LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!
脚本と役者の芝居がカギになる作品、どちらも最高です『DROP/ドロップ』
月2回連載
第166回
LiLiCo 撮影:源賀津己
気の知れた友だちと一緒に観て、食事をしながらラストを語り合ってほしいです
ついにやってきました、夏! この取材時も猛暑真っ只中で、滝汗かきながら撮影しました(笑)。夏は大作映画が目白押し……だからこそ埋もれちゃいけない作品を紹介します。まずは『DROP/ドロップ』。『ハッピー・デス・デイ』シリーズのクリストファー・ランドン監督のスリラーです。
夫を亡くして幼い息子と暮らすバイオレットは、夫を失った悲しみの中、シングルマザーとしてなんとか気丈に生きようとしていました。そこで彼女が試してみたのがマッチングアプリ。見ず知らずの男性とのデートに挑みます。

知り合ったヘンリーから指定されたのは、高層ビルの最上階にある高級レストラン。レストランの雰囲気もお味も、そしてヘンリーの性格もよく、バイオレットの気分は高まります……が、そんなときにスマホのドロップ機能で何者かからのメッセージが。
そこには「眼の前にいる男を殺せ。さもなくばお前の息子を殺す」という脅迫文が。ドロップ機能が使えるのは半径15メートル以内。脅迫してきた何者かは近いところで監視をしているばかりか、スマホがハッキングされてSOSを出すこともできなくなり……というお話です。

ワンシチュエーションのスリラーって、『ザ・メニュー』や『ソウ』シリーズなど傑作が多くて好きなジャンルなんですが、その中でも私が好きなタイプの作品。雰囲気のよいレストランでぎこちなく進むデートや、脅迫されてからのバイオレットの絶体絶命感、全部好き。こういうタイプの作品は、脚本と役者の芝居が出来栄えのカギとなりますが、この作品に関してはどちらも最高なんです。

次に一体何が起きるのか全く想像もつかない展開の脚本には驚きましたし、それに対応して抑制の効いたお芝居をしているバイオレット役メーガン・フェイヒーとヘンリー役ブランドン・スクレナーのふたりとも素晴らしい。
ネタバレ厳禁の映画なので、気の知れた友だちと一緒に観て、帰りはこのレストランみたいないいところで食事をしながらラストを語り合ってほしいです。ちなみに結末は……笑えますよ。
『DROP/ドロップ』
7月11日(金)公開
“映画は音楽がないと成立しないもの”ということをより深く知るチャンス!

さて、もう1作品は『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』。7月11日から全国順次公開になりますが、どこの劇場もすごく短い期間しか上映されないことが決まっているので、タイトルを見たら即チケットを!
先日初来日公演を成功させたばかりの、映画音楽界の巨匠ハンス・ジマー。彼のコンサートツアーに密着したパフォーマンス映像と、彼の創作の裏側を彼自身とゲストが語り合うインタビュー映像で構成されたドキュメンタリーです。

映画ファンにはおなじみの彼ですが、ライトな映画ファンだと知らないかな? だとしたら、知っておいてソンはないし、このドキュメンタリーから知るのが一番ですよ。
『グラディエーター』や『インターステラー』『ライオン・キング』など彼が手掛けてきた大ヒット映画のスコアは山ほどありますが、その中から特に人気の高い作品のサントラを生演奏で見せたのが来日公演も含むコンサートツアー。めちゃくちゃかっこいいんですよ……これが。

オーケストラはもちろんですが、彼とともにソロを担当するアーティストの方々がめちゃくちゃかっこいい。曲に合わせたパフォーマンス、というよりも、その映画の主人公になりきって演奏しているようにも見えます。
そしてインタビューパートはもっとすごい。ビリー・アイリッシュとフィニアスやファレル・ウィリアムズなどのトップアーティストをはじめ、ゼンデイヤやクリストファー・ノーラン、ジェリー・ブラッカイマーなどの映画人がズラリ。なんと豪華なこと!

ビリー・アイリッシュやゼンデイヤなどの若手にもリスペクトされていることもすごいんですが、ゼンデイヤが「幼い頃にハンスのスコアを聞いたことで映画にハマった」とか、彼の音楽の持つ力と影響力をまざまざと見せつけられると思います。
映画は音楽がないと成立しないもの。それは彼が手掛けた作品群をみたら一目瞭然ですが、このドキュメンタリーでより深く知ることができるので、このチャンスを逃さず!
『ハンス・ジマー&フレンズ:ダイアモンド・イン・ザ・デザート』
7月11日(金)公開
韓国にいかずしてチケット入手困難な演目を劇場で観られるチャンス!

そして最後に『韓国ミュージカル ON SCREEN』のことも。『エリザベート』『ファントム』など日本でも人気の高い韓国ミュージカルの5演目を1作品ずつ期間限定で上映するプロジェクトです。
今月『エリザベート』からスタートする企画で、先日までミュージカル『ウェイトレス』で共演していたソニンさんがオフィシャルアンバサダーを務めています。

ソニンさんは日本の様々なミュージカルに出演し、幅広く個性的な役を演じてきました。一緒にお稽古をして、役の深いところまで徹底的に追求するプロフェッショナルなマインドに私は毎日刺激されました。もちろん、出演するだけではなく、ハードなスケジュールの合間をぬってミュージカルを観にも行っているそうです。だから彼女がオススメするのなら間違いない。
韓国上演版と日本の違いを見るのも楽しいですし、こんな近い距離で、複数のカメラで撮影された迫力ある映像が日本語字幕で堪能できて、衣装やセット、表情の細かいところまで間近で見られるなんて贅沢すぎ。また、確かな歌唱力と舞台演出は圧巻ですよ!
なにはともあれ、韓国に行かずしてチケット入手困難な演目を劇場で観られるチャンス。公式サイトで演目と期間、劇場をチェックしてくださいね。
『韓国ミュージカル ON SCREEN』
7月11日(金)より全5作品順次公開
(C)2025 Universal Studios
(C)RCI Global LLC
(C)EMK Musical Company, All Rights Reserved
取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己
プロフィール
LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。
夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が講談社より発売中。
