LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!
変わるため・変えるための勇気をもらえる!『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』
月2回連載
第161回
ぜひともこれを観て、みんなに考えてもらいたいです
オスカー関連作が続々と公開されてヒットしておりますが、その中で埋もれてしまいそうな作品がたくさん! ということで、今回は3作品紹介します。まずは、『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』。フランス・イタリアの合作で贈る、今の教育に結びつくある女性の苦悩の7年を描いた作品です。
20世紀初頭のイタリア・ローマに暮らしていた、イタリア初の女性医師マリア・モンテッソーニ。彼女は公的な機関で知的障がいを持つ子どもたちに対して作業療法を取り入れた教育を施し、注目を浴びていました。

そんな彼女は、フランスで有名な高級娼婦であるリリと出会います。リリは娘ティナの学習障がいが公になりそうになり、自分の名声を守るためにイタリアへ逃げてきた女性。ティナをマリアに預けたリリは、最初こそ気が合わずに対立しますが、ひとりの人としてありのままを受け入れて教育を施すマリアに共鳴。マリアとリリは子どもの教育のために立ち上がる……という、1900年代初頭に、自立して強く生きる女性たちを描いた実話ベースの物語です。

注目すべきはリリ。彼女は娘ティナに障がいがあると世間に認めたくないし、どうにかしてティナから離れたいと思っています。リリにとっては地位と名誉を意識するあまりのことではあるけど、そのときの娘の気持ちになると切なくて……。
それに彼女だけの話じゃないですし、男性中心社会でいろいろ思うこともあったからなんでしょうけど、そんな時代背景に憤りを感じつつも、今と変わらないこともあるんじゃない?と疑問も湧きます。

ハンディキャップをもった子どもたちの才能と個性をよく見てあげる。そしてそれを伸ばす。今では当たり前な考え方となった、子どもの自発的な成長を補助する教育法=モンテッソーニ教育を作った女性がマリアです。
これを観ると、どうしても今と比較しないわけにはいきません。時代は変わりましたが、まだまだ変わらなければいけないことがあることが分かりますし、変わるため・変えるための勇気をもらえると思います。つい先頃あった、国際女性デーも記憶に新しいところ。ぜひともこれを観て、みんなに考えてもらいたいです。
『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』
上映中
やはり草笛光子さんは日本の映画界の宝!
次は『アンジーのBARで逢いましょう』。草笛光子さん主演のファンタジードラマです。
自分をお尋ね者と名乗るアンジーという女性がある街に現れ、バーをオープン。彼女の店には、街で苦悩する人々が訪れ、酒場での会話を通して次第に自分らしく生きる人々へと変わっていきます。それはまるで魔法のよう……。

やはり草笛光子さんは日本の映画界の宝! アンジー役は草笛さんしか考えられないと思えるほど、存在感ハンパないです。アンジーはどこから来たのか、何者なのかよく分からないのもいい。そこに答えはいらないんですよ。だって草笛さんだもの。

アンジーがボロボロの建物を借りてリフォームするところから始まりますが、そこからしてワクワクするんですよね。そこが町のみんなの集まる場にどんどん変わっていき、町の人々自身も生き生きし始めて、アンジーにとっても頼りにされるように。このケミストリーの大切さ。

こういう場所って、昔はどこのエリアにもあったはずだけど、今はだんだんなくなりつつあり、近隣の人々とのコミュニケーションがとれなくなっていますよね。ノスタルジーを感じますし、音楽のお陰でちょっぴりフランス映画のように感じる瞬間があります。やっぱり"人のつながり・ご縁"で、人間らしい幸せや人生観が築かれていくんだ、と感じられるはずです。
『アンジーのBARで逢いましょう』
4月4日(金)公開
洋楽好き、ファッション好きな人には確実に刺さる!
3作目は『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』。名曲「ハッピー」などを世に送り出し、ルイ ヴィトンのクリエイティブディレクターを務めるファレル・ウィリアムス。彼の半生をなんとレゴアニメーションで描いた伝記映画です。
1970年代にバージニアビーチで生まれたファレルは、孤独な音楽少年。そんな彼の幼少期や彼の家族にまつわるエピソードを、彼自身のヒット曲で彩りながら描き出します。

これ、レゴアニメだからってなめちゃダメです。レゴでキャラクター化されたファレルをはじめ、ケンドリック・ラマーやティンバランド、ジェイZなどなどの大物アーティストたちは、全員本人が吹き替えてるんですよ! 洋楽好き、ファッション好きな人には確実に刺さる!
この作品を観ていて、ファレルの子どもの頃って自分に似てるな……って思ったんですよね。おばあちゃんっ子だったり、困っている友人を放っておくことができないとか。レゴアニメで3回も泣かされるとは思わなかった……。

そして、さまざまな秘話が詰め込まれているのも見どころ。たとえば、マクドナルドのグローバルキャッチコピーである「I'm Lovin' it」ってフレーズは彼が作り出したものなんですが、実はそのきっかけは彼が高校時代にマックでバイトをしてたから、だとか。

どんな大物になっても、人の縁を大事にしている彼は尊敬だしシンパシーも感じます。私自身ノーマークだったけど、本当に素晴らしかったのでマスト観賞お願いします!
『ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース』
4月4日(金)公開
(C)GekoFilms - Tempesta - 2023
(C)2025「アンジーのBARで逢いましょう」製作委員会
(C)2024 FOCUS FEATURES LLC
取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己
プロフィール
LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。
夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が講談社より発売中。
