峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

日本のパンクの「高円寺系」と「バンタンオシャレ系」の2潮流

毎週連載

第389回

この春公開となった映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』はおかげさまで反響がすごいみたいだけど、あの映画に取り組んだ8年間、同時に僕なりに「日本のパンク」を振り返っていた。

映画の原著でもある地引雄一さんによる『ストリート・キングダム 東京ロッカーズと80’sインディーズ・シーン』っていう本は、70年代後半から80年代のバンドブームに至るまでの、「日本のパンクの変遷」をつぶさに綴ったもの。実は映画のような感情的な話はそうないんだけど、でも、「日本のパンクの変遷」を知るには貴重な本だと思う。地引さんにはきっと、相応の思想とかバンドの好みとかは当然あったと思うんだけど、そういう話ではなく「客観的に見た事実」を綴っているから、誰が読んでも理解しやすい話になっているんだよね。

僕自身は、地引さんや「東京ロッカーズ」の先輩たちの何世代も下で、音楽を始めたいと思った頃には、「パンク」というジャンルが日本のロックシーンに完全に定着してたの。

同時に僕や村井くん(元銀杏BOYZメンバー)は10代の頃、そのパンクに憧れて、掘り下げていくことに夢中になっていたんだけどさ。進学で東京に出てきたとき、「日本のパンク」を知る・体験する上で重要な場所……中央線沿線のライブハウスとか、あるいはクラブ系のパンクイベントとかには、村井くんと一緒に一通り足を運んで体験したことがあった。

その10代の経験で、僕が思ったことは「日本のパンクは、ザックリ分けて『労働者系パンク』と『原宿オシャレ系パンク』のふたつの潮流があるな」ってこと。

「労働者系」っていうのは、純粋にパンクやハードコアが好きで思想などがあったりする人たちで、ある意味ではすごく真面目で、どちらかと言うと当時の僕と村井くんはこっちのパンクにシンパシーみたいなものを覚えていた。「人任せにせず、自分でなんでもやる」DIYの精神とか、「誰でもその気になれば何かができる」みたいなさ、ある意味ですごく優しいところが僕は好きだった。

一方の「原宿オシャレ系パンク」っていうのは、岡崎京子さんが『東京ガールズブラボー』っていう漫画で描いているような「パンクをオシャレ的な感性で捉えている人たち」で、特に僕や村井くんが10代を過ごした90年代前半とかは、クラブ系も盛り上がっていたの。一度、そういうクラブでのパンクイベントに村井くんと行ったことがあるけど、遊びに来ている人たちが、当時あったクラブ系ファッション誌『キューティ』に出てくるような人たちばっかりだった。正直に言えば、僕も村井くんもそういうオシャレな人たちにも、めちゃくちゃ憧れがあるんだけど、どうも近寄りがたい。村井くんなんか全然山形弁抜けてないしさ(笑)。

そのオシャレなパンクに憧れがあるのに、中に入れない嫉妬みたいな感情もあって「真のパンクは違う」「お前らは異性からモテたいだけだろう」みたいに解釈をして、より労働者系パンクのほうにシンパシーを抱くようになっていたところもあるかもしれない。

でもさ、今思えば、実はどっちのパンクも正解なんだよ。

ある種の「自分だけの思想」を貫いて、DIYで音楽や作品を発表していくのもパンクだし。1970年代後半、ロンドンでパンクが盛り上がり世界中に飛び火したのもファッションを抜きにはできないからね。

そんな自分の経験を振り返りながら、あの映画に挑んだわけだけど、「東京ロッカーズ」のバンドたちって実は、この両方をバランス良く持っていたんじゃないかと思う。「自分たちで音楽や作品を発表していく」っていうDIY精神を大前提に持ちながらも、みんな実はかなりオシャレで、同時代の海外の音楽にもすごく敏感で自分たちの音楽作品に瞬時に取り入れていた。

そういう偉大な先輩たちに影響を受けた下の世代のバンド、さらにその下の世代のバンド、もっと下の世代のバンド……と裾野が広がっていくことで、「労働者系パンク」「原宿オシャレ系パンク」みたいに2分化されたのかな、なんて思っている。

今の僕は「労働者系パンク」「原宿オシャレ系パンク」のどっちも好きだし、どっちにも憧れがあるけど、でも、一番憧れるのは、これらをバランス良く持っていた「東京ロッカーズ」の先輩たちで、特にリザードはその最たるバンドだったんじゃないかなと思う。

※映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』の特集ページが公開中です。こちらからご覧ください!

改めて先駆者の「東京ロッカーズ」はすごいと思います

構成・文:松田義人(deco)

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プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。