LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!
もう衝撃の連続です『ジョン・レノン 失われた週末』
月2回連載
第137回
エンドロールまで面白い仕掛けがされているので、ぜひ最後まで席を立たないで!
みなさん、GWは楽しめましたか? 5月後半は話題作が多いだけに、埋もれそうな作品の山なんです。なので、今回も2作品紹介します。まずは公開されたばかりの『ジョン・レノン 失われた週末』。ご存知ジョン・レノンのドキュメンタリー……ですが、ちょっと変わった視点から描かれています。
ジョン・レノンとオノ・ヨーコには、実はメイ・パンという中国系アメリカ人の個人秘書兼プロダクション・アシスタントがいました。1971年から公私のお世話をしていた、ふたりのことを最もよく知る人物です。
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そんな彼女本人の証言をもとにしたドキュメンタリー。ジョンとヨーコが敢えての別居をしていた時期“失われた週末”があったのをご存知ですか? その時期、ジョンがどこで誰と何をしていたのか。そこに切り込んでいます。
これが本当にすごい! というか、やばい! メイ・パン自身が写真を趣味としていたおかげで、大量の貴重なプライベート写真が出てくるわ、“失われた週末”の裏側は出てくるわ、ヨーコから言われた突拍子もないことには度肝を抜かれるわ。もう衝撃の連続。それを、ジョンの名曲の数々やアーカイブ映像、それにアニメーションを交えながら描き出します。
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特にすごかったのが、ジョンとヨーコの関係が危機的状況に陥ったときの話。それが、ジョンの名盤『心の壁、愛の橋』の製作にもつながる“失われた週末”のはじまりだったんですが、ヨーコから言われたことが強烈。「あなた、ボーイフレンドいないわよね? だったらジョンと付き合ってよ」。それ、言います?(笑) もちろんメイ・パンは「え! 彼は雇い主であなたの夫ですよ。そんなことできません!」と突っぱねるんですけど……ねぇ。
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ふたりの強烈な個性の間に挟まれたメイ・パンが、どのようなプロデュース力を発揮するか、観てからのお楽しみ。エンドロールまで面白い仕掛けがされているので、ぜひ最後まで席を立たないでくださいね。
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結局どっちだったの? という終わり方で、観客自身に委ねられている作品
もう一作は5月17日から公開される『ありふれた教室』。今年のアカデミー賞で国際長編映画賞の候補になったドイツ映画です。
正義感の強い若手教師のカーラは、赴任した中学校の1年生のクラスの担任になり、その熱意から生徒はもちろん同僚の先生たちの信頼も獲得します。
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ところが、ある日を境に、校内で盗難事件が相次ぎ、カーラのクラスの生徒に嫌疑がかけられます。校長をはじめ、犯人探しに躍起な教員室の面々とは別に、彼女は独自に犯人探しを開始。すると、職員室の防犯カメラの映像に、盗みの瞬間を見つけます。
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これで一件落着! と思いきや、ここからがひどい。保護者や生徒から猛反発を受け、同僚の先生たちとも対立し、孤立無援状態に……。サスペンスでもありスリラーでもあり、ミステリーの要素もある力作です。
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学校って小さな社会のようですが、そう考えるとここで描かれていることは今の世の中そのまんま。責任逃れやなすりつけあい、猛批判に蔑み。もう本当にひどいのなんの。だけど、こういったことって、あちこちで起きてることですよね?
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しかも、エンディングが……分からない! 今年のアカデミー賞では脚本賞を獲得した『落下の解剖学』も話題になりましたが、あれもそうでしたよね。最後の最後まで観ても、結局どっちだったの?という終わり方で、観客自身に委ねられている作品。
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この作品もそのタイプで本当に見事ですし、考えさせられることで今の社会の問題にも目を向けるきっかけになると思います。ヒントを出すとしたら……邦題は絶妙。真をついているし、観た人がタイトルを反芻すれば「なるほど!」と思っていただけると思いますよ。
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取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己
プロフィール
LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。
夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が、2019年9月に講談社より発売中。
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『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』
講談社 1400円(税別)
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