ここまでやってのけたニコール・キッドマンには拍手を送りたい！『ベイビーガール』

一見完璧なニコール・キッドマンがロミーを演じるからこそ生まれたリアルだと思います

3月ももうすぐ終わり。春の映画も埋もれてほしくない必見作が続々公開されています。まずは『ベイビーガール』。ニコール・キッドマン主演の官能的なスリラーです。

ニューヨークで仕事を大成功させ、家族との円満な生活を送るロミー。彼女の職場に、インターンの美青年サミュエルがやってきます。どこか危ない雰囲気を携えた彼から目が離せなくなるロミーですが、サミュエルもまたそんなロミーの下心を見抜いて挑発を始めます。

駆け引きは続き、これ以上は……となったロミーは、サミュエルを止めに入りますが、逆に主導権を奪われてしまい……。やばいです。エロい。ニコール・キッドマンってオスカーを持っているけど、こういう体当たりの役はほとんどやってこなかっただけに意外でした。大スターの彼女が挑んだ危険な賭けでもあると思います。

ロミーは仕事と家族への責任を抱えつつも、欲望には負けてしまい壊れていきますが、ぶっちゃけ、こういう人って少なくないと思うんですよ。しかも、人には言いにくい欲求であればあるほど、それを解放できる相手が見つかったら病的に依存してしまう。落ちるところまで落ちるのはよろしくありませんが、とはいえ「ないわ～！」とは思えない。

一見完璧なニコール・キッドマンがロミーを演じるからこそ生まれたリアルだと思いますよ。ここまでやってのけた彼女には拍手を送りたい！

『ベイビーガール』
3月28日(金)公開

いつバレるの!? っていう不安とワクワクが止まりません

さて、もうひとつは、アカデミー賞でも話題になった『エミリア・ペレス』。ミュージカルとしても人間ドラマとしても見応えたっぷりの作品です。

メキシコの弁護士リタは、ある日麻薬カルテルのボス、マニタスから極秘の依頼を受けます。それは彼が性別不和を抱いており、女性としての新たな人生を歩む準備でした。後戻りできなくなったリタは、完璧なプランを用意、マニタスには性別適合手術を受けさせて女性としての新生活を始めさせ、そして妻子にも新生活を用意し、そしてカルテルとマニタスの存在の消去にも成功します。そこで得た大金を基にリタもキャリアアップ、その数年後、ロンドンにいた彼女の前にエミリア・ペレスという女性が現れます。

彼女は、以前の面影はほとんど残っていないマニタスでした。実は彼女にはどうしても捨てきれない願いがあり、それを依頼するためにリタと再会したのですが……。

とにかく面白い！　ストーリーのアイデアにワクワクしっぱなしですし、シリアスなクライムサスペンスになりそうな物語をミュージカルで軽快に描き出していることにも驚きです。

特にエミリア・ペレスとなってから元奥さんと暮らす日々は、もう緊張の連続。いつバレるの!?っていう不安とワクワクが止まりません。しかも、彼女が過去にしてきた悪事一切を善行でなんとか上塗りして帳消しにしようとする一生懸命さもアイデアだと思いました。

なんといっても弁護士リタがすごい役。この一部始終を全て見守る役は彼女だけですし、とんでもない依頼をこなした報酬がどれほどのものかがすぐに分かるロンドンでの彼女の立ち居振る舞いの変化には目を奪われます。

どのキャラクターにもシンパシーを感じました。個人的には、マニタスの元妻ジェシーを演じたセレーナ・ゴメスがめっちゃよかった……。可愛いけど毒があって、おまけに歌も踊りも素晴らしかった。当然ラストのオチは言えないけど、「良かったね～愛し合った仲として」と言いたいですね。

『エミリア・ペレス』
3月28日(金)公開

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取材・文：よしひろまさみち　撮影：源賀津己

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が講談社より発売中。