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後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の INU COMMUNICATION

セタガヤン・ドリームの宮殿

毎月連載

第14回

今回の取材の待ち合わせ場所として聞かされていたのはざっくりと東京都世田谷区。ミュージシャンの愛犬の取材ということで、俺はとても不安だった。

世田谷区在住でミュージシャンとなると、恐らくは下北沢かどこかの安アパートに暮らし、日夜を問わず音楽と酒に溺れて淫らな生活を送っているに違いない。ライブハウスに入り浸ってろくに家にも帰らないので、当然ながら、家に対する思い入れが極度に低く、あばら屋でもへっちゃら、どこでも3秒で寝られる、みたいな感じで生きている。そうした人間の住む狭い部屋に4、5人のスタッフが入れるわけがない。待ち合わせは公園に決まっている。犬を本当に飼っているのかも定かではない。妄言かもしれない。そう考えると気持ちが重かった。

さらに、この日は木枯らし何号かは定かではないが冷たい風が吹き荒れていて、とても寒かった。屋外で取材を行えば、犬と戯れていくらか身体があたたまるとしても、風邪をひくことは避けられない気がする。

絶望的な気分でタクシーの運転手に住所を教え、カーナビに道案内を任せて後部座席で居眠りをしながら走ること数十分。狭い路地を進んで到着したのは、住宅街にある一軒家の前だった。駐車場には立派な車が停められており、白く美しい外観に虚を衝かれた。

※続きは書籍でお読みください