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LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!

私の推し、奥野瑛太さんは本当にいろいろな役を幅広くできる役者さん『死体の人』

月2回連載

第109回

家族に対して、生き方に対して、どう向き合っているかを考えさせられると思います

今回は2作品、日本映画を紹介します。まず、公開が始まったばかりの『死体の人』です。

一流の役者を目指して頑張っている吉田は、後輩俳優たちが要領よくテレビで活躍しているのを横目に、死体役ばかりを演じています。そんな彼は、いつしか死体役をうまく演じるための探求をしていくように。

ある日、彼が自宅に招いたデルヘル嬢の加奈との出逢いをきっかけに、生と死について考えさせられる事件が……。家族とは離れて生活している人は多いと思いますが、そういう方ほどご覧になっていただきたい静かな感動作です。

『死体の人』

実は主演の奥野瑛太さんは、私の推しでして。これまでの主だった作品では、脇役として活躍してきた彼が、今回は主演です。『37セカンズ』(20)のときの存在感がすごかったので、そこから推しだったんですよ。

『ラーゲリより愛を込めて』の撮影にお邪魔して松坂桃李さんとしゃべっていたときに、私の大好きな『空白』(21)の話になったんですが、そういえば奥野さんは『ラーゲリ…』にも出ているし、『空白』にも出てるよね、と気づきまして。私が好きな映画にはたいがい出演されてるんですよ。

『死体の人』

多くの作品に出演されている奥野さんだから、こういう偶然の一致も珍しいことではないんでしょうけど、なにかご縁を感じてしまったんですよね。そんなときに来た最新作は、まさかの主演、しかも死体を演じる俳優役! これは期待せざるを得ませんでした。

『死体の人』

この作品での奥野さんは、『ラーゲリ…』とも『空白』とも全然違う印象で、本当にいろいろな役を幅広くできる役者さんなんだ、と感じました。死体役しか回ってこないけど、周りがどんどんと有名になっていって焦ってもがいている吉田は、最初はそれほど感情移入できる人物ではありません。自分らしく生きることがあまり得意ではないんですよね。

でも、そんな彼があることをきっかけに家族と向き合わざるを得なくなる。ここから、奥野さんの芝居の本領発揮。家族に対して、生き方に対して、どう向き合っているかを考えさせられると思います。他の同業の俳優さんたちが絶賛する役者、奥野さんの主演作、お見逃しなく。

『死体の人』

私の推し、尚玄さんとMEGUMIさんはじめ俳優たちの芝居に注目を!

さて、もうひと作品も私の推しが出ている作品。『赦し』です。

高校生だった娘の恵未を同級生の夏奈に殺されて以来、酒浸りで現実逃避をしてきた恵未の父・克のもとに裁判所からの通知が届きます。

『赦し』

それは、懲役20年の刑に服している娘を殺した犯人・夏奈に再審の機会が与えられたというもの。克は元妻の澄子とともに法廷に出向き、夏奈の釈放を阻止するために証言台に立ちます。

『赦し』

ところが、澄子はもう過去に見切りをつけたいと考えており、彼らの間にも不和が。やがて法廷では、夏奈が殺人に至った動機が明かされ……。少年犯罪を題材に、被害者遺族の元夫婦と加害者、三者の葛藤を描くヒューマンドラマです。

克を演じた尚玄さん、澄子を演じたMEGUMIさん、おふたり共、私の推し! 尚玄さんはフィリピン映画の『義足のボクサー GENSAN PUNCH』など昨年は大活躍でしたが、私にとっては『ニワトリ★スター』で共演してからの仲。

『赦し』

また、MEGUMIさんはWOWOWの『連続ドラマW それを愛とまちがえるから』で共演してからの仲。ほんっとすごい器用で芝居の上手な役者だけど、ちょっと珍しいタイプの役者でもあると尊敬しています。

尚玄さんはどこか“インディペンデント系の人”というイメージがついているような気がしていたんですが、この作品の芝居で一気に印象が変わるかもしれません。それほどにドラマチックな役なんです。

彼が演じた克は、犯人の夏奈の言い分を聞いてもなお、亡くなった娘のことを信じ続けていて、ある行動に出てしまいますが、これを観ていると「親は子供のことを全部知ってるんです」という親の身勝手を思い知らされますね……。

『赦し』

また、MEGUMIさんは、娘を殺されたつらい思いがありつつも、自分にとっても過去は過去としてけじめをつけたいと願う母親役を、すごく繊細に演じられています。

あ、それと藤森慎吾さんも出演してますが、彼は役者としても素晴らしいんですよ。とはいえ、一番びっくりさせられたのは、夏奈役の松浦りょうさん。彼女の表情にはもっともドキッとさせられました。ぜひ、彼らの芝居に注目を。

『赦し』

(C)2022オフィスクレッシェンド
(C)2022 December Production Committee. All rights reserved

取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が、2019年9月に講談社より発売中。