LiLiCoのこの映画、埋もらせちゃダメ!

野球経験者のみならず、あらゆる方が共感できるはず!『4アウト ─もう一度、プレイボール─』

月2回連載

第199回

撮影:源賀津己

実話に基づいてるので更に感動が増す愛が詰まった1本

すっかり文化の秋、映画の秋ですね。今回は大スターキャストだけど、埋もれちゃダメな映画を紹介します。まずは相葉雅紀さん主演の『4アウト ─もう一度、プレイボール─』。障がいを持った人たちによる実在の野球チーム「東京ブルーサンダース」創設秘話をベースにした感動物語です。

子どもの頃から野球ひと筋だった矢上は、結婚して父になってからも社会人野球に熱中。とはいえ、寄せる年波ゆえに戦力外通告を受けてしまいます。彼は身体障害者スポーツセンターに再就職し、聴覚障がいを持つ泉から、野球チームの監督を依頼されます。野球の夢を捨てきれず、だからといって自身ではもう戦力外の彼は、チーム結成に奔走。なんとか集めたメンバーで全国大会に挑むのですが……。

『4アウト ─もう一度、プレイボール─』

原作となったのは、「東京ブルーサンダース」創設を追った平山讓のノンフィクション小説『4アウト ある障害者野球チームの挑戦』。相葉さんは矢上を演じるために、実際に活躍中のチームとの交流や練習を重ねて、この役に挑みました。

矢上は、野球好きの仲間たちとの友情を通して、失ってしまった自信を取り戻していくのですが、この成長物語は野球経験者のみならず、あらゆる方が共感できるはず。個人的には矢上の奥さんの発する言葉が大好き! 強い! 頼りになる!

『4アウト ─もう一度、プレイボール─』

誰かが何かを乗り越えたときの喜びは特別ですよね。最高の瞬間に気持ちを分かち合う仲間たちを見ていると、こっちまで笑顔になっちゃいますから。それは彼らに素晴らしい物語があるから。みんないろんな試練を乗り越えて大きくなり、挑戦が苦しいほど喜びは大きくなるもの。様々な個性を持った仲間たちですが、野球への愛という共通点があるからこそ、多くの壁にぶつかっても輪が強くなっていくんです。

『4アウト ─もう一度、プレイボール─』

また、壁にぶつかるってことは、イコール前に進んでるってことでもあるんですよね。野球がテーマだけど、何にでも置き換えられる爽快な物語。実話に基づいてるので更に感動が増す、愛が詰まった1本です。

『4アウト ─もう一度、プレイボール─』
11月6日(金)公開

(C)2026映画「4アウト」製作委員会

自分の"今"を考える時間にするための映画

さて、もう1作もちょびっと夢をあきらめかけた主人公の物語。『見上げてごらん』です。

漫画の巨匠・吉住はるをのアシスタントを長年勤めている土屋は、デビューした後輩や別居中で人気声優の妻に対してモヤモヤ。おまけに同居している高校生の娘ともすれ違いが多く、まさにミッドクライシス真っ只中。

『見上げてごらん』

そんなとき、彼に企画が舞い込みます。その企画に一緒に挑むのは、漫画家志望ながらド新人の40歳アシスタントと、仕事への熱量不足を自覚している29歳の編集者。この企画、そして土屋の未来はどうなる!?

しっぽりと物思いにふける秋にぴったり。自分の“今”を考える時間にするための映画でもあります。この作品で原案と脚本を担当し、長編デビューする森本晶一監督のコメントにもあるとおり、「ぶっ飛んだ世界観はありません」というのは本当。でも、誰にでもある“普通”の人たちの奮闘と、日常にあるちょっとした面白さを拾い上げた作品なので、共感ポイントは多いはずです。

『見上げてごらん』

それに、舞台は漫画の制作現場。日本人の多くは、漫画で育ち、漫画が人生の導きになっているところがありますよね。その裏側を覗ける楽しさは格別です。なにもかもが“賞味期限切れ”な土屋を見ていると、夢は本当にいつまでも必要かを考えさせられちゃいます。いや、必要ですけどね(笑)。

『見上げてごらん』

なにより森田剛さんがいい! 人一倍頑張ってきたはずなのに、どこか諦めモードの土屋と、トップアイドル出身の森田さんのイメージは相反するもの……のはずなのに、めちゃくちゃハマってるんですよ。彼の師匠となる吉住は、武田鉄矢さんが演じていますが、巨匠としての振る舞いの演技に爆笑。それに、川上友里さんが演じている40歳の新人(!?)アシスタント・山田ぽてとが見せる、やる気溢れる行動がわたしのツボでした。

『見上げてごらん』
10月30日(金)公開
(C)2026「見上げてごらん」製作委員会


取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己

プロフィール

LiLiCo
1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。

夫である純烈の小田井涼平との夫婦生活から、スウェーデンで挙げた結婚式の模様、式のために2カ月で9kgに成功したダイエット術、スウェーデン育ちならではのライフスタイルまで、LiLiCoのすべてを詰め込んだ最新著書『遅咲きも晩婚もHappyに変えて 北欧マインドの暮らし』が講談社より発売中。