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LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!

エリザベス・モスのお芝居を目当てに観たんですが、ハマる心理サスペンスでした 『Shirley シャーリイ』

月2回連載

第142回

彼女を知らなかったという方は、この作品からでもいいのでチェックしてみてください

そろそろ夏らしい話題の大作が公開される時期ですが、そんな中だからこそ埋もれてほしくない作品を2作品紹介します。まずは『Shirley シャーリイ』。

実在した作家の伝記を基にした心理サスペンスです。1948年に短編小説『くじ』で大ブレイクした作家のシャーリイ・ジャクスン。彼女はある大学生の行方不明事件を題材に、新作の長編の準備に取りかかっていました。ところがスランプで仕事は進まず、大学教授の夫からはけしかけられるばかりで、どんどんと引きこもってしまうように。

『Shirley シャーリイ』

そこで、夫は若い夫婦、フレッドとローズを居候として住まわせて、家事やシャーリイの世話を任せることにします。赤の他人を自宅に住まわせることを嫌がっていたシャーリイですが、献身的に務めてくれるローズを見ているうちに、執筆活動のヒントを得るように。一方のローズはシャーリイのカリスマ性に惹かれていきます。

『Shirley シャーリイ』

シャーリイ役のエリザベス・モスは、人気ドラマ『マッドメン』の頃から大好きで、彼女のお芝居を目当てに観たんですが、ハマる心理サスペンスでした。なんせ彼女が演じているシャーリイが、イヤミばっかりの女性でキャラ強め。こういうクセツヨな役がハマるんですよね、彼女って。大好きな『マッドメン』もそうだし、『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』での彼女なんて強烈。

『Shirley シャーリイ』

時代ものもファンタジーも、そして現代の女性の役もサラッとできて、パブリックイメージと全く違う役でハマる。こういう方を見ると、本当にすごい芝居が上手なことを思い知らされますよね。日本で言ったら誰かな……松岡茉優さんとか? 彼女を知らなかったという方は、この作品からでもいいのでチェックしてみてください。

自分の人生を生きることができないと思っている方は考えさせられると思います

もう1作品は日本映画。橋口亮輔監督の9年ぶりの長編映画『お母さんが一緒』です。これは元々CSホームドラマチャンネルで制作されたドラマシリーズがあって、それを劇場用に再編集したバージョンになります。

母親の親孝行のために温泉旅行を計画した三姉妹、長女・弥生、次女・愛美、そして三女の清美。弥生はルックスで評判だった妹たちに嫉妬心を抱いていて、愛美は弥生が優等生だったことで比べられていたことにコンプレックス。清美はそんな姉たちを見て育ちました。

『お母さんが一緒』

3人の共通の思いは、「母親のような人生を送りたくない」というもの。とはいえ、親孝行のための旅行だからそこを抑えて……と思っていたところ、あるきっかけで愚痴が炸裂。お互いを罵り合う修羅場になってしまいます。そんなときに、サプライズで清美が呼んだボーイフレンドが現れ……。ものすごいテンポの良いホームドラマです。

私、愛美役の内田慈さんに注目をしていて。大塚千弘さんとのダブル主演作だった『レディ・トゥ・レディ』から気になっている俳優です。彼女って身近にいそうな人の役を見事に演じるんですよね。その点で、愛美はハマり役。心の内に秘めたコンプレックスをおさえつけ、普通に振る舞おうとする芝居は最高です。

『お母さんが一緒』

それだけでなく、この三姉妹のキャスティングは素晴らしい。弥生役の江口のりこさん、清美役の古川琴音さん、そして内田さんの三つ巴は、そうそう見ることができないタッグ。なにせ全員芝居が達者なんですから。三姉妹のバックグラウンドがそれとなく見えるような脚本を、見事に芝居の力で表現しているんです。

『お母さんが一緒』

それに、このストーリーも見事。お母さんの言うことを聞こうとして人生を犠牲にしてしまったと思っている子のあり方。これ、ものすごい日本人っぽいんですよね。結婚して孫の顔を親に見せるのが子の務め、のような考え方を持っている人がいることは理解できますが、そこに縛られる必要はないですよね。私は自分が自分らしく生きることこそが人生だし、親の期待に応えることが人生の全てというのは違うかな、と思っています。

『お母さんが一緒』

この作品の中では、壮絶な姉妹ケンカが始まってからその問題について考えさせられますが、そこで共感するか、私と同じように「もっとラクに生きればいいのに」と思うか。そこで考え方の差が見えると思いますよ。面白い展開だったのは、清美のボーイフレンドが現れてから。彼女、一番のちゃっかり者ですよ(笑)。

家族やきょうだいって愛おしいものではあるけど、ときに厄介。いずれにしても、自分の人生を生きることの大切さ、それができないと思っている方は何が邪魔をしているのか、考えさせられると思います。






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(C)2024松竹ブロードキャスティング

取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が講談社より発売中。

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