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LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!

『異人たち』を観て、声が出なくなるほど本気で大泣きしてしまいました

月2回連載

第136回

LiLiCo 撮影:源賀津己

これを観ないと、人生大損ですよ

今回は公開が始まったばかりの洋画を2つ紹介します。どちらもほっとくと埋もれてしまいそう!ということで、まず1作目は声が出なくなるほど泣いてしまった『異人たち』。山田太一さん原作で、後に大林宣彦監督が映画化した『異人たちとの夏』をイギリスでリメイクした作品です。

12歳のときに交通事故で両親を失い、それ以降、他人に心を開くことなく生きてきた40歳のアダム。彼はドラマの脚本家として、ロンドンのタワーマンションでひとり暮らしをしています。そんな彼が、両親との思い出を基にした作品に取り組み始めたとき、同じマンションに住む青年ハリーと出会います。めったに心を開くことのないアダムですが、ハリーには特別な感情が芽生えます。

『異人たち』

そんな中、執筆のため、アダムは幼少期に暮らしていた郊外の家を訪れますが、そこにはなぜか他界したはずの両親が、亡くなったときの姿のままで暮らしていました。共に過ごせなかった時を埋めるかのように、彼はその家に通いつめるのですが……。

『異人たち』

この作品は、観る人によって抱く感情が全く異なるだろうと思います。私にとっては、「2024年のベスト3以内にランクイン確実!」というくらいに泣きました。というのも、アダムと同じく、近しい人を失った経験がある人だったら分かっていただけるはず。アダムは亡き両親との奇跡の再会で、人が変わったかのように心がほぐれていきます。それは、亡くした人に伝えきれなかったことがある人なら共鳴しあえると思うんです。

『異人たち』

実は私もスウェーデンに帰ったときに、子どもの頃に住んでいた家に敢えて訪れたことがあります。昔の思い出には、良いことも悪いこともありますが、それを思い出すのは一瞬のこと。むしろ何も感じられなくなったんですよね。それって、もう過去にとらわれず、次の一歩を踏み出すときだ、というサインだと思うんですよ。

『異人たち』

アダムもきっとそう。人生における次の一歩を踏み出すためのプロセスとして、両親の幽霊に出会い、心のしこりを解決していくんです。いやー、こんなに自分ごとに考えてしまう作品に出会うとは思わず、本気で大泣きしてしまいました。

オリジナル版(原作と大林監督作)と違うのは国だけでなく、主人公のセクシュアリティもです。ですが、これをゲイの映画だと決めつけるのはナンセンス。たしかに恋愛のパートはありますが、人として人を好きになる、という話ですから、ジェンダーもセクシュアリティも関係ありませんし、むしろ今作の方が主人公の孤独が強調されているんですよ。

『異人たち』

なので、オリジナル版をお好きな方はもちろんですが、オリジナル版を知らなかった方にもぜひご覧いただきたいです。これを観ないと、人生大損ですよ。

もはや説明なんていらない、観てもらえば大爆笑確実です

さて、もうひとつは、『キラー・ナマケモノ』。タイトルからしてお察しだとは思いますが、おバカな笑いをお約束するパニックホラーです。

パナマのジャングルで捕獲されたナマケモノが、アメリカに密輸されます。そのナマケモノを怪しい業者から買い取ったのは、なぜか女子大生のエミリー。彼女は地味な学生寮生活を送っており、陽キャの寮生たちがSNSでかわいい写真を投稿してはバズっているのを見て焦っていました。

 『キラー・ナマケモノ』

そこで、彼女はSNSの「イイね!」を大量獲得できるかわいいペットを飼うことにしたのです。ところが、そのナマケモノは、実は殺人ナマケモノ。ペット業者を惨殺し、何食わぬ顔してエミリーのペットになり、学生寮のマスコットとなるのですが……。

『キラー・ナマケモノ』

もはや説明なんていらない、観てもらえば大爆笑確実のパニックホラー。だって、ナマケモノが暮らしていたジャングルでのシーンで、ワニよりも強いってことが分かっちゃうんですから(笑)。

 『キラー・ナマケモノ』

実はこのナマケモノ、CGじゃありません。アニマトロニクスのパペットで、異様なまでにリアル。なので、SNSの映えしか考えていない女子大生たちが群がるのも超納得。ちなみにバズるためには、かわいい動物と一緒に自撮りするのがいいそうですよ(笑)。

 『キラー・ナマケモノ』

映えだけを考えて写真をSNSにアップする風潮は、私はあまり賛同しがたいんですが、エミリーをはじめとする若い人たちがハマる理由は分かります。ただ、後先考えようよ……とは言いたい。その場のマウントの取りあいのためだけに、一生残るインターネットを軽く使うのはいかがなものかしら、というところも考えさせられます。

 『キラー・ナマケモノ』

『キラー・カブトガニ』や『ゾンビーバー』など、タイトルが秀逸なこのテの作品、以前もありましたよね。こういうくだらなさ、最高じゃないですか。学生がやることを笑って見ていられる大人の皆さん、ぜひともお酒を片手に爆笑して!






(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
(C)2023 Slotherhouse TM All rights reserved

取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が、2019年9月に講談社より発売中。