最終回の犬は柴犬のぽんちゃん。二十年来の付き合いになる友人、イラストレーターの中村佑介の愛犬だ。

友人の愛犬とはいえ、怖いものは怖い。なにしろ、柴犬は犬が苦手になるきっかけとなった犬種だ。ドキドキしながら、待ち合わせのカフェに向かった。

中村君とぽんちゃんは学校のグラウンドに面した通りの向こうからゆっくりとやってきた。待ち合わせの時間を少し過ぎていたが、中村君はぽんちゃんの足取りに合わせている様子で急ぐ気配がなかった。話を聞けば、最近では散歩の道順もぽんちゃんの歩むままに任せているのだという。

不意に、昔に飼っていたエムという名前の犬を思い出した。ビーグルと何らかの中型犬の雑種で、恐ろしく力が強かった。散歩に行けば、どちらが連れられているのか分からなくなるくらいで、野球部で身体を鍛えていた俺と弟でさえも、引きずられるようにして歩いたものだった。あまりのパワーに圧倒されて、そのうち散歩が億劫になってしまった。エムには悪いことをしたなと今でも思っている。

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