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LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!

『007』『キングスマン』シリーズを生み出した国だからこそのスパイ映画の面白さが炸裂『ARGYLLE/アーガイル』

月2回連載

第134回

ヘンリー・カヴィルのイメージを覆すルックスと芝居に注目してください

今回は大作、懐かしくキュートな作品の再映、そして大人に楽しんでもらいたい小品を紹介します。まずは公開中の『ARGYLLE/アーガイル』。『キングスマン』シリーズでおなじみのマシュー・ヴォーン監督の最新作です。

スパイ組織の正体を探っているエージェントを主人公としたベストセラー小説『アーガイル』。その作者のエリーは、著作のイメージとは真逆で、猫とのんびり暮らす平和主義者です。そんな彼女が新作の準備を進めているさなか、列車の中で謎の男たちに命を狙われる事態に。

『ARGYLLE/アーガイル』

窮地を救ってくれたのは、エイダンと名乗るスパイでした。実はエリーが書いていた小説が偶然にも実在していたスパイ組織の行動を見事に言い当ててしまっていたため、彼女がターゲットに。空想で書いていたはずの世界と現実世界の間で、エリーは彼女の敵となるスパイ組織の裏をかいて世界を駆け巡る羽目に……。

『ARGYLLE/アーガイル』

トンデモ設定のスパイアクション映画ですが、これが本当に楽しい! 最初、「あれ? 想像していた話と違う」って思うかもしれませんが、そこはさすがのヴォーン監督と英国設定。『007』シリーズや『キングスマン』シリーズを生み出した国だからこそのスパイ映画の面白さが炸裂ですし、監督のお家芸でもあるユーモアたっぷりの脚本で、アクション映画があまり得意ではないという人にも楽しんでもらえる作りになっています。

『ARGYLLE/アーガイル』

特に驚かされたのは小説の主人公アーガイルを演じたヘンリー・カヴィル。途中まで彼だと全く気づけなかった(笑)。これまでの彼のイメージを覆すルックスと芝居に注目してください。

『ARGYLLE/アーガイル』

子どもと大人が向き合う余裕と意識を育てていただくために絶好の映画

さて、次は『ロッタちゃんと赤いじてんしゃ〈2Kリマスター版〉』と『ロッタちゃん はじめてのおつかい〈2Kリマスター版〉』の2作。1992~93年製作のスウェーデン映画が、リマスター版で再上陸しました。これはスウェーデンでは知らない人がいない作家アストリッド・リンドグレーンによる『ロッタちゃん』シリーズという児童文学が原作。5歳のロッタちゃんと彼女の相棒でブタのぬいぐるみ・バムセを主人公にしたほっこりヒューマンドラマです。

日本では2000年に2作公開され、超ロングランヒットをしたんですが、もう24年も経ってる……(笑)。知らない人が多くなって当然。90年代~00年代はじめにかけて日本でおきたミニシアターブームで大ヒットした傑作がいくつもありますが、『ロッタちゃん』シリーズはその中のひとつ。そのムーブメントのすごさはもちろんですが、そのときにヒットした作品がどれだけ素晴らしい作品かを、当時よりもいい映像と音響で楽しむことができる機会です。

『ロッタちゃんと赤いじてんしゃ〈2Kリマスター版〉』

このシリーズはスウェーデン育ちの私にとっては特別なものですが、描かれていることはすごく普遍的なんですよ。テーマは“子育て”“子の自立”。ロッタちゃんはとてもわがままですが、彼女を叱ってしつけるのではなく、本人の考えを尊重してのびやかに育てることで芽生える自立心を描いているんですね。

『ロッタちゃん はじめてのおつかい〈2Kリマスター版〉』

これって、ここ日本で子育てをして悩んでいるお父さんお母さんたちには絶対に知っていただきたいこと。たしかに北欧と日本では環境や社会が違いますが、子どもが幸せになってほしい、という思いは一緒ですよね。きちんと子どもと大人が向き合う余裕と意識を育てていただくために絶好の映画だと思いますよ。

『ロッタちゃん はじめてのおつかい〈2Kリマスター版〉』

子育てしていない人にも注目していただきたいのは、北欧の田舎町の風景や人の温かさ。久しぶりに観て、あー早く行きたい帰りたい!って思っちゃいました。みなさんもこれを観て、スウェーデンに遊びにいらしてね。

ぜひとも好きな人と観に行って!

さて、最後にもうひとつ。『アバウト・ライフ 幸せの選択肢』は、大人のためのロマンティック・コメディです。なんと95分とコンパクト!

結婚に積極的なミシェルと、消極的な彼氏のアレンは、親から結婚とはなんぞやということを学ぶために両家の顔合わせを計画。ところが、ミシェルの父とアレンの母、アレンの父とミシェルの母はなんと不倫関係。これから結婚を控えた若いカップルを前に、とんでもない騒動が巻き起こります。

『アバウト・ライフ 幸せの選択肢』

キャストはビッグスターのオンパレード! ミシェルの母グレースを演じているのは、ダイアン・キートン。彼女のことが大好きでこの作品を観ました(笑)。彼女が出演する作品は『また、あなたとブッククラブで』など、いつも「年齢は関係ないんだよ」と教えてくれるものばかりで、いつもパワーをもらっています。

『アバウト・ライフ 幸せの選択肢』

また、ミシェルの父ハワードを演じたリチャード・ギアも素敵。みなさん大好きですよね。でも、私が観た中で、今回の彼が一番イイ! 中盤、全員集合するシーンでの彼の驚いた表情は、100回見ても笑えます。

『アバウト・ライフ 幸せの選択肢』

最初からドタバタと思いきや、かなり丁寧にキャラクターを描いていて、それが途中からのドタバタとの緩急につながる構成。なにせ登場人物の関係図がお見事! 大人の恋愛にはさまざまなパターンがあることを再確認できますよ。

ぜひとも好きな人と観に行ってね。きっと、観終わったら美味しいワインが飲みたくなるから、そちらのご用意も。






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(C)2023. FIFTH SEASON, LLC. All Rights Reserved.

取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が、2019年9月に講談社より発売中。