LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!
今回は激推しを1作品だけ紹介!外から見た日本を的確に描いている『レンタル・ファミリー』
月2回連載
第182回
撮影:源賀津己
この作品を観たらそれぞれに考えることがあるはずです
今回は激推しを1作品だけ紹介! 『ザ・ホエール』でアカデミー賞主演男優賞を受賞したブレンダン・フレイザーが、オスカー俳優として初めて取り組んだ主演作『レンタル・ファミリー』です。なんとオール日本ロケ!
東京で俳優をしているアメリカ人のフィリップ。かつて出演した歯磨き粉のCMで一世風靡したものの、それも過去の話。エージェントとのやりとりやオーディションを受ける日々を過ごしていました。そんなある日、派遣された仕事先で人材派遣会社を営んでいるという多田と出会います。
後日、多田の事務所を訪問したフィリップは、彼の会社が依頼人にとってかなり近しい、まるで家族のような役割を求める、特殊な人材派遣をしていることを知ります。多田は役者であり、東京での暮らしが長いアメリカ人のフィリップに、この仕事のオファーを持ちかけますが、フィリップは依頼とはいえ人を騙すような仕事に抵抗を抱き一度は固辞。
お試しということで引き受けることになったのは結婚式。しかも新郎役!? あまりの重責に結婚式直前、トイレに立てこもりますが、同僚・愛子の説得でなんとか仕事をこなします。そこから彼は引っ張りだこ。他人の人生に関わる仕事を通して、自分自身の心も動き始めます。
ブレンダン・フレイザーが先日来日した際にインタビューをさせていただいたんですが、彼本当によく日本のことを知っててびっくりしました。ずっと日本で仕事をしてみたかったそうで、今回は待ってました、という企画だったそうです。
実際に日本に撮影で滞在しているときには、コンビニのたまごサンドイッチを食べ比べしたり、超馴染んで暮らしていたそうです。また、レンタル・ファミリーするなら何をしたいか聞いたら、自分には男兄弟しかいないから姉妹をお願いしたいっていうんですよ。もちろん妹に立候補しましたよね(笑)。
それだけじゃありません。私がこの作品、そしてフィリップに感情移入したのは、外から見た日本を的確に描いていたこと、そして芸能の仕事をしている外国人の気持ちもよく描かれていたから。レンタル・ファミリー会社の一番人気が、不倫などがバレて謝罪のための席に同席する恋人役っていうのもめちゃくちゃリアル。平岳大さんが演じている多田もクライアント対応しているシーンがありますが、どこぞの偉い人を罵りまくってるんですよね。そうです、M男さん。これもまたリアル。
作品のメインとなるのが柄本明さん演じる老優の喜久雄とフィリップのエピソード。これが本当にすごい。進行性の認知症を患っている喜久雄はいわば名優レベルの俳優で、フィリップも隠しているけど俳優。俳優同士のぶつかり稽古なんですよね。この関係性も素晴らしくて、俳優の仕事もしている私には共感しかなかったし、泣かされました。
このプロットを聞いたときは、ちょっとぶっ飛んでいるなと思ってしまいましたが、描かれているのは家族に限らず人と人との心の距離がすごくて寂しさを感じてしまっていること。これはどんな国でもあるとは思いますが、小さな島国でみんなのフィジカルな距離が近いはずなのに、というところがポイントだと思います。でもそれをネガティブに描くことなく、結果として日本と自分を愛せるようになる映画にしたのが本当にすごい。
HIKARI監督は『37セカンズ』からして素晴らしかったけど、すごく狭いテーマをグローバルの人に向けて伝えるためにしたキャスティング、ロケーション、演出全てが完璧でした。めちゃくちゃ幸せを感じてハッピーに暮らしている人でも、この映画に出てくる人たちに共感してしまいそうな人でも、この作品を観たらそれぞれに考えることがあるはずです。
『レンタル・ファミリー』
上映中
取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己
プロフィール
LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。
夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が講談社より発売中。