後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の INU COMMUNICATION
大五郎でいこう
毎月連載
第21回
マルチーズは柴犬に次いで苦手な犬だ。
藪から棒に苦手になったわけではない。もちろん理由がある。かつてマルチーズの群れに襲われたことがあるからだ。
中学校の通学路の途中に、マルチーズを多頭飼育する家があった。その犬たちが時折、脱走なのか解放なのかは定かではないが、歩道に放し飼いのような状態になることがあった。マルチーズたちは歩道の片側に広がり、通行人に飛びつくのだ。ギャン吠えしながらアキレス腱のあたりを狙う犬もあったように記憶している。
不幸なことに、マルチーズの巣は用水路にかかる橋の袂にあった。タイミングが悪ければ、橋を渡ろうとするだけで襲われる。それならばと別の橋を目指したいところだが、迂回すると学校に間に合わないほど遠回りになってしまう。水路沿いの道に出て別の橋に向かおうとしても、巣に面した角を通る以外に道筋がなかった。ゆえに、マルチーズが歩道に離れ出た瞬間から、そこは恐怖の関所と化すのだった。
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