LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!

ものまねでひとつの伝記映画が作られたことが興味深い!『ソング・サング・ブルー』

月2回連載

第185回

撮影:源賀津己

バンドとして成功した後のエピソードも強烈です

今回は3作品ご紹介します。まずは『ソング・サング・ブルー』。ケイト・ハドソンが今年のアカデミー賞で主演女優賞にノミネートされた音楽映画です。いやー、やっぱりケイト・ハドソン、いい! 

かつて音楽の夢を追っていたマイクは、ものまね歌手としてステージに上がる日々。そんなある日、同じように音楽で成功を求めているクレアと出会います。

『ソング・サング・ブルー』

彼らは一気に意気投合し、ふたりが敬愛するニール・ダイアモンドのトリビュートバンドを結成。小さなガレージで始めたそのバンド、彼らの歌声は次第に町の人の心を動かしていきます。ところがそんな矢先に、クレアが不慮の事故にあってしまい……。

なんと実話ベース。実際にニール・ダイアモンドのトリビュートバンドとして活動した夫婦ミュージシャンを描いた作品です。

すごく興味深いのは、オリジナルを歌う歌手ではなく、ものまねでひとつの伝記映画が作られたこと。これまでも音楽界の大物を主人公にした伝記映画が作られてきましたが、それらは全てオリジナルの大スターですよね。ものまね歌手でどん底だった彼らが、お互いに愛し合い、そして共通の大スターであるニール・ダイアモンドの楽曲でバンド活動をして成功した、というだけでもドラマチック。

『ソング・サング・ブルー』

しかも、バンドとして成功した後のエピソードも強烈です。ちょいとネタバレになってしまいますが、身体の一部を失ってしまったクレアが、懸命に頑張り、音楽の道はだめかもしれないけど、人生のパートナーとしての関係を構築していこうとする姿には胸を打たれます。

『ソング・サング・ブルー』

心が離れてしまう瞬間もあるけど、気になってずっと見守ってあげたくなるふたり。お互いへの気遣いで人生に華やぎが生まれ、楽しくなっていくことが温かなタッチで描かれています。

『ソング・サング・ブルー』
4月17日(金)公開

世の男性は全員これを観て学ぶべき!

お次はダルデンヌ兄弟の最新作『そして彼女たちは』。子どもを取り巻く環境を生々しいタッチで切り取ってきたダルデンヌ兄弟らしい群像劇です。

若くして妊娠した女性を支援する施設。そこで共同生活を送る5人の少女たちは、孤立無援で貧困や暴力などの問題を抱え、家族というものを理解する前に母となります。彼女らと彼女らに寄り添う支援者たちの姿を通して、愛すること、家族とは何かを模索していく物語。

『そして彼女たちは』

『CLOSE/クロース』の若き俊英ルーカス・ドン監督が共同プロデュースをし、昨年のカンヌ国際映画祭で脚本賞とエキュメニカル審査員賞(キリスト教関連団体が選び、もっとも人道的な作品に与えられる賞)を受賞しました。

『そして彼女たちは』

ひとつ言えるのが、こういう場面で一番役立たずなのは男……。フィジカル的にもメンタル的にも暴力にさらされつつ、子を生むことができる女性たちの強さが際立ちます。命を授かり育てるというときにジェンダーは関係ありませんが、それにしても男がなぁ……。ということで、世の男性は全員これを観て学ぶべき。

『そして彼女たちは』

しかも描かれている女性たちはみな、まだ大人未満。子どもを育てようとしても経済的に不可能となれば、手放す選択をしないといけません。親になり、子を愛する気持ちが芽生えた瞬間に引き離されるときの魂の叫びにはやられました……。

『そして彼女たちは』
上映中

生身の人と人の絆を改めて感じてほしい

『生きているんだ友達なんだ』

さて最後に『生きているんだ友達なんだ』。『じゃあ、あんたが作ってみろよ』などの話題作を手がけた脚本家・上野詩織の長編監督デビュー作で、39分の短編。それゆえに非常に短い期間の上映となります。

母に代わって家計を支えるためにバイトをしている優実の心の拠り所は、年上の友人・石井。全く性格は合わないものの、なぜか一緒にいると心地の良さを感じ合う関係でした。ある日、謎の書き置きを残して、石井が優実の前から姿を消します。そのメッセージに導かれ、優実もまた母の元を去ることを決めるのですが……。

『生きているんだ友達なんだ』

人と人とが繋がる大切さを、独特のタッチで描き出し、あたたかい気持ちになるヒューマンドラマ。石井を演じたアサヌマ理紗の個性が光ります。SNSでの交流はもはや切っても切れる関係ではないのかもしれませんが、生身の人と人の絆をあらためて感じてほしいんですよね。

『生きているんだ友達なんだ』

この作品を観たらきっと、「あれ、あの人最近なにしてるんだろ?」と思い浮かぶ人がいるはず。ぜひ連絡してみて。そういうときに強がる人もいるかもしれないけど、相手は大変なことを経験しているかもしれないので、そしたら支えてあげて。お節介は命を救うんですよ!

『生きているんだ友達なんだ』
上映中

取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が講談社より発売中。