演芸写真家 橘蓮二のごひいき願います! 〜落語・演芸 期待の新星たち〜

『春の白鳥の湖 華麗!浪曲女子会』より東家三可子さん、天中軒すみれさん、東家千春さん ごひいき願います!

毎月21日連載

第53回

(左より)東家三可子、天中軒すみれ、東家千春 撮影:橘蓮二

4月19日なかの芸能小劇場で開催された「春の白鳥の湖 華麗!浪曲女子会」は、個性豊かな若手浪曲師三人が、現代の新作落語を牽引する三遊亭白鳥師匠が生み出した名作の数々を浪曲に仕立て披露する注目の会であった。

先陣を切ったのは、白鳥作品は今回が二度目となる東家千春さん。演目は漫画『ガラスの仮面』をモチーフに創作した白鳥 作/落語の仮面より『浪曲の仮面』。本人曰く「これ迄で一番うけた」と言うほど客席が一体となり大きな笑いに包まれた。

印象として、明快でコミカルな新作浪曲にも定評がある千春さんとハイテンションで描く白鳥作品は抜群に相性が良いと感じた。もちろん相性だけではなく、劇中の振り幅が大きい感情の起伏を、いつもより節回しを多用し、よりドラマチックに表現するなど物語の随所に様々な工夫が凝らされていた。千春さんが心から楽しんで演じていることが伝わり、聴き手が思わず笑顔になる心地良い浪曲であった。

続いての登場は、凛とした高座姿に溢れる透明感が際立つ東家三可子さん。以前から異世界の不思議な物語が好きだったということもあり、今回選んだ演目はちょっと風変わりな古典落語『茄子娘』をベースにした後日譚『ナス娘の大冒険 初めての友達』。

落語と浪曲の文字数の違いを踏まえ、物語の展開を変えずに変換し、如何に程よい時間で収めるかに腐心しながらの効果的な節回しと、出身地の秋田の方言にある語尾に付く“~なす”を登場人物の会話に織り混ぜることで、噺全体が綺麗に刈り込まれた上に牧歌的な温かみが加わり、雑味のない演者の人柄が抽出された優しい人情噺になっていた。

仲入り前には、今公演の主役・三遊亭白鳥師匠が初めての試み、テーブルを前に立ち姿で『新アタマ山』を熱演。

人間の臓器を擬人化した白鳥師匠ならではの奇想天外な落語は流石であったが、それ以上に衝撃的だったのは、誰ひとり気付かなかった、というより何故自身が気付かなかったのか、着物を裏表に着て演じるという本人が落語をも超える最も奇想天外な人であった。

そしてトリは、着実に古典の王道を歩みながら、昨年は『浪曲 陰陽師 琵琶玄象』(夢枕獏 原作)を公演するなど進境著しい天中軒すみれさんが『アニメ勧進帳』を緩急自在に演じてみせた。

地のストーリーの中にもうひとつの物語が存在する二重構造になってる特性を踏まえ、全体は軽やかに、そして勧進帳を読み上げるシーンでは歌舞伎をデフォルメし朗々と語って聞かせるなど、台詞の運び方、溜め、スピードを緻密に駆使しながら、噺の芯を外すことなく綺麗に削ぎ落とされた構成力は非常に素晴らく、ここ数年勢いづくすみれさんの実力を感じるに充分の高座だった。

最後は白鳥師匠による各自に向けた講評。作者ならではの視点から、各々がより物語を立体的に描写するための具体的且つ的確なアドバイスが送られた。さらに終演後の緞帳の裏でも暫し白鳥師匠の指導が続き、一言も聞き漏らすまいと熱心に耳を傾けるお三方の姿がとても印象的だった。

また多くの白鳥作品がマイノリティ側に寄り添う噺であることも、曲師が奏でる時に哀調を帯びた音色と共に、情感を節と啖呵で語る浪曲とは親和性が高い。着眼点、人物の活かし方、そして独自の味付け。三者三様、異なる色彩で描写した高座は、これまでにない浪曲と白鳥作品が融合した新たな景色を見せてくれた。今から、第二弾の開催が待ち遠しい。

文・撮影=橘蓮二

東家三可子 公演予定

■ばばんば★ばんばんうなろうかい 第16回
2026年5月23日(土) 東京・高田馬場ばばん場
開場 17:30 開演 18:00

■第16回 三遊亭圓雀の松並木落語会
2026年5月25日(月) 埼玉・アコスホール
開場 18:00 開演 18:30

■大演芸まつりin横浜にぎわい座~声が走る。浪曲が走る。~
2026年5月26日(火) 神奈川・横浜にぎわい座 芸能ホール
開場 12:30 開演 13:00

■第二十一回 三遊亭金八プロデュース 別院寄席
2026年5月31日(日) 北海道・根室別院会館
開場 15:00 開演 15:30

■浪曲定席木馬亭
2026年6月4日(木) 東京・木馬亭
開演 12:15

■東家三可子 ガリっと新作浪曲会
2026年6月14日(日) 東京・シン・道楽亭
開場 12:30 開演 13:00

■浪曲新宿亭 新緑深まる若手浪曲会
2026年6月15日(月) 東京・新宿永谷ホール
開場 12:30 開演 13:00

■池袋夜間飛行 第23夜「怪談と奇談」
2026年7月5日(日) 東京・プーク人形劇場
開場 17:45 開演 18:15

天中軒すみれ 公演予定

■ばばんば★ばんばんうなろうかい 第16回
2026年5月23日(月) 東京・高田馬場ばばん場
開場 17:30 開演 18:00

■浪曲広小路亭
2026年5月24日(日) 東京・上野広小路亭
開演 13:00

■浪曲陰陽師 -琵琶玄象-〈再演〉東京公演
2026年5月27日(木) 東京・ムーブ町屋 ムーブホール
開場 18:30 開演 19:00

■浪曲陰陽師 -琵琶玄象-〈再演〉京都公演
2026年5月30日(土) 京都・NAM HALL
開場 17:30 開演 18:00

■一心寺門前浪曲寄席
2026年6月13日(土)〜15日(月) 大阪・一心寺 南会所
開場 12:30 開演 13:00

■天空浪曲二人会
2026年6月14日(日) 大阪・朝日新聞大阪本社アサコムホール
開場 18:30 開演 19:00

東家千春 公演予定

■浪曲はじめ2026 REBOOT
2026年5月22日(金) 東京・アートスペース兜座
開場 18:30 開演 19:00

■談寛・千春のブツブツ交換会
2026年5月30日(土) 東京・スタジオフォー
開場 13:30 開演 14:00

■こはぜ浪曲の会 第5回伊丹秀勇勉強会
2026年5月31日(日) 東京・こはぜ珈琲
開場 10:15 開演 10:30

■浪曲オンザビーチ
2026年6月2日(火) 東京・ナカメオンザビーチ
開場 18:00 開演 18:30

■ガラスの仮面浪曲会
2026年6月7日(日) 埼玉・十輪寺
開場 13:30 開演 14:00

■中野ウナカメ寄席 Vol.3
2026年6月13日(土) 東京・ウナ・カメラ・リーベラ
開場 14:00 開演 15:00
開場 17:00 開演 18:00

■ガラスの仮面浪曲会
2026年6月14日(日) 東京・高円寺leaven
開場 18:30 開演 19:00

■若手一文字浪曲会
2026年6月18日(木) 東京・ばばん場
開場 18:30 開演 19:00

プロフィール

橘蓮二(たちばな・れんじ)
1961年生まれ。95年より演芸写真家として活動を始める。人物、落語・演芸を中心に雑誌などで活動中。著書は『橘蓮二写真集 噺家 柳家小三治』『喬太郎のいる風景』など多数。作品を中心にした「Pen+」MOOK『蓮二のレンズ』(Pen+)も出版されている。落語公演のプロデュースも多く手がける。近著は『演芸場で会いましょう 本日の高座 その弐』(講談社)、『演芸写真家』(小学館)。