笑福亭茶光 撮影:橘蓮二
続きを読む「笑福亭茶光 落語会 ゴールデンドロップ」『衝突』『高津の富』『時を越えて君のそばに』

独自の発想力と高い技術、今年のブレイクを予感させる笑福亭茶光さんの魅力が至るところに感じられる圧倒的な独演会であった。古典・新作どちらかに特化した人気落語家は数多いるが共にハイレベルな落語家は意外と少ない。若手の中でズバ抜けていることは以前から知るところ、落語業界全体を見回しても稀有な存在だ。
一席目は新作『衝突』。突発的な非常事態に陥った時に起きると言われる体内時計の歪み(瞬間がスローモーションに感じられる)の中で繰り広げられるぶつかり合った両者による会話劇。冒頭のつかみからテンポ良く繰り出されるくすぐりで一気にサゲまで畳み掛ける展開力は見事だった。

続いて二席目に演じた『高津の富』(東京は『宿屋の富』元は上方落語)ではオリジナルなサゲと噺の中にそっと忍ばせた工夫が如何に訴求力に富んでいるか深く合点した。自称お金持ちが見栄を張ったばかりになけなしのお金で買う羽目になった富くじを巡るドタバタ劇であるが笑いに膨らみを持たせる登場人物のひとりが夢のお告げで二番富が当たると言い張る(結果は外れる)場面があるのだが別に落語的世界では細かい部分は気にならないと言われれば勿論なのだが、勘違いしたこの人物が自分は辰年、夢枕に立ったのが辰の神様、示された番号が辰の八五一(はっぴゃくごじゅういち)番、しかし当たりは八五七(はっぴゃくごじゅうしち)と何故一番富ではなく二番富に拘ったかを然り気無く意味付けすることでより噺に没入できる。さらに一番富に当たり前後不覚になった状態で宿に戻り震えながら布団に潜り込んだ主人公が慌てて草履を履いたままだったと言うお馴染みのサゲも噺の途中で富に当たったら宿の主人に半分渡すと口約束した台詞に紐付けて、悪いもの食べて当たったと言わせることでそれを受けた主人が「当たった半分どないして貰おう」とサゲて物語をクリアに際立たせる手腕には感嘆した。

そして三席目は今公演ならではの照明による演出を凝らした新作『時を越えて君のそばに』。落語がカルチャーの中心にある世界線を描くファンタジー。ドーム公演を間近に控えた超大物落語家のデフォルメされたキャラクター造形と実際にはあり得ないエピソードの数々で描く架空の世界の面白さは茶光さんの代表作のひとつと言える。
古典では地の語り以外は現代語を入れず世界観を壊さないように腐心し、新作に於いては自身のセンスを自由に織り込むといった緻密さと笑いの取り方の差違を熟知している。「初めて落語を聴くお客さまの入り口になりたい」と言うが入り口どころか落語界のメインストリートのひとりになれる存在である。笑福亭茶光さん、いよいよブレイク間近。

文・撮影=橘蓮二
<取り上げた公演>
「笑福亭茶光 落語会 ゴールデンドロップ」
2025年1月12日(土) 東京・新宿シアターモリエール
開場 17:30 開演 18:00

今後の公演予定
公式サイト:
https://shofukutei-sakoh.com/
■堀之内寄席
2025年2月23日(日) 東京・堀之内妙法寺
開場 14:00 開演 14:30
■N's Factory music stage in All
2025年2月24日(月・祝) 東京・渋谷La.mama
開場 17:00 開演 17:30

■茶光の12ヶ月
2025年3月3日(月) 東京・らくごカフェ
開場 18:30 開演 19:00

■水戸みやぎん寄席
2025年3月14日(金)・15日(土)
会場:茨城・水戸みやぎん寄席
14日(金) 開演 18:30
15日(土) 開演 11:30 / 14:30
■Tバードの会
2025年3月18日(火) 東京・兜座
開場 18:30 開演 19:00
■ルート9 in 花座 2025
2025年3月21日(金)・22日(土)
会場:宮城・魅知国定席 花座
21日(金) 開演 14:00 / 18:30
22日(土) 開演 11:00 / 14:00
プロフィール
橘蓮二(たちばな・れんじ)
1961年生まれ。95年より演芸写真家として活動を始める。人物、落語・演芸を中心に雑誌などで活動中。著書は『橘蓮二写真集 噺家 柳家小三治』『喬太郎のいる風景』など多数。作品を中心にした「Pen+」MOOK『蓮二のレンズ』(Pen+)も出版されている。落語公演のプロデュースも多く手がける。近著は『演芸場で会いましょう 本日の高座 その弐』(講談社)。