LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!

今の季節にぴったり! 景色だけでなく、インテリアもファッションも最高な『美しい夏』

月2回連載

第168回

撮影:源賀津己

これを観ちゃうと確実に飲みたくなるので、いいレストランを予約してからご鑑賞を

お子さんがいらっしゃるおうちは夏休みでてんてこまいでしょうか。そんな中、私はスウェーデンに里帰り&お仕事で、日本と北欧を往復する月になりそうです。夏休みの大作が毎週のように初日を迎えていて、もちろんそっちもご覧いただきたいんですが、大作ではない埋もれそうな傑作を紹介しますね。

まずは『美しい夏』。昨年開催されたイタリア映画祭2024で日本初お披露目され話題を呼んだ青春ドラマです。

1938年、イタリア・トリノ。お針子として洋裁店に勤める少女ジーニアは、ある日、画家のモデルを務めている年上のお姉さん、アメーリアと出会います。アメーリアの人脈のおかげで、新しい世界へ踏み出したジーニアは、次第にアメーリアへ憧れを抱くように。思春期のジーニアと、ちょっとしか歳が違わないのに自立した美しい女性のアメーリアの心の交流はいかに? という淡い青春物語です。

『美しい夏』

これ、今の季節にぴったり。舞台になっている30年代のトリノの風景が、めちゃくちゃ美しいんですよ。景色だけでなく、インテリアもファッションも最高。おまけにワインも。アメーリアが開いた大人の世界が、音楽とワインで彩られていて、そういう時代だったんだな、と実感。

『美しい夏』

それに若い頃の夏っていったら夏休みがあって、恋もして……っていう季節。自分に重ねる人もいるんじゃないですかね、溺れるような恋だから。少女のままでいたい、という気持ちと、一刻も早く大人になってバージンを失いたい気持ち。ううう、複雑だけど、みなさんも経験あるのでは? そしてこれを観ちゃうと、確実に飲みたくなるので、いいレストランを予約してからご鑑賞を。

『美しい夏』

『美しい夏』
上映中

(C)2023 Kino Produzioni, 9.99 Films

伝説のレンタルビデオ屋さんのコレクション探しがあらぬ方向に話が転がっていきます!

『キムズビデオ』

さて、もう1作品は『キムズビデオ』。ニューヨークに実在したカルト的人気を誇るレンタルビデオ店キムズビデオをめぐる壮大なるドキュメンタリーです。

1987年、韓国系移民のキム・ヨンマンさんが開いたキムズビデオには、世界中から収集されたニッチな作品を含む5万5000本ものビデオがあり、世界中の映画ファンから聖地として崇められていました。ところがレンタルビデオの時代は終わり、2008年に惜しまれつつも閉店。

『キムズビデオ』

気になるのは、そこにあった膨大なビデオです。そこでビデオ店の会員だったデヴィッドさんが、コレクションの行方を探ることに。すると、とんでもない事実が判明します。レンタルビデオのコレクション探しがあらぬ方向に話が転がっていく、嘘みたいな、映画好きのためのドキュメンタリー。

もう、これは下手なサスペンス映画やミステリー映画よりもドキドキする展開! しかも伝説のレンタルビデオ屋さんの棚にある傑作のオンパレードは見ものです。

『キムズビデオ』

描かれていることはギリギリ……アウトだけど(笑)、映画愛に溢れていて最高! まだビデオ店が繁盛していて、みんなが映画をいちはやく観たがっていた古き良き時代のいいお話からスタートします。

『キムズビデオ』

キムズビデオは、他のお店にはないタイトルが揃っていますし、そりゃみんな崇拝しますよね。そんな店の主キムさんが、ミステリアスに消えてしまったことが興味をそそります。誰もレンタルしなくなった時代だからこそ成立するドキュメンタリー。さぁ、キムさんを一緒に探そう!

『キムズビデオ』
8月8日(金)公開

(C)Carnivalesque Films 2023

取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が講談社より発売中。