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平辻哲也 発信する!映画館 ~シネコン・SNSの時代に~

『カメ止め』ブームの震源地、K's cinemaはインディーズ映画の聖地!

隔週連載

第2回

 2018年の興行界、最大の話題は『カメラを止めるな!』(上田慎一郎監督)だ。都内2館でスタートし、全国のシネコンまで "感染"公開し、興収30億円の大ヒット。略語「カメ止め」は流行語大賞にもノミネートされ、社会現象になった。その最初の上映館が、東京・新宿にある「K's cinema」(ケイズシネマ)。SNSでは「カメ止め本店」とも呼ばれる席数84のミニシアターは"インディーズ映画の聖地"となっている。

 K's cinemaは2004年3月6日、任侠映画専門の映画館だった「新宿昭和館」の跡地にオープン。「新宿駅」東口から徒歩約5分。複合ビル「SHOWAKAN-BLD.」の3階にある。経営者の頭文字が名前の由来。全席自由席。チケットのネット販売や自動券売機はなく、窓口で入場券を購入し、整理番号順に入場するという昔ながらのやり方だ。

 『カメ止め』は2017年11月、映画学校「ENBUゼミナール」が制作する「シネマプロジェクト第7弾」として、『きみはなにも悪くないよ』(※これも面白い作品です!)と合わせてレイトショー上映された。その全6回が満席となったことから、単独公開が決定。6月23日の初回から満席札止めとなり、8月16日まで「82回連続満席」という新記録を打ち立て、9月7日までロングラン。7月の月間興収は開館以来の最高となった。

『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督と出演者(7月6日撮影)

 「昨年11月に上映した時に、お客様がよく入ったこともありますし、面白かったので、1本でやったらいいんじゃないかと思ったんです。最初は1日3回上映で、3週間がいいところだろう、昼間にかけるのは少し冒険かと思っていました。それが蓋を開けてみたら、朝の10時開場の時点で、その日のチケットが完売したり、Tシャツの入荷が追いつかなかったり……。こんな経験はありません」

そう話すのは、K's cinema支配人、酒井正史さん(58)だ。大学在学中から大井武蔵野館でアルバイトし、「武蔵野興業」を経て、「昭和興業」に入社。K's cinemaには開館から勤務し、約7年前に支配人に就任した。

K's cinemaの酒井正史支配人

 『カメ止め』は7月14日から拡大公開。満席で入場できなかった客には「ユーロスペースでもやっていますよ」とライバル劇場を案内することもあった。「うちはネット予約ができないので、来ていただかないと、混雑状況が分かりません。わざわざ来ていただいて、『観られませんでした』では申し訳がないと思ったんです。それに、どんどん広がっていった方が面白いと思ったんです」

全国に拡大公開中の『カランコエの花』も

 公開が拡大したのは『カメ止め』だけではない。映画学校「ニューシネマワークショップ」の特集として上映された39分の短編『カランコエの花』(中川駿監督)も7月14日からの1日1回の1週間限定公開が評判を呼び、全国15館以上に広がった。地方のある高校で突然、LGBTの授業が行われたことから、クラスメイトの中にLGBTがいるのではないか、と生徒たちが騒ぎ出す……というストーリー。LGBTの問題を当事者ではなく、周囲の視点から描いたのが秀逸と評価され、国内映画祭で13冠を獲得。さらにSNSでの評判が追い風になった。

K's cinemaの場内。座席数の割にスクリーンも大きく、音響も評判がいい

 K's cinemaがインディーズ映画をかけるようになったのは7、8年前。「いわゆるミニシアター作品がだんだん厳しくなっていく中、84席というキャパシティでできることはないかと考え、インディーズをレイトショーでかけたのが始まりです。今は映画を作る学校なども増えていますし、限定上映だと、監督さんが積極的に舞台挨拶をしてくれたり、『満席だったよ』といったSNSでの発信はいい宣伝にもなります」と話す。

「東京ドキュメンタリー映画祭2018」(12月1日ー14日)といった企画・特集上映も多い。「昼間の4、5回を1作品でやるのが難しいという事情もあります。特集上映だと1人の方が期間中、3回くらいお見えになるんです。入り口を狭くして複数回が来ていただく方法がよいのかな、と。そういうやりかたはシネコンではできませんからね」と酒井支配人。

シネコンの巨人「TOHOシネマズ」まで動かした「カメ止め本店新宿ケイズシネマ」。そのラインナップには今後も目が離せない!

K's cinema 劇場フロア

映画館データ

K's cinema
住所:住所:東京都新宿区新宿3丁目35-13 SHOWAKAN-BLD.3F
電話番号:03-3352-2471
公式サイト:K's cinema