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桐山漣の「月刊キリヤマガジン」

レザークラフト体験 愛用のベースのストラップづくりにチャレンジ

不定期連載

第15回

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今回訪れたのは、桐山さんの友人でもある革職人の北澤湧さんが営むアトリエ。10代から職人の道を歩みはじめ、イタリアのフィレンツェで修行を積んだ北澤さんは、2022年、顧客一人ひとりにその人のためだけのオリジナルのトランクを仕立てるビスポークブランド『TRUNK by Kitazawa』を発足。

桐山さんとは10年来の仲で、悩んだときは夜中に電話をして話を聞いてもらうほど深い信頼を寄せており、北澤さんにとっては「いいお兄ちゃん」のような存在だそう。

そんな若き匠のもとで今回は何をするかというと…。

ご覧ください。こちらが、桐山さんが普段から愛用しているベースです。

かねてより革のストラップがほしいなと思っていた桐山さん。ないならば、自分でつくればいいじゃない。ということで、今回は革のストラップづくりに挑戦します!

まずは長さの調整から。ちょっと高めのポジションでプレイしたいという桐山さん。鏡を見ながら、ちょうどいい長さを決めます。

そして、パターン(型紙)を使って、ストラップの幅も決めていきます。自分のベストのサイズでつくれるのはオーダーメイドならでは。

ストラップの端はアーチ状に。

形状が決まったらパターンをくり抜いていきます。

まだほんの先端だけですが、なんとなくそれっぽい感じがします!

では、パターンを添えて革にカッターを入れていきます。

まずは「粗裁ち」と言って、パターンよりも大きめにざっくりと裁断するところから。ちなみに今回使うのは、牛の足の革。牛革ならではのなめらかな素材感も魅力です。

写真では伝わりにくいですが、革は厚みがあるので、すんなりとは切れません。コツは表面を撫でていくように。革とカッターが接触している部分を力点にして、そこに力を入れて刃を滑らせていきます。

北澤さん曰く「お肉を切るのと同じ感じ」とのこと。革にはいくつもの層があるそうで、その層を順番に切っていく感じが、お肉を切るのと同じ理屈なのだとか。

革職人にとっては、この革を切るという作業が第一関門。新人時代はひたすら革を切る練習をするそうです。

毎回のことではありますが、飲み込みの早い桐山さん。その鮮やかな手さばきに北澤さんからも「ナイスカット!」の声が。一直線にナイフを引く手に「いい画が撮れた」と桐山さんも喜びの笑顔です。

革には表と裏がありますので、ストラップをつくる際はどちらの面も表になるよう、2枚の革を貼り合わせます。

ブラシを使ってボンドを散らすように塗っていきます。このとき、ちょっとはたくように塗るのがポイント。そうすると、よりボンドが繊維に染み込んでいきます。

ドラマ『パティスリーMON』でパティシエ役を演じる桐山さん。ボンドを塗りながら「生クリームを塗ってるような感じがする」と思わず吹き出していました。

さあ、いい感じに塗れました! 早速貼り合わせてみましょう。

ぺたっとくっつけたら……。

端切れを当てながら、ローラーで圧着をかけます。

しっかりと貼り合わせたら、ボンドが乾くまで15分ほど寝かせます。

2枚の革がしっかりとくっついたら、いよいよパターンに合わせて革をカットしていきます。

北澤さんが手に持っているのは、ベルトカッターという専門道具。

刃のついている部分に革を通して引っ張るだけで、まっすぐに切れるスグレモノ。これで一気に裁断します! 失敗の許されない場面。さあ、桐山さんはうまく切れるか…?

大成功!「うわ、これ気持ちいい」と桐山さんもホクホク顔です。

こうして丸めても側面に凹凸がありません。ちゃんと均一の幅で切れた証拠ですね。

残るは、先端の部分のみ。綺麗なアーチ状になるようにカッターを入れていきます。

いい感じ! あとは、やすりがけをして形を整えます。

そして、いよいよミシンがけへ。ストラップの縁を縫い合わせていきます。ちなみにこのミシン台はもともと桐山さんの部屋にあったものだそう。それを北澤さんが譲り受け、ミシン台として使用しているのだとか。

これまでミシンをさわったこと自体ないという桐山さん。人生初のミシンに挑戦です! まずは端切れを使って練習から……。

綺麗にまっすぐ縫えました!「漣さん、飲み込みがいいです」と北澤さんも驚きの顔。

初めてのミシンに「面白いなあ」と目をキラキラ輝かせる桐山さん。続いて、実物のベルトにもミシンをかけていきます。

そして最後に「焼き締め」を。ライターの火で糸を処理することで、ほつれを防ぎます。

さらに「縁(へり)落とし」と言って、直線状になっている裁断部分の縁を削ることで風合いを出します。あまり削りすぎないように、力の入れ具合が重要です。

まるでリンゴのかつら剥きみたいに、削った縁が1本の糸のようにつながりました!「上手〜」とスタッフからも拍手が。「集中した……!」と桐山さんも緊張から解き放たれたような表情に。

さらに磨き剤で磨きをかけると、まるで売り物のように艶のある仕上がりになりました。触り心地を確認して「全然違う!」と興奮する桐山さん。普段から店頭でもよく見ることの多い革製品ですが、手作業でつくろうとすると、こんなに手間がかかるんですね……!

いよいよ完成が近づいてきました。仕上げに向けて、ベースを通すための穴を開けます。

「目打ち」と呼ばれる道具を立てて、ハンマーで打ち抜きます。

すると、こんなふうに綺麗な穴が。

ハンマーを構えて真剣な表情。怪我しないように気をつけてくださいね。

ご覧の通り穴が3つ綺麗に並びました。

ベースの高さもバッチリです。

桐山さんのベース姿、とくとご堪能あれ!!

そして、いよいよ仕上げです。最後は、アクセントとしてスタッズをつけていきます。まずは位置を確認して……。

頭を悩ませたのが、スタッズの数。ストラップの幅的には3つのほうがゆとりがあります。が、「ベースは4弦だから、スタッズも4つのほうがいいな」とこだわりを見せる桐山さん。些細なところにもちゃんと意味合いを持たせるところに、桐山さんのクリエイター魂を感じます。

ということで、スタッズの数は4つに。位置をしっかり確かめ、マーキングをしたら、スタッズもハンマーで打ちつけていきます。

ハンマーを打つ瞬間は、思わずみんなが息を止める緊張感。終わった瞬間、桐山さんも「酸欠状態ですね」と苦笑いです。

ついに完成しました。こだわりの4つのスタッズが存在感を放っていますね。

ということで、早速装着。革ならではの味が感じられて素敵です。しかも自分の手づくりとなると余計に愛着が湧きますよね。桐山さんも「高さもちょうどいい」と大喜びです。

「ベース×桐山漣」のカッコよさよ……! いつか桐山さんのベースも聴かせてください!

撮影協力

Trunk by Kitazawa
〒158-0081 東京都世田谷区深沢4-15-9 ニューリバー深沢103号室
問い合わせ先:yu.kitazawa@icloud.com
www.trunkbykitazawa.com

Trunk by Kitazawaは日本で数少ないレイティエ(トランク職人)である北澤湧が、上質なトランクを顧客一人一人に合わせて仕立てるビスポークを中心に、唯一無二なレザーグッズを取り扱うブランドです。

エルメスの伝説的な初代調香師である、ジャンクロードエレナ氏の為に制作したという、花を飾るトランク。

ジャンクロードエレナ氏

桐山漣からMessage

このベースを買ったのは今から3〜4年前。「MUSIC MAN」というブランドなんですけど、「MUSIC MAN」では一般的に「StingRay」という形が有名なんですね。それに対して、僕が使っているのは「Big Al(ビックアル)」という「MUSIC MAN」では希少なタイプ。この形がカッコいいなと思って、決めました。もうほとんど市場には出回っていないもので、僕が購入したのもユーズドなんですけど、新古品のようないい状態で手に入ったのもラッキーでした。

基本的に、僕はみんなと同じが嫌。服も車もそうだけど、つい普通じゃないものに興味をそそられてしまうんですよね。モノ選びに対する尖った感覚は、10代の頃から変わらないです。

ベースは、大体月に1回くらいスタジオに入って練習して。あとは、家で時間があるときにも弾いています。面白いもので、お芝居をしているときの感覚とベースを弾いている感覚って似ているところもあれば全然違うところもあって。

共通しているのは、どちらもセッションであるとこと。お芝居は相手の芝居によって自分の芝居も変化する。ベースも、ドラムの感じを見ながら拍を合わせにいったりする。そういう相手との呼吸やコミュニケーションが大事なのは、どちらも同じだと思う。

逆に違うのは、言葉は悪いけど、お芝居はミスをしても調整がしやすいんです。たとえば、最初のほうのやりとりで自分のやろうと思ったことができなくても、相手とのやりとりを重ねながら、後半の方で帳尻を合わせていくみたいなことができる自由度があるのがお芝居の良さ。

でもベースは、特にリズム隊ということもあるけど、自分が間違えると曲にめちゃくちゃ影響する。ミスがわかりやすいんですね。だから、芝居をしているときとベースを弾いているときでは、使っている脳が全然違う。

台詞ってもちろん事前に覚えていくんだけど、カメラの前に立ったら自分の中では忘れる感覚なんです。そうでないと、鮮度の高いリアクションができないから。でも、ベースはその感覚がない。覚えたフレーズが体に刻み込まれている感じがする。言葉ではうまく説明できないけど、そういう違いがあって、僕はどっちも好きです。

使ってる脳が違うからこそ、芝居漬けの日々の中で不意にベースにふれると感覚が研ぎ澄まされるし、ベースをやったあとに芝居の世界に戻るとまた新鮮な感覚になれる。それが面白くて、両方ずっと続けているんだと思います。

レザークラフト体験の様子を動画でもお楽しみください♪

プロフィール

桐山漣(きりやま・れん)

2013年に韓国『ソウルドラマアワード2013』ネチズン人気賞(JAPAN俳優部門1位)受賞。
主な出演作は、映画『群青色の、とおり道』(佐々部清監督)『新宿スワンII』(園子温監督)『曇天に笑う』(本広克行監督)『貞子』(中田秀夫監督)をはじめ、ドラマ『俺のスカート、どこ行った?』(NTV)、『これは経費で落ちません!』『いいね!光源氏くん』『おじさんはカワイイものがお好き。』『カラフラブル~ジェンダーレス男子に愛されています。~』(読売テレビ/NTV系)キラ役でネットを騒がせる。以降、『白い濁流』(NHK-BS)、『おいハンサム!!』(CX)・『カナカナ』(NHK)CX『テッパチ!』など幅広い役を演じ分ける。

撮影/中原幸、動画撮影/宮園妙、取材・文/横川良明、企画・構成/藤坂美樹、ヘアメイク/関早矢香