後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の INU COMMUNICATION

逞しい犬

毎月連載

第16回

テレビなどの華やかなメディアへの露出が極端に少ない活動形態を選んでいるとはいえ、一応は人前に出る職業だと自覚して、日頃から清潔感を保つことを心がけている。

俺のメガネに髭という風貌も、無造作であるように見えて無造作ではない。そう書くと、あの無造作な感じが良かったのにと幻滅する人があるかもしれない。

けれども、無造作というのは「気にしていない感じ」のことであって、何も気にせずにグズグズの格好で撮影現場に現れたりすることではない。それは本来、無造作というよりは怠惰と呼ばれるべきもので、皆が望む理想上の「無造作」に向かって全力全開で何もかも気にせずに生きてゆくと、あらゆるメディアに出られないほどに弛緩した身形になり、酒などでベロベロに酔ったまま仕事に来るか、そもそも現場に来ないような人間に俺は成り果ててしまうだろう。

そうなった場合、俺の無造作な感じを応援してくれた人たちは、あの無造作な感じが良かったのにと別の角度から幻滅して、俺の書いた本を燃やしたり、ソロのレコードを割ったり、アジカンのCDを畑のカラスよけに使ったりするのだろう。以前、枇杷の木にくくりつけられていたTHE ALFEEのCDを保護したことがある。人気商売というのは恐ろしいことだ。

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