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LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!

何事も自分ごとと思って行動することが大切と再認識しました『渇愛の果て、』

月2回連載

第138回

お近くの劇場でタイトルを見つけたら即ご覧ください!

5月もそろそろ終盤。話題作が次々と公開されていますが、そんな中だからこそ埋もれそうな2作品をピックアップしました。まずは現在東京・新宿のK'sシネマで5月24日まで上映中、6月から大阪で公開が始まる『渇愛の果て、』。

劇団「野生児童」を主宰する有田あんさんが、自身の劇団の配信演劇で発表した同名戯曲を、クラウドファンディングで映画化した作品です。

高校時代からの親友たちと「将来は絶対に子どもがほしい!」と言っていた眞希は、いわば世間一般で言われる“当たり前の幸せ”こそが最高だと思っている女性。やがて彼女は結婚し、妊娠。やさしい夫のサポートで順調な生活を送っていました。

『渇愛の果て、』

これで夢が叶う、と思っていた出産予定日直前、体調が悪化し緊急入院。赤ちゃんの安否が心配されましたが、とりあえずは無事でホッとしたところ、産まれてきた子は難病を患っていました。その事実を受け入れる余裕がまったくなかった彼女は、親友たちにはそのことを打ち明けられず、一方の親友たちは彼女の出産記念パーティを計画……。と、ストーリーを象徴する絶妙なタイトルの問題作。

『渇愛の果て、』

子の親になりたい夫婦や、それを目指す方々はたくさんいらっしゃると思いますが、理想や夢だけで追い求めていませんか? また、みなさん軽く使っている“普通の幸せ”って言葉の意味はどう捉えていますか? ほんと、この映画で描かれることはマジで一番のリアルだと思います。 妊活していることってなかなか言いにくいことだと思いますし、それについての味方が周りにいないことも多いと思います。眞希のように何かしらの障がいを抱えて生まれた子のことをオープンにするかしないか、ということについても打ち明けにくい、と感じている人は多いのではないでしょうか?

『渇愛の果て、』

いや、確かに難しいかもしれませんが、ここで大事なのは“普通の幸せ”を追いすぎている価値観と、他人ごとを自分ごととして捉えるか否か。同じような思いをしている人は多いんだから、その人の気持ちに立って、まずは考えてみましょうよ、ということをこの映画を観て気づいていただきたいんです。

『渇愛の果て、』

とかく日本ではパーソナルな物事を隠し過ぎて、逆に社会生活が苦しくなることが多い気がします。生きづらい社会を作っているのは自分。正直に、素直に、そして誰かの手を借りることや、何事も自分ごとと思って行動することによって、やさしい社会になるんじゃないか。この映画で再確認しました。公開規模が非常に小さい作品なので、お近くの劇場でタイトルを見つけたら即ご覧くださいね。

今回も抜群に面白いし、高齢化社会の日本だからこそみんなに観てもらいたい

さて、もう1作品は『お終活 再春!人生ラプソディ』。2021年に公開された『お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方』の第2弾です。

金婚式を無事迎えたシニア夫婦の千賀子と真一、ひとり娘の亜矢から成る3人家族の大原家。亜矢の結婚も決まり、大原家には幸せな空気が流れていました。千賀子は昔とった杵柄のコーラスのレッスンを再開し、ステージに立つことも決まりかけていたそんなある日、真一に認知症の疑いが発覚。千賀子のステージ、真一の認知症、トラブル続きの大原家はどうなるのか!?

『お終活 再春!人生ラプソディ』

前作が想像していた以上に面白かったことをあちこちで紹介しましたが、言ってみるもんですね。まさかの私も出演させていただいております(笑)。

私が演じたのは、高畑淳子さん演じる千賀子のコーラス仲間のひとり、理佳子。藤吉久美子さんが演じた咲江と増子倭文江さんが演じた信子とともに、千賀子のコーラスパートのシーンに出ています。びっくりしたのは、まさかの本当に歌うとは……という歌唱シーン。高畑さんも含め、みんな本当に歌ってるんですよ!(笑)

『お終活 再春!人生ラプソディ』

さて、作品の話。今回も抜群に面白いし、高齢化社会の日本だからこそみんなに観てもらいたいコメディに仕上がってます。日本の今のシニア夫婦の典型中の典型だろう、という夫婦が大原家だとすると、こういう問題は当たり前にあるんだろうな……とも思いますし、なにはともあれ“男”はいざというときに頼りない存在、ということをまざまざと映し出すんですよ。

『お終活 再春!人生ラプソディ』

橋爪功さんが演じた真一は、おそらくあの世代の平均的な夫像だし男性像だと思うんですが、とにかく頑固で上から目線。人の気持ちに立つことがほぼないことで、どれだけ損しているか、お分かりになるかと思いますよ。

『お終活 再春!人生ラプソディ』

あ、前作は観ていなくても大丈夫(この作品を観た後ででもチェックしてね)。安心して楽しんでくださいね。






(C)野生児童
(C)2024「お終活 再春!」製作委員会

取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が、2019年9月に講談社より発売中。

『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』

講談社 1400円(税別)
発売中