入ったカセットテープをもらったことがあるし、僕も結構いろんな友達にミックステープを作ってプレゼントしたことがある。いっぱいあげすぎて、誰にあげたかすら記憶が乏しい感じもあるけどさ、でもやっぱりそれだけ音楽は大切で、カセットテープには自分の思いが強く反映されるものでもあったってわけさ。

この連載でも何度も話してきているけど、僕は今の音楽配信を否定するつもりはないし、便利ですごく良いなと思うんです。アナログレコードやカセットテープみたいな「敷居」よりも、ある意味でもっと音楽が手軽で身近なものになったと言えなくもないしね。

でもさ、音楽配信があるのなら、アナログレコードやカセットテープみたいな昔ながらの媒体も同時に残して欲しいと僕はずっと思ってきたの。だってさ、音楽配信で聴いて本当に好きになったアーティストがいたとして、「あまりにも好きだから、この音楽はきちんと『自分だけの物』としてアナログレコードやカセットテープで手元に置いておきたい」っていう人もいるわけだから。でも一時期までは、アナログレコードとかカセットテープはガラパゴス化しちゃって、手に入れるのが難しいとか、価値がまったくない古い物、みたいな扱いを受けていた。

それは悲しいしもったいないと思って、僕は銀杏BOYZの作品でも、音楽配信・CDだけじゃなくて、できる限りアナログレコードやカセットテープでもリリースするようにしてきたんだ。

最近は、僕と同じように考える人が増えたのか、それとも違うニーズなのか、アナログレコードやカセットテープが再評価され、新たな専門店も増えてきた。アナログレコードに至っては産業市場、実は今の時代が一番売れていたりするらしいけど、すごく良いことだと思う。

でもさ、ここでまた新たな疑問も浮かぶわけ。アナログレコードやカセットテープは復権したわけだけど、アナログとデジタルの狭間にある「CD」はこの先どうなっていくんだろう、っていう疑問。この辺の話を来週話したいと思います。

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もちろんCDも大好き。でもCDはこの先どうなっていくんでしょうか

構成・文:松田義人(deco)

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プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。