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LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!

この作品で人生を楽しく生きるヒントを受け取って!『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』

月2回連載

第139回

“後悔がない人生”とは何か、観た人自身が今何をすべきか考えさせられるはずです

大作が続々公開される予定になっている6月。早く観ないと終わっちゃうよ!という良作を今回も2作紹介します。まずは『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』。イギリスのベストセラー小説『ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅』という小説を基にした感動ロードムービーです。

定年退職をして妻と穏やかなリタイア生活を送っていたハロルド・フライ。そんな彼に1通の手紙が届きます。手紙の主は元同僚の女性クイーニー。彼女とハロルドはビール工場で一緒に働いた仲ですが、イギリスの北の果てにいるという彼女の命はもうすぐ尽きてしまう、とありました。

『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』

すぐにでも返事を出そうとするハロルドでしたが、手紙を出そうと家を出てすぐに気持ちを変えます。なんと彼は800キロも離れたクイーニーのいるホスピスまで歩いて行くことを決意。実はハロルド、クイーニーにどうしても会って伝えなければならないことがあったんです。

そこで、彼は彼女が暮らすホスピスに電話をし、「私が歩く限りは生き続けてくれ」と伝言を残し、手ぶらのまま歩き始めてしまいます。はたしてこの旅、どうなるのか。また、ハロルドが伝えたいこととは……?

『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』

奇妙な設定ではありますが、とても心が穏やかに、幸せになる作品。私が最近よく引き受けているトークの仕事に「どうすればハッピーになれますか?」というテーマのものが多いんですよね。もともと映画を紹介する仕事は、映画からいいメッセージを受け取って、それを皆さんにも感じていただき、人生を楽しく生きるヒントにしてもらいたいから。その点でこの作品はベストマッチなんですよ。

死を扱った映画でもあるんですが、それは翻ると「自分の人生をどう生きるか」ってこと。とかく日本の人は自分の人生なのに多くを犠牲にする方がいるので、この作品を観ると受け取れることが多いんじゃないかな。

『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』

ハロルドとクイーニーの関係や、ハロルドと妻、そしてフライ家のことなど、中盤くらいの展開は観てからのお楽しみ。ネタバレ厳禁になってしまうので多くを語れませんが、ハロルドの旅はひとりじゃないことだけヒント。ハロルドの徒歩旅は、メディアで話題になり、『フォレスト・ガンプ/一期一会』のように一緒に歩く若者が大勢現れるんですね。

『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』

彼らがなぜ一緒に歩いているかというと、彼ら自身が変わりたい欲求を抱えているから。そして当のハロルドもクイーニーに伝えることで、残りの人生を変えようとしています。

この作品を観たら“後悔がない人生”とは何か、そして、なんとなくやり過ごしてしまって残った心のコリに対して、感謝と謝罪ができるのか。観た人自身が今何をすべきか考えさせられるはずです。

『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』

環境問題に関心がなかった大人にとって、ちょうどいい教科書になると思います

もう1作は6月1日から都内1館でスタートしたドキュメンタリー。『アニマル ぼくたちと動物のこと』です。

16歳のベラとヴィプランは、動物保護と気候変動問題を意識して活動するティーンエイジャー。彼らの世代は、自分たちの未来が、今を仕切る大人たちによって危機にさらされていると感じています。そんな彼らが知ってしまった大問題。それが“種の絶滅”。

『アニマル ぼくたちと動物のこと』

実は過去40年間に絶滅した脊椎動物や昆虫がものすごい膨大な数で、科学者たちの間では「6度目の大量絶滅」と呼んでいるほど。このままでは人類も残れないのでは?と考えたふたりは、映画監督で環境活動家のシリル・ディオン(本作の監督)と手を組み、世界中の環境問題について学ぶ旅に出ます。

ふたりの目的は今ある問題を知ること、そしてよりよい未来のための解決策を見つけること。彼らが抱く危機感と現状を描くドキュメンタリーです。

『アニマル ぼくたちと動物のこと』

ゴミだらけになっているムンバイや、海のゴミの今など、本当に衝撃的。プラスチックごみがどのように環境に悪影響を与えているか、ということは、今や誰でもご存知だとは思いますが、ここでちょっと考えてみて。メディアで大きく取り扱われているときだけその問題に目を向け、ちょっとそれが収まったら忘れちゃってません? 

『アニマル ぼくたちと動物のこと』

例えばストローがプラスチックから紙になったときや、ショッピングバッグが有料化したとき。それが当たり前になってしまうと、途端にその根幹にある問題がピンボケしてしまうんですよね。そもそもプラスチックごみを出して捨てているのは誰?ってことを今一度考えなければいけませんし“6度目の大量絶滅”に人類も入るかもしれないことを知るべき。

『アニマル ぼくたちと動物のこと』

グレタ・トゥーンベリさんをはじめ、今のティーンエイジャーが持つ環境問題への意識の高さは素晴らしいですよね。この問題を考えないといけないのは、当然彼らだけでなく、世の中を動かしている大人たちも、なんですが、なぜか進まない。というか、知ろうとしない人が多すぎるように思います。

この作品は、キッズでも大人でもない、ハイティーンのふたりの目を通した環境問題の今が描かれているので、むしろこれまで関心がなかった大人にとってはちょうどいい教科書になると思います。




(C)CAPA Studio, Bright Bright Bright, UGC Images, Orange Studio, France 2, sCinNa 2021

(C)Pilgrimage Films Limited and The British Film Institute 2022

取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が、2019年9月に講談社より発売中。

『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』

講談社 1400円(税別)
発売中